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April 30, 2005

俺を番号で呼ぶな!

「PC1のあなたが主人公です。お話を引っ張って下さい。
 ああ、ヒロインが出てきたら、彼女に積極的に絡むのもあなたの役目です」

 しばらく前に、知人の主催するコンベンションに遊びに言って驚いた。
 開会式で、マスターがシナリオ説明をするのは恒例のことだが、そのマスターたちが次から次へと「PC1は~~で、PC2は~~で」と、ハンドアウトを読み上げながら、説明を始めるのである。
 どうやら、いわゆるPC枠制度がしっかり染み付いており、プレイヤー側も、PC1という立ち位置も、単にPCその1ではなく、シナリオ運用に欠かせない「主人公」役で、NPCのヒロインGETの担当、PC2なら、PC1と絡む補助系、PC3ならチーム全体のサポート役・・・といった感じで枠に意味を感じており、自分に似合ったPCタイプがプレイできるかどうか、その枠説明に聞き入っていた。

 ご存知の通り、私は、アドリブ・マスターの傾向が強いこともあり、あまりPC枠制度を使うことは少ない。特に、誰が主役というのも、行き過ぎのように感じるので、PC1=NPCヒロインとのラヴロマンス担当という、思考回路は持っていなかった。

 そのため、主人公性やセッション中の立ち位置、NPCヒロインとの関係も含めて、PC番号制度がここまで浸透しているのを見た時はある種の衝撃を受けた。一瞬、「何、これ?」とも思ったが、参加者はすべてわかっているようだ。PCがすべてネコミミ・キャラなのに、PC番号制度で進めるマスターまでいたが、私にはそこまでする意味も分からなかった。

 実際、PC枠制度は、ハンドアウトとともに、「物語再現」をしたいマスターにとって、非常に便利なものである。

「PC1のあなたが主人公です。お話を引っ張って下さい。
 ああ、ヒロインが出てきたら、彼女に積極的に絡むのもあなたの役目です」

・・・と役割分担できてしまうのだから。
 もともとは、シナリオを作成する際に、シナリオ上、重要な順番に番号を振っていったら、やがて、そういう「副次的な意味づけ」が発生したというものだが、今や、それがシナリオの書き手にとっても、ゲームマスターにとっても、便利なツールに昇華されたのである。
 その後、私自身も『Nocturne』のシナリオではPC番号を使った。識別上、ABCDより分かりやすいし、「分かっているユーザー」には通りがよい。
 これもまた高速化の流れの中の現象であるが、それは同時に、シチュエーション再現の欲求が私たちの世代より遥かに高まっていることを示すものなのだろう。

 ・・・などと、『真・女神転生TRPG~魔都東京200X~』のシナリオを書きながら、つらつら思う今日この頃です。
 オチはやはり「俺を番号で呼ぶなぁぁぁ」と古いギャグで締めてみよう。このネタはきっと通じないと思いつつ。

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April 29, 2005

イベント予定

今後のイベント出席予定です。

5月3日  YS-CON in 秋葉原イエローサブマリン    『真・女神転生TRPG~魔都東京200X~』

6月5日  ゴゴコン in 大分 (サークルIF主催)    「深淵第二版」

6月26日頃  知人の主催するコンベンションに出る予定。詳細は近々。日付もあくまでとりあえずの打診レベル。

8月26-28日  JGC2005.出席決定。 とりあえず、『真・女神転生TRPG~魔都東京200X~』と「深淵第二版」をマスターすることは確定。あとはスケジュール調整中。詳細は後々。

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カミングアウトした者の強み

彼の作品が選ばれたのは、先に覚悟を決めたからだ。

 相変わらず、原稿と戦う朱鷺田です。Blog更新が遅れたのも多忙のせいということで。GWはなさそうです。そういうわけで、今回は割と雑記的に。

 ホラー界の魔王、友成純一の「覚醒者」をやっと購入。
4年ぶりの新作はクトゥルフ神話です。いきなり福岡を襲う直下型地震の話から入るあたりが、妙にタイムリー。
 私も『真・女神転生』の誕生篇のリプレイで地震の話を書いたら、神戸大震災が起き、生物兵器の話を書いたら、オウム事件が起きたという怪談めいた経験がありますので、偶然かと思います。クトゥルフ物と地震はつきものなので。
 しかし、登場人物のアル中話の際に、酒が飲みたくなる自分に反省。

 今週のマガジン、「ヴィンランド・サガ」第三回は、ヴィンランド伝説の解説と、アイスランド生活の描写。
 確かこの時期は、氷河期とはいかないまでも、寒冷化が激しかった時期ではないかと。もしかすると、それまでが比較的暖かい時期で、それが終焉しつつある時期かもしれないな。これはあとで調べないとね。
 お姉ちゃんが寒くて、主人公のベッドにもぐりこんでくる場面は「萌え」シーンのように見えますが、リアルな生活感かもしれない。冬は子供を抱っこして寝るとあったかいです。ええ。
 ROSE HIP ROSEは、ヒロインの出自が判明。麻薬でホルモン分泌を異常に活性化させた「五感の怪物」とか。どう強化されているかが明確でよい。

 水曜日は学校。04年度生ライター科の合評会。合評会は毎学期の末に、作品を提出して、関係講師全員の講評を受けるもの。基本的に、酷評が次々飛び出すのが常。生徒にとってはHARDなイベントだが、実力を試す場でもある。
 04年度のライター科は、編集・雑誌ライター系とシナリオ・小説系に分かれており、私はシナリオ・小説系の方に出席。ゲーム学校なので、普通の青春小説もあれば、ゲーム化・アニメ化を念頭に置いたシナリオもあれば、美少女ゲーム化前提のエロもある。ゲーム化前提のものならば、設定や企画としての可能性も評価される。正直、商売として対応できそうにないのは、多少、書けていても酷評される。
 例えば、ロボット・アニメ向けのシナリオを書いてきて、ロボットに特色がないのはどうだろう?

 さらに、誰でも突っ込める設定にミスがあるのは不勉強の証拠だ。
 コルト45に毒薬入りの麻酔弾を詰める? 何を考えたら、そうなる?
 いや、近未来の強化兵士を主人公にしておいて、130年前のリボルバーを出す理由ひとつ考えてこない。
 44マグナムを出して、「ダーティ・ハリー」すら出てこない。
 ああ、銃に欠片も愛情がないのかなあ?

 結局、最優秀と讃えられたのは、1学期から一環して、美少女系を書いてきた男子学生と、最近、覚悟を決めて、現代物に挑戦した女子学生。特に、前者は1学期にいきなりメイドものを書いてきて、全員を驚愕させたのだが、実は、こういう人のほうが結局、いい成績を取ることが多い。

 覚悟があるからである。

 ゲーム学校に入って、ゲーム業界に入りたいと言っても、実際に就職できるメーカーは千差万別、大手のコンシューマー系から、やや小規模ながら、独自のラインを模索するPC系、主に美少女専門、あるいは、携帯コンテンツ系、あるいは、攻略本を作る編集部や編集プロダクションまで、色々ある。
 そこで、自分が「これがやりたい!」と早めに見つけて、そこに向かって必要な努力ができた人が、専門学校で大きく伸びるのである。ところが、やはり人間、気恥ずかしいときもある。「美少女ゲームメーカーに行きたい!」と思っていても、公言するに躊躇う人もいる。
 でもね、クリエーターになる、というのは、一生、そこで生きるということだよ。
 恥ずかしいと思うことで、一生は食えないよ。

 だから、早めにカミングアウトしなさい。

 それが覚悟を決めるということだよ。
 専門学校というのは、その職種に合わせた技術を身につけるのと同時に、その業界の中で自分に向いたジャンルをきちんと見定める機会を与える場でもある。漠然と「ゲーム・クリエーターになりたい」と思って入学した人が、卒業までに「こんなジャンルで作品を作りたい、いや、作る!」になって欲しい。そのためにはトライ&エラーが必要であり、カミングアウトすることはその第1歩である。
 覚悟を決めると、それだけに集中できる。
 ロボット物が書きたいと思ったら、あとはひたすらロボット・アニメを見る時期が必要だ。講師と張り合って、今、放映されている全てのロボット・アニメを語れるくらいの覇気が欲しい。あることにこだわり切ったら、その手法は他のジャンルにも応用できる。

 PHP新書に、林望の「知性の磨きかた」という本がある。
 林望は、江戸文学の専門家でありながら、英国留学の間に、英国通となり、英国生活のエッセイを書いて有名になった人で、リンボウ先生の異名で知られている。英国好きの妻に頼まれて買った本だが、「研究の手法を学べば、それは様々な分野に応用できる。その方法を学ぶことこそ知性を磨くことだ」という趣旨である。彼は江戸文学研究で得た手法で、英国文化を分析、それを己のライフスタイルにするまで吸収した。

 ゲーム・クリエーターも一緒である。
 一つのジャンルにこだわり、その体験を分析する方法を身につければ、他のジャンルにも応用できる。だから、若いうちに、一度、底の底まで一つのことにこだわって欲しい。それが一つの財産になるのだ。
 「ブルーローズ」で、世界史をもう一度書く作業は、とんでもない話であるが、確実に今の私の財産になったし、それがあるから、頼まれる作品もある。

 えー、関係者の皆様へ、業務連絡。仕事場の電話が不調なので、通じなかったら、携帯へよろしく。急がない用事はメールへ。
 上に、TRPGのルールブックとか資料本とかの山が崩れ落ちてから、変な感じです。なんか赤い光が点滅しているし。崩れ落ちたルールブックの中に「ブルーローズ」があったかどうかは記憶にありません。

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April 26, 2005

機能と意匠

 今日は学校の日。プログラム科新入生向けに、アナログ・ゲームの授業を行う。前半は先週と同じ「ブラフ」で、後半は「6ニムト」。
 プログラム科なので、まじめに、インターフェイスとか、確率とか、ハードとソフトの話をまぜながら、進める。
 今回のキーは「機能と意匠」。内部の仕組みは同じでも、その上に乗せる「外見」によって、ゲームは一変し、そこで生み出される物語や刺激は変わるという話。

 例えば、「プリンセス・メーカー」が、「ウィザードリイ」のキャラメイク部分にヒントを得て作られたのは有名な話であるが、これらの育成シミュレーションの根幹というのは「コマンド入力により、キャラのパラメーターが変化する」ということに尽きる。これが「機能」だ。
 「プリンセス・メーカー」ではその「機能」の上に、プリンセスの画像と会話パターンが乗せられ、パラメーターが変化すると、画像と会話が変化する。その仕掛けと、用意されたシナリオで、ユーザーは「お姫様を育てている」かのようなプレイを楽しむことが出来る。いわゆる恋愛系育成シミュレーションの類はすべて、この理屈の応用で作成できる。プリンセスの代わりに、メイドでも、妹でも、外装を乗せれば、そういう育成になるのだという話だ。そうして選ばれる外装が「意匠」の部分である。
 もちろん、シナリオの良さとか細かいインターフェイスの進化を否定する気はない。いや、どちらかと言えば、その「意匠の部分」のクオリティこそが重要になっている。

 ・・・という訳で、ゲーム・クリエーターを目指すものは、機能と意匠のかかわりに注目せよという話をしたのだが、どうも、あまり「プリンセス・メーカー」自体をプレイしている生徒が少ない。あれあれ、もう、そんな時代なのかと、驚く。以前にも、「エヴァンゲリオン」を見てませんと言われて、愕然としたが、「エヴァ」も、もはや10年前であった。確かに、綾波と同い年の女の子はすでに卒業して久しい。うわあ。時代は変わるものであるよ。

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大畸人伝:岸田吟香

 魚戸おさむ短編集「大畸人伝」を読む。
 短編集で表題作の主人公は明治維新の奇怪な人物、岸田吟香と高橋是清である。岸田は、日本最初のジャーナリストであり、ヘボンの弟子であり、上海と日本の架け橋となった人物である。最初はよくある勤王派浪人であったが、師匠筋が安政の大獄で流罪となり、一時は吉原に逃げ込んで芸者の箱屋をしていたが、ヘボンと出会い、日本初の英和辞典を作ることになる。維新後はヘボン譲りの目薬を売って大もうけする一方で、客船会社を開いたり、東京日日新聞の編集長をしたりと、幕末ならではの、数奇な運命を辿る。
 実は、「上海退魔行 ~新撰組異聞~」の時、最初の上海明星32傑の一人と考えていた。「上海浪人」である。その後、やはり、岸田自身の知名度が微妙であることと、やはり、坂本龍馬のほうが有名であったため、岸田は1NPCに格下げになったが、これはこれで面白い人物であることは間違いない。

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April 25, 2005

テロリストの合理主義

幻想世界の内部でも、時代は変化する。
目的のためには、手段を選ばぬテロリストであればなおさら。

 相変わらず原稿中の朱鷺田です。
 JR西日本の事故の結果には驚愕。
 ここまで凄まじい風景は久しぶりだ。バナナのようにねじくれ、曲がった車両が恐ろしい。
 1両目はマンションの駐車場に突っ込んだそうで、ガソリン臭もするという。電車なので車両にはガソリンはないが、恐らく駐車場で大破し、蹂躙された車両から漏れたガソリンが気化しているのではないだろうか? あるいは駐車場のどこかに置いてあった灯油が事故に巻き込まれたのか? いずれにせよ、現場で金属カッターが使えないというのは、気化したガソリンに火花が引火する危険をレスキュー隊が懸念しているからでしょう。
 一人でも多くの方が救出されることを祈ります。

 さて、今宵の話は「深淵第二版」におけるテンプレートの話。
 「深淵」では、クイック・テンプレートという形で、すぐプレイできるサンプル・キャラクターを提供してきました。そのバリエーションについては、「銀龍亭異聞」でそのほとんどを見ることが出来ます。
 「第二版」では、現行のルールをかなり継承しますので、現行のテンプレートもあまり変更なしに使えるようにしたいと思っています。データ的に変更が出るのは、魔法関係(これは呪文や魔法アイテムなどの調整)、能力値と年齢の関係(主に、縁故不足が恒常的に発生しがちな軍人たちの社交値UP)、技能の微調整です。エラッタを適用すれば、「銀龍亭異聞」ほかのサプリメントがそのまま使えるようにしたいと思っています。

 その一方で、いくつか大きな変更が入るテンプレートもあります。

 魔族の信徒で陰謀家の「奇妙な旅人」は「それを選ぶと、ラスBOSSは君だよ」と言っても毎回、選ぶ人が出るほど、人気のあるテンプレートですが、主な武装が鎌槍と大型で、どうしても目立ちます。なかには、鎌槍を見た瞬間に「緑の猟犬」ではないかと疑う場合も。その結果、「竹ざお」ですと誤魔化したり、いきなり売り払ったり、宿屋に隠したりと、旅人役の行動はさらに奇妙な方向へ進みます。
 (その辺の言い訳をする姿がいかにも「奇妙」で怪しいのですが) 

 この鎌槍は、信仰に根ざした武器なので、それもしかたないと言えば、しかたないのですが、「第二版」の時代になったら、「緑の猟犬」もよりテロリストらしく、正体のばれそうな武装を控えるようにすべきではないかと考えています。鎌槍の技能を排除し、浮いたポイントを短剣と回避に回そうと。
 それはある意味、テロリストならではの冷徹なプラグマティズムが表現できていいかなあ。

「信仰の武器さえも捨てた。
 あの者たちはもはや躊躇わない、と」

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April 24, 2005

クトゥルフ・ジャパネスク

 もうすぐ邪神ダゴン様がお目覚めになられる。

 『真・女神転生X』製作中の朱鷺田です。
 さて、今夜はクトゥルフ神話とメガテンの話。

 「クトゥルフ神話ガイドブック」の時にはさらりと流してしまいましたが、『真・女神転生』にもクトゥルフ神話は多くの影響を与えています。Ⅰには魔王ダゴンが、Ⅱには、邪神クトゥルーとニャルルラトホテップ、外道オールドワンが出てきます。Ⅰのダゴンはペリシテの邪神というノリですが、Ⅱは明らかにクトゥルフ神話です。エルダーシングズに見えなくもないオールドワンが外道なのは、少々かわいそうですが、クトゥルーとニャル様はまあ、妥当な外見かと。

 あくまでも、非神話作品に、モンスターバリエーションとして加えられたものなので、扱いはまあ、押して知るべき範囲ですが、私の仕事の場合、これをまたTRPGで使えるだけのネタに調整するという作業があります。「クトゥルフ神話TRPG」はすでに他で出ておりますので、実際の「宇宙的な恐怖」はそちらで再現していただくことにして、TRPGのシナリオにしやすい仕掛けを用意することにしました。
 ニャル様は、PCとコンタクトをもてるNPCに加え、魔都東京で暗躍してもらうことにします。エジプトからやってきた謎の司祭「ナイア神父」です。お約束どおり《星の智慧》教会で。
 ダゴンは、古代日本の海洋神アズミと縁があったということで、瀬戸内海からやってきた安曇族の巫女がダゴンとクトゥルーの目覚めを予言するという設定を考えています。

 さて、ここで一つの問題があります。

 『真・女神転生』Ⅰ・Ⅱの時代には「ロウ(秩序)」と「カオス(混沌)」の対立が、基本構造となっています。Ⅰの序盤では、太平洋戦争とその後の日米関係、日米経済摩擦などを含む形で、アメリカ合衆国がロウ・サイドで、日本がカオス・サイドに配置され、対立します。アメリカの覇権に抵抗する形で、ターミナル開発を行った五島陸将はアジアの神々を復活させ、日本からアメリカの影響排除を求め、クーデターを起こします。地上には悪魔が復活、それに対して、アメリカ合衆国は核攻撃を持って対処します。
 ロウ・サイドにはキリスト教過激派にも見えるメシア教会、カオス・サイドには日本やアジアの神々を信奉するガイア教団が配置されています。

 さて、この図式の中、クトゥルフ神話の神格はどこに位置するべきでしょうか?

 私は、クトゥルフ神話というのは、キリスト教社会だからこそ生まれたものであると考えています。これはクトゥルフ神話がキリスト教的であるという意味ではありません。
 ラヴクラフトは、商業化され、マンネリ化したパルプ・ホラーに反旗を翻す形で、宇宙的な恐怖を生み出します。そこでは、キリスト教白人社会のアイデンティティを脅かす「異形の神話」が描かれます。「インスマウスの影」はその典型で、奇怪な土俗宗教に犯された異形の町が描かれ、そして、アメリカ政府というアメリカ的な正義によって事件は解決されますが、主人公は己の体に流れる「忌まわしい血」に支配され、「白いアメリカ」から解放され、海底に向かいます。
 この時、インディアンの血とか、ジプシーの呪いなど「非キリスト教的な俗信」を引っ張ってくるのが「ラヴクラフト以前」のありふれたホラーだった。「文明=キリスト教」「俗信=非キリスト教」という文脈がそこにはある。しかし、ラヴクラフトでは、そんな手垢のついた文脈は陳腐であると見なし、この枠組みを壊した。「キリスト教は新しい枠組みに過ぎず、古き信仰によって、それは簡単に崩れてしまう」とした。
 しかし、同時に、そこにラヴクラフトが「白いアメリカ」の呪縛に囚われているのも現実で、「キリスト教絶対主義」に対するアンチテーゼだったから、「斬新」だった訳です。
 だから、「秘神界」の英訳版の序文において、ロバート・プライスは述べます。アジアとの混血をあれほど恐れたラヴクラフトの遺産、クトゥルフ神話を、アジアの人々が書くということは、その誕生を考えれば、大いなる皮肉だと。

 話を戻しましょう。
 『真・女神転生』Ⅰ&Ⅱに見られるようなアジアと欧米の価値観の対立と、クトゥルフ神話における「価値観の破壊」はやや軸のずれたものです。本来、クトゥルフ神話とは、キリスト教絶対主義の枠を超越したものであり、唯一神とそれに反旗を掲げる混沌のアジア諸神格の戦いを機軸とする『真・女神転生』の世界観とはスケールの異なるものなのです。
 今回のシステムでは、それも分かった上で、あくまでも、『真・女神転生』の枠組みの中で、クトゥルフ的な感触の欠片を少しでも語れたらと思っています。

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弱さと強さ:不足と成長

 TRPG以外の話が続いたので、ちょっとだけ真面目に『真・女神転生TRPG~魔都東京200X~』の話を。

 以前、書きましたとおり『真・女神転生TRPG~魔都東京200X~』(以下『真・女神転生X』)は現代編です。そのため、『Nocturne』の主役が魔人だったのと異なり、主役は人間です。システムは『Nocturne』からかなり継承した感じになっておりますので、その結果、人間は非常に脆弱な存在です。凄く弱い。HPも少ない。能力値も低い。低レベルの頃は攻撃すらそう簡単には当たらない。回避するのはもっと難しい。生き残るためには色々考えないと厳しいでしょう。
 近年、最初から強いPCが作れるゲームが増えています。これはコンベンションでの安定性を追及した結果で、私も一つの道だと思っていますが、私自身のゲームは、そうした「強さの即時再現」にはこだわりません。弱い時期があるからこそ、成長が楽しいと思いませんか?
 実際、学生たちと遊んでいると、レベルアップごとに、ちょっとずつ強くなるのがとても嬉しそうです。
 このあたりのピュアな感覚を大事にしたいと思っています。

 『真・女神転生X』では、悪魔のレベルでは1レベルから100レベル以上(ええ、あの四文字の方とか)までをサポートしますが、PCのレベルとしては、5レベルから40レベル前後までがプレイしやすい範囲かと思います。
 その範囲の中でも、レベル帯によってプレイ感覚がかなり違います。5レベルではガキ数体に大苦戦しますが、10レベルを超えれば、マルチ・アクションも可能になり、派手な戦闘もできるようになります。20レベル以上となれば、はば広い戦術を駆使して、凶悪なBOSSとぎりぎりの戦闘をこなすことになるでしょう。30レベル以上ならば、PCは悪魔のような強さを持つことになるでしょう。
 強さの違いが実感できれば、それが成長と言えるのです。

 もしも、ヒーロー的なPCをプレイしたい場合には、20レベル以上を推奨します。これは今の『Nocturne』でも体験できますので、コンベンションで低レベルは・・・という向きはどうぞ。デザイナーとしてはレベル5から13ぐらいの、少しもどかしいあたりがお薦めですね。

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April 23, 2005

ガンダムSEED Destiny:錯綜する軍事技術

 相変わらず、『真・女神転生TRPG~魔都東京200X~』でてんてこまいの朱鷺田です。
 最近の心の安らぎというと、やはり、アニメ。
 マーケット・リサーチとか、学校で生徒と交流するためとか・・・・・・

 ・・・・・・ああ、言い訳は止めましょう。

 初代ガンダム直撃世代です。小学校で「仮面ライダー」と「宇宙戦艦ヤマト」を見て、中学で「スターウォーズ」、高校で「ガンダム」です。はい、年がわかりますね。
 最近、毎週の楽しみは、「機動戦士ガンダムSEED Destiny」(以下「種デス」)と「仮面ライダー響鬼」です。「エマ」とか「エウレカ・セブン」とか「ハチクロ」とかも見てますが、コメントをする段階にはないかと。この3月で終わった作品の中ではやはり「レジェンズ」がもっともお気に入りです。「プリキュア」はOPから縦回転がなくなった時が大きな転機かと。

  閑話休題。

 さて、「種デス」は娘も「種」以来のファンで、親子揃ってガンオタの道を邁進中。
 ディアイザだそうです。えーっと。
 回想が多いとか、キャラに頼りすぎとか、脚本ぐだぐだとか、時期ネタ多すぎとか、色々言われていますが、まあ、ストーリーの暴走具合が、刺激的です。アニメ雑誌を読まないようにしたら、もう翌週の話の予想がつかない。まあ、こうなるだろうという予想をことごとく裏切る凄いアニメである。「天使湯」とか、「ザクとは違うのだよ」とか。ザムザザーとか大好きです。このシリーズ構成をしている人は色々な意味でオカシイです。
 これは誉め言葉ね。かなりヤル気ですね。

 今週はミリアリアの「ディアッカ振った」発言が大ブレイクしておりますが、実際は、オーブ護衛艦隊 VS ZAFT航宙艦ミネルヴァのマルタ沖海戦の前哨戦、それもMS戦ではなく、艦砲戦ですよ。

 それも宇宙船艦ではなく、海上戦艦です。うわあ。

 トリマラン・タイプの高速空母とはいえ、海上艦艇が、MS搭載型宇宙戦艦と直接砲撃戦で戦うという状況はガンダムでは、あまり多いシチュエーションではない。戦闘の主役はあくまでMSだというのがガンダムの世界。だが、今回は通常兵器の活躍が目立った回でした。まず、AWAC(早期警戒機、日本だとやや古いP3Cが有名ですが)やヒューミント(人間による情報収集つまり諜報員)で情報収集した連合側が、ミネルヴァの進路に突出、MSの射出前に、自己鍛造弾の一斉砲撃で、ミネルヴァに大被害を与えるという展開に。
 自己鍛造弾というのは、現在もある兵器で、射撃した後、飛んでいる間に砲弾を自動形成、より高い貫通力を得るというハイテク砲弾です。言葉で説明すると至極、無茶苦茶な兵器ですね。LAND WALKERを見た後は、モビル・スーツの方がリアルに感じるほど。

 軍事ミーハーとしては、現代ではたぶん、フォークランド以来、まず見ることのできない現代の海戦を再現してくれたシーンなので、大喜びではあるのですが、これを真面目にやってしまうと、MSの活躍の出番がなくなってしまうのでは?とさえ心配になります。

 考証好きの弱点でしょう。
 ここからは、まさに野暮というしかない突っ込みに入ります。
 逆に言えば、この、好きなだけ突っ込みをしてくれとしかいいようのない(多分、わざとやっている)種デスの作りが、私を魅了しているのかもしれません。(この辺は、一種のストレス発散だと流して下さい)

 さて、通常兵器の活躍がどうしてMSの出番を奪うかといえば。
 現在の海上戦闘艦の主砲は完全に電子化され、レーダーとリンクして、飛んでくるミサイルを撃墜することも可能です。さらに、バルカン砲で、飽和攻撃を行い、ミサイルを近寄せません。
 飽和攻撃というのはまさに弾幕で、一定空間に十分な密度の弾丸をばらまくことで、そこに入ったら必ずあたる状況を生み出すという、究極の物量作戦です。これをリアルに再現してしまったのが、何回か前のダーダネルス海峡海戦で、オーブ軍の新型可変MS、ムラサメが、ミネルヴァに突進し、バルカン砲で撃墜されるカットがありました。新型MSがこんなにもろいとプラモがうれなくなりそうだけど、いいのかなあと思うほどもろい感じの描写ですが、MSを戦闘機に置き換えるとほぼこんな感じになるはずです。
 ファランクス・システムが有効な範囲である限り、という限定の中では、現代の戦闘艦に体当たりなどできないのです。これは、すなわち、MSが手持ち武器で艦を攻撃するというシチュエーションそのものが非合理だというイメージを与えてしまいかねないのです。
 ロボット・アニメでそれは色々まずいでしょ? 

 ガンダムの主役はMSだと思う身からすれば、通常兵器の活躍はぜひ、MS運用とマッチングした感じで見せてほしいなあと思います。初代からZまでの宇宙世紀は、MS時代なりの兵器運用がきちんとあったと感じる訳ですよ。

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April 22, 2005

誰かが聞きたい言葉(アトランティスとオーパーツ)

アトランティスは戦いを禁じられた理想国家 
(解説「アトランティスは軍事独裁国家ですが?」)

 今日は学校の日。「ファンタジー概論」最終日。先々週の「世界ふしぎ発見」のオーパーツ特集と失われた大陸伝説を見せながら、「トンデモ仮説というファンタジー:誰かが聴きたい言葉」という話をする。
 オーパーツとか、失われた超古代文明とか、ピリ・レイスの地図とかに対して、「たががはずれた状態」の発生の原理と、それをゆがめていく「誰かが聞きたい言葉」の存在を説明する。詳しくは前の「実感の力」も参照のこと。

 冒頭のやりとりは、VTRへの私の突っ込みである。
 地中海のマルタ島をアトランティスの候補として上げるのはまあ、巨石文明だからいいでしょう。しかし、マルタ島遺跡に壁の無いことをアトランティスの証拠と言い張り、アトランティスは平和国家の理想郷だと言い出すのですが、以前、「宿敵アトランティス」で紹介した通り、アトランティスは、アテネを征服しようとした軍事国家です。
 どこから、その台詞が出てきたのかなあ?
 たぶん、「ニューアトランティス」あたりで、幻想のアトランティスが夢の理想郷扱いされたからでしょう。
 確かに、プラトンも社会制度が整った、優れた国だと言ってますが、話の流れから言えば、ギリシアを征服しようとした軍事国家です。
 このあたりの流れは、プラトン時代のギリシアが、ペルシア帝国による征服と戦っていたのと通じる状況で、ここに、思想家プラトンがアトランティス物語を始めた本当の理由がある訳なのですが、超古代文明伝説では、その当時の国際事情はすぱっと無視されがちで、キャッチーな物語のポイントが注目されてしまうのです。

 さらに、よく「アトランティス大陸は一夜のうちに海中に没し・・・」と引用されるが、これも一部の状況だけが強調された要約である。
 プラトンの原典では、まず、アトランティスがギリシアの征服を試み、アテネがギリシア軍を率いて反抗、その征服を未然に防いだが、その後、異常な大地震と洪水が度重なって起こった時、アテネ軍は、一昼夜の間に大地に飲み込まれ、同時に、アトランティス島も海中に没したとある。同じように見えるが、一夜にして壊滅したのはアテネ軍であって、アトランティスが一夜にして沈んだわけではない。
 主語が違うのである。
 こういう読み替えが起こるのはどうしてか・・・というと、「大陸が一夜にして沈んだほうが面白いから」である。その場の面白さ優先で、解釈が変わっていくのである。

 この話はオーパーツの話ではさらに加速する。
 オーパーツとはアウト・オブ・プレイス・アーティファクトの略で、考古学的に言えば、適切でない地層から発見された工芸品という意味である。
 以前、J-waveのインタビューに対して、エジプト考古学の吉村作治教授が「1年で1ミリ」と言っていました。凄い大雑把な言い方ですが、1ミリ掘れば、1年前というのが地層と年代の基本だそうで、1000ミリ、つまり1メートル掘れば1000年前です。2メートル掘れば2000年前、キリストの時代ですよ。エジプト第一王朝はBC28世紀だから、4800年前、4.8メートルだ。最終氷河期が1万2000年前に終わったと言っても12メートル掘ればその地層に達する。
 ところが、1メートルなんて、実は簡単に掘れる。Kill Bill2でブライドが埋められたのは1メートルほど。あのまま死んで1000年後に発掘されたら、本来の地層とは1000年ずれるわけですよ。
 まあ、あの女性は別な意味でオーパーツと言っても過言ではないだろうねえ。いや、映画自体が。
 閑話休題。
 ちょっと掘って、古い地層に、最近の時代のものを埋めたら、オーパーツな訳ですね。
 例えば、3000年前の地層からアルミのネジが出土したら、考古学的には誰かが穴掘っているうちに、間違ってネジを埋めてしまったのだろうから、考古学調査から除外したほうがよかろうと言って、よこに除ける訳です。
 これがオーパーツの原意ですが、エンターテイメントとしてはそこにもっとドラマ性が欲しいわけで、「これは超古代に地球を訪れた宇宙人が落としていったに違いない」とか面白いネタを妄想する。そのうち、超電子パワーとか言い出す。
 これが「聞きたい言葉」です。
 分かりやすく、なおかつ、一見、耳に心地よい解釈。
 そういうところに、誤解や錯覚、そして、幻想そのものが新たに生まれる力が隠れているんだよと。

 授業的には、そのまま続く「企画発想」になだれ込み、妄想力と商品企画のブレイクスルーへとつながります。まあ、妄想の商品化の事例として挙げられるのが「LAND WALKER」と「萌えるるぶ」であるあたりに色々問題は感じますが、「萌え単」の商品力は否定できませんよ。

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実感の力

 なぜ人はこうもたやすく、魅入られるのであろうか?

 執筆の合間に、異形コレクション32「魔地図」を読んでいる。ほとんど一日1編というスローなペースだ。通勤というタイミングがない在宅勤務の場合、本を読む時間は意図的に作らないとなかなか取れない。おかげで読書するために外出することさえある。
 今日は森真沙子の「猫ヲ探ス」。
 内田百閒と失踪した飼い猫の話。


「猫には猫の地図があるのですよ」


 ああ、いい言葉だ。
 分かる、分かる。
 直感的で、心の奥にすとんと落ちるようだ。
 これだけで、この短編を読んだ価値がある。
 異形コレクションというのは実にいい短編集だ。

 話の流れであえて恥をさらすが、前の「妖女」が出た時、私も刺激を受けて、新テーマの「魔地図」で話を書こうと思った。いや、事実、書いたのだが、「坂本龍馬、ピリ・レイスの地図を見てルルイエに向かう」という、いかにも「上海退魔行」だか、「クトゥルフ神話」なんだかというネタになってしまったので、いずれ機会があったら、R&Rにでも持ち込もうかと思って仕舞ってある。魔地図という話で、すぐに浮かんだのが「ピリ・レイスの地図」というのが、まさに「ブルーローズ」的な、というか、メガテン的なというか、いや、もしかして最近、読んでいるアトランティス絡みのトンデモ本のせいなのだろうか。
 「ピリ・レイスの地図」というのが、またグラハム・ハンコック以降、トンデモ系の好きなネタで、オスマントルコのピリ提督が残した地図がやたら正確で、当時、まだ発見されていなかった南極大陸の氷の下の地形がはっきり書かれていると言われている。アメリカ空軍のお墨付きというのも色々眉唾物であるが、困ったことに、トンデモ本の世界では「これこそ超古代文明の証拠」とか声高に言われている。「アトランティスは火星にあった」とかいう、田舎の図書館員夫婦が書いた本では、「厳然たる事実」とか形容されており、「思わず、あんたはそれを見たのかい?」と突っ込みたくなる。
 私もロマンの香りは強く感じるのだが、残念ながら、15世紀の地図に描かれた空想と、現実のわずかな類似をそこまで信じることはできない。
 どうして、こうした人々は魅入られてしまうのか?

 そこでふと思う。
 「猫の地図」と同様に、すとんと心のどこかにひっかかってしまうことがある。
 そうなるとダメなのだ。

 昔、知人の結婚式で、「海老一染之助、染太郎」師匠の「おめでとうございます」を間近で見たことがある。あのときほど、「生の芸の迫力」を感じたことはなかった。その結果が、メシタス・ランタンになるのは余談である。
 「ピリ・レイスの地図」もまた同様なのかもしれない。
 そこにある類似を、実感してしまったとき、人は魅入られ、道を誤ってしまうのだろう。

 ああ、このネタは「深淵」でも書きましたが、それはまだ未完である。

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April 21, 2005

超海洋パンサラッサ

NEWTON5月号は、「生命は超大陸とともに」と題し、地球の大陸形成史の話。
超大陸パンゲアの時代、世界は一つの海であった。その名前を「超海洋パンサラッサ」。
ああ、いい響きだ。思わず買ってしまった。
超大陸ヌーサとか、300万年前の南北アメリカ生物大交流とか。
「ブルーローズ」的に燃える(いや、萌える??)お話でした。

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ヴィンランド・サガ

 もはや皆さんチェック済みかと思いますが、先週から週刊少年マガジンで始まった幸村誠の「ヴィンランド・サガ」が熱いです。週刊少年誌で、ロングシップを背負って、山を越えるヴァイキングが見られるとは、予想だにしませんでした。先週の第一回は、土豪の城塞を巡るリアルな攻城戦で大迫力。弩がばりばり飛び、フランチェスカを投げ、大暴れ。第二回のヴァイキングの村の雰囲気もいい。首領のキャラがいい味を出していますね。
 思わず、検索していたら、講談社のオンライン予告編が見つかりました。
 基本的には1・2話の再編集なのですが、結構かっこいい!
 ああ、「深淵」でこういうネタもやりたいねえ。それとも、RQのヴァイキングか!?

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April 20, 2005

SR-71

「今朝、お前は西表島にいたはずだ。
 なぜ、ロンドンで午後の紅茶が飲める?」
「ローズ財団には、最高速度のクーリエがいてね」

 笹本祐一 「天使の非常手段 RIO1」(ハルキ文庫)を読む。
 ロケット式シャトルから水平離陸型スペースプレーンへと切り替わりつつある近未来の宇宙港で、遺伝子改造人間「エクストラ」の少女リオがトラブルシューターとして活躍する連作短編。1990年に富士見ファンタジア文庫から刊行されていた作品の全面改稿である。
 3編ある最後の作品「WAR」は、超光速エンジンの設計図を巡るチェイスを描くものだが、赤道直下の南太平洋からジュネーブ(スイス)へ逃げるために、アメリカ軍最後の高速偵察機、SR-71ブラックバードが登場する。偵察衛星の発達で引退した同機はマッハ3の巡航能力を持ち、その後、高高度観測や実験機となったが、ここに登場するのは、スクラム・ジェットの実験機で最大マッハ7で巡航できる。ミサイルすら追いつけない領域に飛び込む。
 ブラックバードは夢がある。それは音速を超える巡航性能という一点に全てを傾け、研ぎ澄まされた1本の黒い矢ともいえるフォルムに表現されている。マッハ3の速度により、ほとんどの戦闘機の追撃を無効化する。漫画「ヘルシング」において、あらゆる攻撃を撃退する魔弾の射手を切り抜け、大西洋上の空母に達するために使われたのも印象的である。
 「ブルーローズ」では、ローズ考古学財団最速の移動手段として、これを用意した。
 冒頭の台詞はその場面だ。世界中を舞台に活躍する21世紀初頭の冒険。そのための翼のひとつだ。
 (ああ、困ったことに、まだいくつかの手段がある)


 

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刃の戦姫:一部修正

 昨日、書いた「シャナ」の関する記事に「剣の戦姫」「刃の戦姫」と不統一があったので、「刃の戦姫」に統一、昨日の日記を一部修正しました。ご指摘いただいた方、ありがとうございます。

 今回は、ずいぶんアクセスをいただいたようで、「深淵第二版」に期待して下さる方が多いことを実感、頑張っていこうと思います。また、機会を見て、「深淵」の話は少しずつ、ここで書いていくつもりですが、何しろ、今は『真・女神転生TRPG~魔都東京200X~』製作のピークなので、少々、間が開くことはお許し下さい。できるだけ、毎日、Blogを書くことを自分に課しておりますが、そろそろ多忙がピークを迎えそうなので、休みの日が何日か続いても、いきなり「死亡説」とか流さないように(笑)

 不統一の話ですが、一部の魔族の二つ名とか変更する可能性が出てきています。そうも呼ばれているという説を書き加えるか、全く変えてしまうかはまだ検討中です。その辺のゆらぎも「幻想味」かなとも思うのですが、統一されていないと(ゲーム・ルーリングとして)不安定で、いやだ!という人もいますから、まあ、色々考えていきたいと思っています。


 
 

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April 19, 2005

シャドウラン第四版

 R&Rで書いたとおり、私に大きな影響を与えたTRPGの一つにサイバーパンク・ファンタジーRPG「シャドウラン」がある。日本では富士見書房から第二版が翻訳されたものの、FASAの解体に伴い、ラインが終了してしまいましたが、海の向こうではFANPROに受け継がれ、継続、ついに、シャドウランの第四版が告知された。
 発売から15年以上たち、古参の定番作品として固定ファンの多いシャドウランだが、ここで一気に2070年代に突入、システムも一気にバージョンアップするらしい。
 彗星が通過し、マトリックス崩壊から数年たった第六世界はどうなるのだろうか?
 仕事の関係で、最近はあまり追いかけていなかったが、第四版だけは買いたいなあ。

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刃の戦姫シャナ

この勝利、この心臓を我が父アロセスに捧げる!

 大分のサークルIFから連絡があり、6月5日ゴゴコンでマスターするゲームが「深淵第二版」に決まる。
 このBlogを見ている人には説明不要かとは思うが、「深淵」は1997年にホビージャパンから刊行された私の作品で、ファンタジーの再現性を強く意識したRPGである。「運命」「縁故」「夢歩き」といった独特のシステムがある。
 残念ながら、HJ版は絶版となり、現在、我々は復刊の道を探している。いずれ何らかの形で朗報をお伝えできればと考えているが、なかなか事情が許さない。今しばらくお待ちいただきたい。
 そうした「ルート」の話とは別に、「深淵」そのもののバージョンアップを進めている。これが「深淵第二版」であり、すでに2003年末には一旦、初稿に近いものが上がっており、ディベロップを兼ねて、私が色々な場所で運用テストを行っている。このBlogでも、そのあたりの話を少しずつしていきたいと思っている。

 現状、「深淵」に関しては弊社(スザク・ゲームズ)刊行のサプリメントに運命カードを加えた「体験セット」を、アトリエサードのウェブ通販で提供しておりますので、これを購入していただければ、ゲームをプレイできます。
 また、シナリオ・ソースに関しては同社の「TRPGサプリ」にも記事を掲載しております。

 さて、前説が長くなりましたが、この第二版に伴い、魔族の追加とか、よりプレイしやすいバリエーションの増加を行っています。例えば、強すぎて出せない魔族の大物に代わり、その役目を継承する子供世代の魔族を用意するというもの。
 冒頭の台詞は、獅子の大公アロセスの娘にあたる、「刃の戦姫シャナ」のものだ。
 第二版は、第一版から少しだけ時代が進み、魔族の復活が部分的に果たされた世界。何人かの下位の魔族が解放され、世界の奪還を求めて、地上の戦乱に介入してくる。「刃の戦姫シャナ」は、父神アロセスを信仰する狂戦士集団「獅子王教団」に降誕、狂戦士軍団を率いて、北原の征服に乗り出します。ラルハース南部を中心に、狂気の戦闘軍団が再び暴れまわる訳だ、かつて獅子王教団は、「絶対的な指導者」が存在しなかったため、使い捨ての傭兵扱いされることも多かったのですが、シャナの登場により、凶暴な征服者としての実力を発揮する。

 さて、データの一部を公開しましょう。これはあくまでもテスト中のデータなので、今後、変わる可能性があります。使ってみたら、ぜひ、感想をお聞かせ下さい。

●刃の戦姫シャナ

星座:黒剣
召喚値:80
影響値:8

出現形態:まるで鉈のような異形の大剣を片手で振るう女戦士。左手には円形盾を構え、全身を覆う黒い鎧をまとっている。獅子の兜の下から、漆黒の髪が僅かに流れる。

行動値18 吸収値8
攻撃1:魔剣「狂乱の大剣」 技能値8+修正7=15 効果値6 +《粉砕》
攻撃2:狂乱の舞 影響値攻撃 強度18の「狂乱」
攻撃3:獅子の拳 技能値8+修正2=10 効果値4打打
攻撃4:獅子の咆哮 戦場全体への影響値攻撃。強度18の恐怖。
防御:輝きの盾レイランファトン 技能値8+修正7=15 

運命:獅子の大公の娘シャナは狂乱をもたらす者である。
 彼女はいまだ神征紀の激戦の中から解放されていない。戦い続け、殺し続けることしか彼女には残されていないのだ。
 ついに、獅子王教団が目覚めさせた神の娘。狂戦士たちを導き、戦場に血の雨を降らせる。

魔力:
《刃の戦歌》 この場面の間、味方の軍団の行動値と意志判定に+3.
《狂乱の舞》 対象を狂乱状態に導く。
《粉砕の剣》 対象の武器は武器に対するダメージを2倍にする。鎧にあたれば、吸収値を1下げる。
《獅子の咆哮》 戦場全体への影響値攻撃。強度18の恐怖。

下僕:黒獅子の戦姫(召喚値50)
 アロセスとシャナを信仰する獅子王教団の女戦士「獅子の戦姫」にシャナの魔力が乗り移った姿。

呪い:この運命に代わり、「運命:血に飢えた戦士」を得る。
死の約定:体格+8 魔力《狂乱の舞(強度12)》および太守の剣シュラビアム、輝きの盾レイランファトンを得る。
魔剣:シャナの魔剣は「狂乱の大剣」である。

★狂乱の大剣
分類:大剣 武器修正+7 効果値6+《粉砕》 吸収値16 硬度80

関連教団:「獅子王教団」

**一部:修正しました。

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ツチグモには執事服が似合う?

 『真・女神転生TRPG~魔都東京200X~』(以下『真・女神転生X』)のワールド・パート執筆中の朱鷺田です。
 今回は『真・女神転生』ⅠとⅡの世界ということで、現代社会に忍び込んだ悪魔たちが「魔都東京の住人たち」ということで、登場します。銀座のバーで飲んでいるロキさまとか、六本木ヒルズで放蕩にふけるヴァンパイアとか、ハイテク企業のVIPになっているお姉さま系悪魔とか、原宿で占い師をしている某女神とか、作っています。
 そして、今回のネタは土蜘蛛です。
 国津神系のNPC悪魔ということで、擬人化するつもりで選んだのですが、どうも脳裏から執事服というキーワードが離れない。多分、御祇島千明先生がアスキー時代に書かれた『真・女神転生』コミックの印象がインプリンティングされているのだ。『真・女神転生』の場合、征服者「天津神」と被征服者「国津神」の図式があるので、被征服民として、天津神に使役されるというイメージがあるので、それを明確にする図式として、天津神のご令嬢&国津神の執事というコンビが形成されたのである。
 これはつまり、アマテラスの転生体である財閥令嬢とその執事を出せという天啓だろうか?
 はてさて。

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April 18, 2005

ゲーム実習:ダイスと乱数

気づくと、振っている。それがダイスというインターフェイスの強み。

 今日は学校の日。4月なので、平常授業が減り、代わりに新入生向けのスタートアップ(SU)という1回こっきりのメニューが入る。登校日がずれるので、結構困るのだが、まあ、新入生の顔も見られるので、よいか。
 私はアナログ・ゲーム担当ということで、コミュニケーションを兼ねた「アナログ・ゲーム実習」を。今日はライター科の新入生向けに2コマ(2時間)。ゲームの基礎ということで、「ダイスと乱数」と題し、サイコロ遊びの基本構造を。

●前説
 ゲーム学校なので、ゲームの基礎を学ぼうという話。
 デジタル・ゲームの構造を学ぶためにも、アナログ・ゲームでゲームの基礎を理解しよう。

●ダイスのうんちく
 ダイス(サイコロ)はメソポタミア時代に遡る世界最古のゲーム・ツールのひとつである。

●ダイスの特徴
乱数発生器:ダイスは一番簡単な乱数発生器であり、運(Chance)の象徴となる。
アクションの焦点:ダイスを投じることは、非常に能動的なアクションであり、意志を表現できる。
解放のカタルシス:ダイスを投じることには意志決定が終了し、「運を天に任せる」ことであり、解放の快感が伴う。そこが習慣性を生み出す。
運命というドラマ:人間は確率の中に夢を見る。ダイスは確率を提供するが、それを解釈する人間はドラマで補完しようとする。
音の演出力:ダイスは転がる音と姿がある。それはドラマチックな演出を生む。

●ちんちろりんにどんぶりは欠かせない
 ダイスの演出力を学ぶために、テーブルで振った場合と、どんぶりに投じた場合を比べる。
 ええ、あの音がないのは、ちんちろりんとは言えません。
 つまり、ちんちろりんにおいて、サイコロとどんぶりが優れたゲーム・ツールであると。

●実習:ブラフ
 実際の傑作ダイス・ゲームを遊ぼうということで、「ブラフ」(または「ライアーズ・ダイス」とも)をプレイ。
 実は、このゲームは非常にハードな読みとはったりのゲームなのですが、派手なダイス・ロールのおかげで、中毒性の高い盛り上がるゲームになっています。気づくとえんえんサイコロ振っているんだわ。

 カードとの比較のために、トランプで「ブラフ」を遊んでみたが、ちょっとこれは不評。
 すぐ振れるというダイスのアクション性が失われるためだ。

●ワード・バスケット
 少し時間があまったので、シリトリ・カードゲームの「ワード・バスケット」をプレイ。
 実はこれ、脳のスイッチが入るまで、苦戦するゲームなので、言葉が出ないで苦労する人も。
 ボキャブラリーを増やす訓練にはいいんだけどね。

来週はプログラム科のために、同じ授業を。
ブラフはいいとして、後半の構成を、プログラム科向けに変更しないとね。
6ニムトか、トランプ・ゲーム総合か。

 

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ニ足歩行ロボット:ランドウォーカー

「愛地球博」の踊る搭乗型ロボットは、ロボット好きには新たな光明を見せるものだった。
そして、今、バトルテックはそこにあった。
ランドウォーカーを見た瞬間、時代の違いを感じさせるものであった。

「ブルーローズ」を書いたときはジョークだったものが、今はリアルである。
それが時代の速度なのだろう。

**補足情報(4/21追加)

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April 17, 2005

ダンダンウィリク

 人工衛星による調査で、当時、ダンダンウィリクの周囲には今は無き2本の河が流れていたことが分かっている。当時、その流域には100を越える寺院があったが、川の喪失とともに衰退し、やがて10世紀、仏教王国ホータンは、イスラムの侵攻とともに滅びた。

 仕事の傍ら、「新シルクロード」第四夜を見る。
 砂漠の中に消えてしまったオアシス都市、ホータン王国の物語。
 人工衛星では発見できるかつての河の跡、というのは、「ブルーローズ」で紹介したガッカル・ハークラー河とインダス文明の関係を思い起こさせます。
 次回は「ラピスラズリのふるさと」ですよ。

PS;ホータンというとつい、ワースブレイドが思い出されるのですがね。

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April 16, 2005

天からの洪水

 「天からの洪水」アトランティス伝説の解読」エバーハート・ツァンガー 新潮社
 昨夜読了。現役の地理考古学者、それもギリシアで発掘経験豊かなプロによるアトランティス研究書。アトランティス伝説を「原典(プラトンの記事)」から解読しつつ、自分自身の豊かな発掘経験、研究成果とつき合わせ、論理的な分析で「アトランティス伝説」と「トロイ」の類似を提示し、トロイ説を提唱する。
 この本の凄いところは、作者の専門が、古代の風景を再現する地理考古学であるため、古代ギリシアの風景が非常にイメージ豊かに語られ、その知識をもとに、アトランティスが分析されていくことだ。

 例えば、アトランティスが繁栄していたとされる時代は、プラトン(BC5世紀中盤に死去)の文章をそのまま信じるならば、ソロン(紀元前6世紀)から9000年前。つまり、BC9600前後。紀元前1万年を少しかけるぐらいになる。
 さて、その頃のギリシアの風景はどのようなものだったのだろうか?
 無人だ。
 最終氷河期の間、ギリシアに人が住んでいた痕跡はほとんど発見されていない。
 その最終氷河期が終わるのが紀元前1万年。つまり、プラトンの言葉通りであれば、アトランティスの繁栄した時代とは氷河期の終わりであり、そこにはアトランティスと戦った都市国家アテネの祖先は愚かギリシア人の影さえも見出せない。
 いや、エジプトでさえ、いわゆる文明すら発祥していない。旧石器時代人が緑のサハラで象や河馬を追いかけていた時代である。どうもオカシイ。
 しかし、エジプトの神官からソロンに語られた際、あるいは、ソロンが筆記した際に、年号に関する何かのミスがあれば、どうだろう。太陰暦のある地域では月の1周期を1年と扱う場合がある。そうなると、1年は約13ヶ月ぐらいになる。これで9000を割ると700年強。紀元前1200年前後1~2世紀。ギリシア暗黒時代の前、すまわち、ギリシアの神話時代であるアカイア期となる。エジプトでも、新王国の最盛期、ツタンカーメンから、ラムセス2世などの時代になる。このあたりの話ならば、記録も残っている。
 そして、ホメロスに語られたトロイの滅亡は紀元前1275年から1240年の間ではないかとされている。
 この後、周辺調査を踏まえて、「アトランティス伝説とは、エジプトの記録に残されていたトロイ戦争の伝聞ではないか?」という仮説にたどり着く。その仮説のもと、分析していくと、アトランティス伝説とトロイ伝説の共通点が浮かび上がり、プラトンが「クリティアス」を中断したことさえ説明できる。
 面白い。
 この手の本は突っ走ったものが多いが、学者の本であるだけに落ち着いた筆致で、描写もウィットに富み、分析も理性的で、ひきつけられるものであった。
 あまりに理性的なので、そのままでは「ブルーローズ」のネタにはならないが、ギリシアの古代風景の再現を進めるシーンとか、ソロンとエジプトの神官の間で交わされただろう情報の齟齬とか、「イリアス」「オデュッセイア」の再分析など、知的な刺激に満ちており、ひねりが効かせられそうだ。


 


 

 

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April 15, 2005

Night Voices,Night Journeys

 上記タイトルはクトゥルフ・ジャパネスク・アンソロジー「秘神界」の英語版第一巻。
 本日Amazonより到着。
 非常に多忙のこれからを考えると、読む暇あるかなあ。

 序文は、クトゥルフ神話アンソロジスト、ロバート・プライス。
 なんで、キリスト教的な恐怖であるクトゥルフ神話を日本人が?という質問に答えるため、日本人の精神的な土壌を仏教や第二次世界大戦での敗戦、西欧化などを絡めてじっくり解説する。オウム真理教の事件にかなりの紙幅をととり、日本はすでにクトゥルフ神話的な世界を受け入れつつあると・・・。(微妙に解釈が違いそうだな、ここ)
 

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ホラー映画における「予兆」

 今日は専門学校の日。「ファンタジー概論」も終盤に差し掛かり、ホラーの本質という話で、「エルム街の悪夢」を見ながら、恐怖映画の怖さを解説する。最近、「VSジェイソン」とか人気者ですが、それもこれも、この第一作の出来がよくて怖いからですよ。

「エルム街の悪夢」がなぜ怖いのか?
鉤爪でも、焼けたフレディの顔でも、飛び散る血しぶきでもない。
それは、確定された「クライマックス」、すなわち焼却炉前での対決に向けて、
イメージとシンボルを丹念に積み上げた演出によって、
視聴者は最後の場面を予想することを余儀なくされるからだ。

 ここまで聞いて、拙作「深淵」を思い出してくれたユーザーの方はありがとう。
 そう、ホラー映画の演出と「深淵」の夢歩きは、基本構造が一緒なのである。
 「深淵」ではダーク・ファンタジーのイメージを使った「夢歩き」によって、連想のパターンを制御し、クライマックスの「予兆」をばらまき、プレイヤーにクライマックスの予想を強要しているのである。そのため、「深淵」はホラーに向いているのだ。

 話を戻そう。
 「エルム街の悪夢」のもう一つの恐怖は、現実が崩壊していく感覚である。
 主人公のスクールライフは、徐々にフレディの住む悪夢の世界に取り込まれていく。現実としての枠組みが崩壊していく。そこが怖いのだ。

 これをアイデンティティまで広げていった例として「エンゼル・ハート」を見せる。
 「シティ・ハンター」の続編ではなく、ミッキー・ロークがしがない探偵を、ロバート・デ・ニーロが、依頼人ルイス・サイファーを演じている。『真・女神転生』に出てくるルイ・サイファーのネーミングは多分、この作品の影響だろう。奇怪な人探しの依頼が、主人公の日常を崩壊させ、そのアイデンティティさえも狂わせていく。

 ・・・という建前だが、実は、中盤にある一場面のために、これを紹介したと言っていい。

 途中経過報告のために、ローク演じる探偵エンゼルがデ・ニーロ演じる依頼者ルイスを訪ねる場面。ルイスは、ゆで卵をむきながら、報告を聞き、いやがるエンゼルに金で仕事を続けさせる。この時のカメラは、ルイスの指先とゆで卵に集中する。これはぜひ見て欲しい。卵を剥くための殻の割り方、仕草、段取り、台詞とのマッチングに至ってももう迫力ですよ。どこにも尻尾も角も見えてませんが、こいつ、悪魔だよというオーラが見えます。
 これは「ダンジョン・シネマティーク」でも紹介したけれど、NPCの表現に使えますね。私がマスターするとき、時々、ネタとしてやります。

 最後に「DAGON」でクトゥルフ神話につなげて終わり。
 これは「クトゥルフ神話ガイドブック」でも書いたとおり、「インスマウスの影」の忠実な映画化です。かなり俗悪ですが、雨の降り止まぬインボッカの街は雰囲気が出ています。ホテルの受付の男が瞬かなかったり、首に鰓っぽい筋があったり、神父の指に水かきがあったり・・・ラヴクラフティアンには反応するしかない記号が山盛りです。
 DVDのキャッチ・コピーはモンスター・ホラーですが、嘘です。前半は不条理ホラーで、怪物が出てくるのは中盤以降で、そこからはブライアン・ユズナの血しぶきホラーになります。
 来週は、UFOとかオカルトとか、現代の都市伝説系の話をして終わりの予定。

PS:このどこがファンタジー概論だって?
 ファンタジーは怖いものなのですよ。童話だって、ゲームだって、状況的に怖いネタはたくさんあるでしょ?
 ホラーとファンタジーは隣接領域なんです。怖さが微塵もないファンタジーは実は少ないはずです。

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宿敵アトランティス

 あなたがたギリシア人は若い。魂が若いのだ。
 あなたがたは忘れてしまった。
 あなたがたアテネ人の祖先がかつて恐ろしい敵と戦い、これを打ち破ったのか?
 その国の名はアトランティス。

 『真・女神転生X』の製作の傍ら、超古代文明関係の資料を読んでいる。「ブルーローズ」製作の際に色々調べたのだが、いざ調べ直してみると、さらに面白い話が尽きない。
 機会を見て、このBlogでも少しずつ、話していこうと思う。
 カテゴリーは「ブルーローズ」ということで、シナリオのネタにでもしてほしい。

 アトランティスは、いわゆる超古代文明の代表格であるが、意外にその原点は知られていない。ギリシアの哲学者プラトンが自然論を語った「ティマイオス」の冒頭でその存在に触れ、続く「クリティアス」で国家論の一例として詳細に語られながらも、なぜかこれは著作が放棄された。日本では岩波書店の「プラトン全集」に収められているが、店頭で見つかることは少ない。
 「ティマイオス」では、エジプトに旅行したギリシアの哲学者ソロンが神官にアトランティスの話を聞くのであるが、そこで冒頭のような台詞を聞くのである。
 凄い台詞である。

 ギリシアの老哲学者に向かって、「あんたらはガキだ」と言い切っているのだ。

 我々からすると、ギリシアは欧州の古典精神の原点であり、成熟した哲学者の世界のようにも感じられるが、歴史的に見ると、そうでもない。
 ギリシアにおける文明は神話時代と言われるアカイア期(紀元前3000年頃)に勃興するが、紀元前1000年に至る前に一度壊滅し、暗黒時代に突入する。ここで一度、「文字すら持たない状態」に陥り、紀元前800年頃からやり直してきた。紀元前28世紀から統一王朝が生まれていたメソポタミア、エジプトと比べれば、文明の成熟度がまるで違っていたのである。

  [>>>>強大なエジプト帝国から見れば、当時のギリシア人の大半はバルカン半島やエーゲ海に住む田舎者に過ぎぬ。こいつらは千年前の自分たちの栄光さえ忘れているのだからな。-銀の暁-]
  [>>>>大洪水を知らぬ者はすべて、子供よ。 -妲妃-]

 プラトンが「ティマイオス」を出版した紀元前350年頃のギリシアは、アテネを中心に十分に繁栄していたが、都市国家の乱立する戦国時代から脱することの出来ないままだった。先行するエジプトから見れば、ギリシアは伝統を持たぬ新参者であった。当時は、ギリシア人たちが地中海周辺全域で傭兵として雇われ、暴れまわっていた時期でもある。
実は、この時期、エジプトはすでに黄昏の時代を迎えており、王朝は乱立し、しばしば、外国勢力に征服され、最終的にはアケメネス朝ペルシアに征服されているのであるが、そこで大きな軍事的役割を果たしたのがギリシア人傭兵だったという。

[>>>>エジプト的に言えば、ギリシア人は便利な猟犬だったが、手を噛まれた気分だったかもしれない]

 さらに、アケメネス朝ペルシア帝国との戦いの中、疲弊し、北からは野蛮人と差別していたマケドニアが勃興しつつあった。「ティマイオス」の出版は、アレクサンドロス大王出現の前夜である。
 そういう時期に、プラトンは後の「クリティアス」および「国家論」に続く「自然に関する論文」として「ティマイオス」を書き、アテネの宿敵アトランティスの話を語ったのである。
 つい、我々は「一夜にして海に沈んだ帝国」の話にばかり目を奪われがちであるが、アトランティスの話は、壮大な古代戦記でもある。書かれなかった「クリティアス」の続編には「理想の国家アトランティス」ではなく、「アテネの宿敵アトランティス」が描かれていたはずなのだ。

 面白い。

 先入観と真実の違いはとても新鮮で刺激的だ。
 もちろん、ここで書いたことの半分は、同時代という切り口で、古代史を切り開いてみた私の妄想に過ぎない。だが、年表だけを見てもこんな空想ができる。だから、歴史ミーハーは止められない。

PS:先日の深淵CONで「ブルーローズ」のマスターをしていますという女性にあった。タイミングを逃し、詳しくお話を聞けなくて残念であったが、やはり嬉しいものである。あの本で調べたことはやはり自分の中で歴史の魅力を再認識させる結果になったので、私の中で「ブルーローズ」は重要なマイル・ストーンである。色々、いや、山のように嘘や誤解もあるが、それも含めて、今も大事な一冊だ。

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April 14, 2005

ゲーマーの結婚

 昔、よくテストプレイにきてくれた女性が結婚することになり、ネットで祝電を打つ。
 最初は「結婚生活というダンジョンに踏み込み、多くのモンスターと戦う勇気を讃え、その苛酷なクエストが、多くの経験点とアイテムに恵まれんことを切に願う」とか書いたのだが、やりすぎな感じがしたので、もう少し短めなものにしました。結婚式で読まれても説明に困るかなと。
 私も結婚した際には、仲人に「新郎がどうやって生活しているのかさっぱり分かりません」と挨拶された口なので、そういうネタはまあほどほどにしておこうかと。ちなみに、私の職業は知人の編集者が説明してくれましたが、親戚の大半は理解していなかったようだ。
 彼女の場合、結婚相手もゲーマーらしいので、ある程度、ギャグも通じそうですがね。

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マンイーターの夜

「あなたの知らない世界を教えてあげる」
 魔女はそう言って微笑んだ。
 真赤な唇の上で、まるで別の生き物のように、ピンク色の舌が身をよじった。

 TRPGのデザインはシステム管理とイメージ管理のせめぎ合いだ。モンスターのチェックはデータ・レベルの再現力を確認するとともに、それをどう使いたいか、どんなシナリオになるかを考え続けることになる。
 『真・女神転生』には多くの女性型悪魔が出現し、セクシーな台詞を残している。
 屍鬼ボディコニアンという女性型ゾンビが有名だが、この名前はすでに時代から取り残されている。最近のネタということで「セレブニアン」というのはどうだろうか? セレブな人妻のゾンビである。いや、この発想からして古いかもしれない。
 ボディコニアンの上級バージョンとして、幽鬼マンイーターがある。ボディコニアンが赤のボディスーツに対して、マンイーターは白、まるで文字のないバドガールのようなノリだ、首のチョーカーがセクシーである。彼女のシナリオを作ろうと思った。ただボディコニアンの強化版ではなく、幽鬼の女王という感じでいこうと。もちろん、もっと上に邪悪な女神は沢山いるのだが、中盤のBOSSとしてストーリーに絡んでいけるようにしたい。
 魔術師で、自らを幽鬼に変えた人物とか。あるいは何かの因果で死ねないまま、幽鬼化したのか?
 享楽的な性格の影に、無限の寿命の影に隠れる諦めのようなものを散りばめてみようと思う。

「例え、100年生きても人生など分からないわ。
 それがどうやって生まれ、失われていくのか、気づかない限りはね」
 魔女はそこで一息ついた。
「だから、あなたをちょうだい。
 ワタシの中の空白を満たせるように」

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April 13, 2005

関連作品

 サイトの横に関連作品一覧をつけました。
 クリックすれば、関連製品をAmazonで購入できます。
 入力順になっているので、ちょっと順番がオカシイ感じですが、弊社から刊行の「深淵」関係は最初に入れたので下の方に、最近出たものは上の方にあります。今後、手探りで直していく予定です。
 最近、なぜか問い合わせの多い「龍王教典」はこちらでは在庫切れです。
 リストにはありませんが、「レイトショウ」は国産アニメ対応の「イット・ケイム・フロム・ザ・レイト・レイト・レイトショウJ―深夜三流俗悪アニメの逆襲」(あのピンクの表紙版です)の在庫がありますが、ISBNが古いらしく、入りませんでした。Amazon、もしくは、アトリエサードのサイトより注文して下さい。

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DADDYFACE メデューサ

 海底で心音が強くなっていた。
 やがて、アトランティスを破壊した大破壊龍(クトゥルー)は目覚めるに違いない。

 伊達将範「DADDYFACE  メデューサ」全4巻読了。
 人気のトレジャーハンターアクション(ラヴコメ)シリーズ「DADDYFACE」シリーズの最新刊はついに4巻かけて、アトランティス編を完成させた。
 アトランティスに関する仮説は色々あり、その場所は全世界50箇所以上に及ぶ。主要仮説として、「エーゲ海説」(サントリーニ島が最有力候補だが、トロイ説も最近は有力)、「地中海文明説」(マルタ島など)、「大西洋説」(昔、ヘラクレスの柱=ジブラルタル海峡説、ただし年代的にやや問題あり)、「カリブ海説」(大西洋説の延長で、エドガー・ケーシーの予言などオカルト系の支持がある)など、色々ある。
 今回のDADDYFACEでは、エーゲ海系としつつ、実は宇宙人系異世界(ポケット・ユニバース)説。
 ノンモ(=オアンネス=インスマウス)や、天使型戦艦まで、登場、主人公側も、主人公が使う九頭龍拳法(始祖は海底に眠る邪神らしい)から、中1の美少女が使う追跡型ライフル、パワード・スーツやフラメル・エンジン(錬金術駆動)搭載X-32型改戦闘機まで、なんでもありの大暴れ。

 超古代文明のネタということで、「ブルーローズ」ユーザーにはお薦めのシリーズですが、ついに、クトゥルフ神話要素まで登場、次回作は「始祖覚醒」ということで、楽しみですね。

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April 12, 2005

退魔生徒会事件簿:根性コートの亡霊

 古びた石段を50段登った山の中腹に開かれた古い硬式テニスコートは、テニス部員から「根性コート」と呼ばれていた。荒れた地面、メインコートから隔離された隔絶感、負ける度に石段を往復する「敗者の掟」、そして、夕闇とともに現れる「鬼先輩の亡霊」・・・。
 そして、生首でサーブを打つ「栄光の先輩」が現れた。

 『真・女神転生TRPG~魔都東京200X~』(以下略称『真・女神転生X』)の執筆とテストプレイの日々が続いています。その間に、雑誌原稿を書いたり、次の本の資料を読んだり、イベントにいったり。
 土曜日にも、古いゲーム仲間が久しぶりにやってきたので、娘を交えて、『真・女神転生X』。他人にゲームを説明するというのは、ルールの再チェックにとても重要である。
 今回のネタは、聖華学院退魔生徒会。「アマラ深界」で、カジュアルなプレイスタイルとして提案したものですが、『真・女神転生X』でも継承されるTRPGオリジナルの設定です。武蔵野台地の上に築かれた巨大な私立高校で起こる猟奇事件を解決していきます。
 今回は、凶鳥チョンチョンに取り付かれた先輩の幽霊(ゴースト)という話でした。低レベルのよさはじたばた感が楽しいこと。どたばた慌てた挙句、ヤマオロシのクリティカルで決着。お疲れ様でした。

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April 11, 2005

深淵CONシキサイ:薄紅

 湖の岸辺は、満開の桜の花に包まれ、この世ならぬ薄紅色で彩られていた。
 誰もいなかった。
 何の声も聞こえなかった。
 僕らは、ただ、そこに立ち尽くしていた。薄紅の桜吹雪の中、水面を渡るはしけを待ち続けた。

 昨日は深淵オンリーコン、「深淵CONシキサイ」に行ってきました。
 深淵の好きなマスター、深淵をプレイしたいというプレイヤーが集まるコンベンションで、今回は30名以上、計7卓の深淵がプレイされました。
 私は、調整中の第二版を使い、夢歩きを多用した即興型のホラーセッションということで、タイトルを時期ネタの「薄紅」に決定。舞姫ディネーの策謀により、桜吹雪の舞い散る湖岸でPCが出会うという枠組みを決めました。
 「深淵」は強力な物語支援システムにより、ゲームマスターがセッション・イメージを強く提示するだけで、因果関係が動き出すシステムで、今回は桜吹雪のイメージを中心にマスターしました。

 結果、紡ぎ出された物語はこんな感じです。

 桜の結界に守られた湖に浮かぶ封印の島。代々そこに住む守護者の一族以外は、人避けの結界に阻まれて踏み込むことさえ許されない聖地であった。
 しかし、火の侯爵ノマによって、少年の村が焼かれてしまった時から物語は変わった。
 苦痛の烙印を押された少年は火炎の精霊に追われ、結界を打ち破り、桜吹雪の舞い散る湖に達する。それを追いかけるように岸辺に現れたのは、失踪した主人を探す白馬の娘、禁じられた夢に導かれた詩人、そして、復讐を心に秘めた奇妙な男・・・・・・。そして、彼らを迎えるように、湖を渡ってくるはしけを操るのは「封印の守護者」の一族でありながら、魔族の走狗と成り果てた女戦士であった。
 封印の崩壊は奇妙な魔性たちを封印の島へと招きよせ、やがて、奇妙な男は女戦士とともに、世界を滅ぼす魔族の封印を解こうと動き始めた。

 最終的には「奇妙な旅人」(PC)が、封印開放に向けて深淵を召喚、他のPCがそれを妨害しようと戦い、「奇妙な旅人を捕えて終わりました。途中、詩人が実はこの島の一族の血を引くことが明らかになったりと、運命システムのパワーが炸裂しました。進んでラスBOSSになってくれた「旅人」役のプレイヤーさん、お疲れ様でした。

関連サイト
深淵CONシキサイ
http://members.jcom.home.ne.jp/tokyo-sinen-con-sikisai/n-p.htm

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April 09, 2005

アトランティス

 現代トレジャーハンター物「ブルーローズ」のためのネタ・メモ。

 本日の「世界ふしぎ発見」はスペシャルでオーパーツから超古代文明、アトランティスとムーの話です。
 TV番組にしてはスムーズにまとめていますが、色々喰い足りず、同番組ならではの新発掘情報がほとんどないのが残念です。モアイが「未来に生きる」という意味だという話、モアイを歩かせる実験が見所かな。
 個人的には、アトランティス研究本の古典「Atlantis:the Antediluvian World」の作者、イグネシアス・ドネリーの写真が公共電波に載ったので十分。私の持っているDover版には写真がないのでした。
 このドネリーという人はミネソタ州の法律家で、1860年代、南北戦争期に、ミネソタ州の副知事を務めた後、趣味の考古学が高じて、文筆業を始め、一般小説のほかに、1882刊行の同書を皮切りに、歴史ミステリーに関わる本を3冊書きます。後2冊は「ラグナロク」が実際にあった世界の破滅を描いたという「Ragnarok:the Age of Fire and Gravel」と、シェークスピアの演劇に隠されたフランシス・ベーコンの秘密のメッセージを追いかける「The Great Cryptogram:Francis Bacon’s Cipher in the So-Called Shakespeare Plays」です。
 このタイトルだけで、「ブルーローズ」と「真・女神転生」と「上海退魔行 ~新撰組異聞~」、あともしかすると「V:tM」のシナリオが1本ずつかけそうな話です。「Atlantis」は翻訳版を探しているのですが、見つかりませんので、このあたり、ちゃんと読みたいと思います。いずれどこかでご報告をしましょう。

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April 08, 2005

自分史:きっかけ

 専門学校の授業で「自分史」を作成させ、「今、ここにいる理由」を考えさせる。
 なぜ、ゲーム専門学校に来たのか? なぜ、クリエーターを志したのか?
 あるゲーム、もしくは小説との出会いがあったという生徒もいれば、小さな頃から、お話が書きたかったという生徒もいる。「ドラクエ」がきっかけという人がいれば、「美少女ゲームにはまったのは転落の始まり」という人もいる。
 その転換の焦点となる事件は何かを明らかにする。
 そうやって、キャラクターのデザインに生かす実習なのだが、もちろん、私にも私なりの「きっかけ」はある。
 
 多分、最初のきっかけは、小学校の頃、作文を誉められたからだ。
 童話と称した冒険物語を原稿用紙10枚ぐらいで書き、先生だけでなく、級友からも誉められた。調子に乗って20作ぐらい書いた。
 もう一つ、小学5年生の正月に、新聞配達で稼いだ小遣いで、春陽文庫の江戸川乱歩全集を買い始めた。完全に大人向けのほうである。多分、ここで何か道を間違った。そして、半年後には早川SF文庫を買い始めていた。
 中学と高校の時代は本読みの友達がいたことが強く影響している。中学時代の悪友Iとは街の本屋を制覇した挙句の果てに10キロ以上離れた隣町まで自転車で古本を探しにいった。高校時代の悪友(これもイニシャルはIである)は、純正のSFマニア、特撮好きの上に、UFO研究までやるという筋金入りで、卒業後も色々刺激を与え合った。少し前にUFO関連本の翻訳すらやってのけたのだが、一時期、こいつが成田空港の管制官(地上管制だったらしいが)をしていたのである。ああ、この男についてはネタが多すぎる。だが、よい男だ。彼が結婚した時には心底、安堵したものだが、かたぎじゃないのは私のほうだった。
 TRPGに出会ったのは大学に入ってからだが、ルーンクエストの真価に気づいた時は色々変わったと自分で感じた。結局、一心不乱にTRPGの設定と構造を考えた。他にもSFファンとして日本全国を渡り歩き、馬鹿なことをたくさんした。まあ、あの頃からまともな大学生ではなかったから、結局、こうなる運命だったのかもしれない。
 それでも、私をここまで導いてきた(人や本との)出会いには感謝している。
 それが今、私の仕事の礎になっているのであるから。

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レベリオン

 今日は専門学校の日。「ファンタジー概論」もやっとライトノベルズまで来て、SFへと広がっていく。
 「ブレイドランナー」を見せながら、サイバーパンクの原点の紹介を行うも、公開の頃に生まれた生徒もおり、もはやこれも古典である。
「二つで十分ですよ」
 このジョークも通じない。
 しかたないので、「マトリックス」の話をした後、2001年以降のSF映画の事例として、「レベリオン」の冒頭を見せる。ガン=カタのイメージが先行するが、そのアクションをのぞけば、「華氏451」(「華氏911」ではなく、ブラッドベリのです)を、「マトリックス」以降の文脈で語り直したディストピア物である。
 残念ながら、アクション・シーン以外の反応はいまひとつ。こういう政治信条ネタのディストピア話は今の読者には通じないのかな? 確かにネタの本体は40年前だよなあ。

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April 07, 2005

シナリオ:新東京タワー

 地上波デジタル時代に対応し、建設される新東京タワーの第一候補地が墨田区に決まったそうです。
 『真・女神転生TRPG~魔都東京200X~』のワールド・ガイドにこっそり入れるかな。

 『真・女神転生』的には、新東京タワー建設に当たって、ガイア教団やメシア教会が暗躍、建設現場は、悪魔の巣窟になるというのがそれらしいですね。かつてのシーアークみたいな感じで。鉄骨の上から地上を見下ろすケルベロスって絵になりますよね。

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April 06, 2005

現代を舞台とすること。

 昨日は学校にて『真・女神転生TRPG~魔都東京200X~』。
 ここからRPGを始めるという若い生徒たちとTRPGを遊ぶのは、エネルギーをもらうようなものである。
 ゲーム専門学校の生徒という背景からか、割と色物キャラ(12歳のガイア教徒とか、10歳の巫女さんとか、8歳のガンマン少女とか)ダメなキャラクターが多々いますが、それも今の若い人のニーズなんだんなあと笑って対処してます。物事は全部経験(ネタ)である。はい。
 シナリオは、最近、繰り返して使っている「ワルプルギスの夜」。PCとのコネを明確にしていないのでやや流れは変わりましたが、何とかティアマット召喚を阻止。
 基本的に、最近初めてTRPGに触れ、『真・女神転生TRPG~魔都東京200X~』のキャンペーン3回目というノリなので、今は戦闘がまず面白いあたり。
 ひとり、「ゆりこ」とコネがある人物がいて、「ゆりこ」との会話判定でクリティカル成功を出し、愛をはぐくみつつあります。今回も「ゆりこ」ポイントで、「ゆりこの助け」をもらい、ランダマイザー発動。
 卒業までに「ゆりこ」と結婚できるかなあとか。

 現代を舞台にする楽しみは、そういう身近な感覚にあります。
 『真・女神転生』はその身近な生活が崩壊していくストーリーがあり、崩壊を食い止めようとする一方で、さらに崩壊を望む部分もあり、そこを表現したいと思います。

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Lupus in Tabula

 以前より、ネット上で話題になっている「汝、人狼なりや?」第二版を手に入れ、学校にて生徒とプレイ。
 Lupus in Tabula。製作販売元はイタリアのゲームメーカーdeVinch gamesです。ここは30分で出来る宮廷陰謀ゲーム「il vi re」とか、マカロニウエスタンカードゲーム「Bang!」とか色々面白いゲームを作っていますが、「汝、人狼なりや?」は寂れた村で正体の分からない人狼と村人の戦いを扱ったハードなゲームです。
 プレイヤーはジャッジ進行役のほか、8人以上が必須。7名プレイヤーが限界かな。毎晩、人狼に一人ずつ村人が殺される中、村人たちは人間に化けた人狼を殺すため、仲間をひとりずつつるし上げていく。
 このゲームの肝は、乱数要素がほぼヒューマンファクターだけだということ。人狼が生贄に選ぶのも、村人が誰をリンチにかけるかのも、彼らの意志次第だからです。ひどい話だ。
 慣れると1プレイが45分ぐらいで終わります。昨日の場合、プレイヤー8名で45分ほど。人狼が何食わぬ顔で村人の会議のイニシアティブを取り、狩人(ボディガード)を処刑させ、占い師を暴きだして完全勝利。

 今回、このゲームをやろう、やろうと言い出したのは、普段、アナログ・ゲームとは無関係なゲーム学校の生徒です。ネット用に改造された「人狼BBS」で盛り上がり、この「汝、人狼なりや?」をPS広島に注文するまでになったそうです。面白い話です。こういう人にも訴求できる、シンプルかつ奥の深いゲームを作りたいものですね。

 

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April 04, 2005

イベント:6月5日 大分ゴゴコン

6月5日、大分で開催される、サークルIf主催の「ゴゴコン」に出席します。
昼から夜遅めまでで、ゲームは夕方まで。後はトークショー。
という訳で、前後2泊3日で、大分行きの予定です。

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CTHULHU500

クトゥルフ・ネタのレース・カード・ゲーム。

発売元はATLAS GAME(USA)。『真・女神転生』のATLUSではなく、アルスマギカとかで有名なアメリカのアナログ・ゲーム・メーカーです。
もちろん名前はインディ500のパロディ。
YS-CONの後、隣の卓で「サヴェッジ・サイエンス」のマスターをされていた齎藤高吉さんがお持ちになっていたのを見せてもらいました。
「シャッガイから来たメカニック」とか「モナコからやってきたカビ状生物」とか、クトゥルフ好きならば、にやりとするカード名ばかり。
アークライト宮野氏によれば、中身は案外ちゃんとしたレース・ゲームだそうな。
こういうのも、一応、チェックチェック。

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YS-CON 4月3日

 4月3日
 秋葉原のイエローサブマリンで開かれたYS-CON第10回で、『真・女神転生TRPG~魔都東京200X~』のマスターをしてきました。
 シナリオはR-CON WESTと同じ「ワルプルギスの夜」。サバトと化したヴィジュアル・バンドのライブに潜入し、召喚の儀式をジャマするというもの。予約のドタキャンが入って、予定人数を割るというアクシデントがあったものの、全員、覚醒し、合計5回のクリティカルで、堕天使が化けたアルビノのボーカル、ルイ・ストームブリンガーと妖獣ガルムを倒し、無事、ティアマットの降臨を防ぎました。召喚のための七つの封印は解かれ、生贄の娘が必死で抵抗する中、主人公役のサマナーがクリティカルで、ルイを倒した。命運も幸運も全て使いきった後での勝利だった。
 このシナリオはR-CON WESTもあわせて、5回回しましたが、皆なんとかギリギリでしのぎ、ティアマット召喚を未然に防いでくれますね。面白いものです。

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