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April 15, 2005

宿敵アトランティス

 あなたがたギリシア人は若い。魂が若いのだ。
 あなたがたは忘れてしまった。
 あなたがたアテネ人の祖先がかつて恐ろしい敵と戦い、これを打ち破ったのか?
 その国の名はアトランティス。

 『真・女神転生X』の製作の傍ら、超古代文明関係の資料を読んでいる。「ブルーローズ」製作の際に色々調べたのだが、いざ調べ直してみると、さらに面白い話が尽きない。
 機会を見て、このBlogでも少しずつ、話していこうと思う。
 カテゴリーは「ブルーローズ」ということで、シナリオのネタにでもしてほしい。

 アトランティスは、いわゆる超古代文明の代表格であるが、意外にその原点は知られていない。ギリシアの哲学者プラトンが自然論を語った「ティマイオス」の冒頭でその存在に触れ、続く「クリティアス」で国家論の一例として詳細に語られながらも、なぜかこれは著作が放棄された。日本では岩波書店の「プラトン全集」に収められているが、店頭で見つかることは少ない。
 「ティマイオス」では、エジプトに旅行したギリシアの哲学者ソロンが神官にアトランティスの話を聞くのであるが、そこで冒頭のような台詞を聞くのである。
 凄い台詞である。

 ギリシアの老哲学者に向かって、「あんたらはガキだ」と言い切っているのだ。

 我々からすると、ギリシアは欧州の古典精神の原点であり、成熟した哲学者の世界のようにも感じられるが、歴史的に見ると、そうでもない。
 ギリシアにおける文明は神話時代と言われるアカイア期(紀元前3000年頃)に勃興するが、紀元前1000年に至る前に一度壊滅し、暗黒時代に突入する。ここで一度、「文字すら持たない状態」に陥り、紀元前800年頃からやり直してきた。紀元前28世紀から統一王朝が生まれていたメソポタミア、エジプトと比べれば、文明の成熟度がまるで違っていたのである。

  [>>>>強大なエジプト帝国から見れば、当時のギリシア人の大半はバルカン半島やエーゲ海に住む田舎者に過ぎぬ。こいつらは千年前の自分たちの栄光さえ忘れているのだからな。-銀の暁-]
  [>>>>大洪水を知らぬ者はすべて、子供よ。 -妲妃-]

 プラトンが「ティマイオス」を出版した紀元前350年頃のギリシアは、アテネを中心に十分に繁栄していたが、都市国家の乱立する戦国時代から脱することの出来ないままだった。先行するエジプトから見れば、ギリシアは伝統を持たぬ新参者であった。当時は、ギリシア人たちが地中海周辺全域で傭兵として雇われ、暴れまわっていた時期でもある。
実は、この時期、エジプトはすでに黄昏の時代を迎えており、王朝は乱立し、しばしば、外国勢力に征服され、最終的にはアケメネス朝ペルシアに征服されているのであるが、そこで大きな軍事的役割を果たしたのがギリシア人傭兵だったという。

[>>>>エジプト的に言えば、ギリシア人は便利な猟犬だったが、手を噛まれた気分だったかもしれない]

 さらに、アケメネス朝ペルシア帝国との戦いの中、疲弊し、北からは野蛮人と差別していたマケドニアが勃興しつつあった。「ティマイオス」の出版は、アレクサンドロス大王出現の前夜である。
 そういう時期に、プラトンは後の「クリティアス」および「国家論」に続く「自然に関する論文」として「ティマイオス」を書き、アテネの宿敵アトランティスの話を語ったのである。
 つい、我々は「一夜にして海に沈んだ帝国」の話にばかり目を奪われがちであるが、アトランティスの話は、壮大な古代戦記でもある。書かれなかった「クリティアス」の続編には「理想の国家アトランティス」ではなく、「アテネの宿敵アトランティス」が描かれていたはずなのだ。

 面白い。

 先入観と真実の違いはとても新鮮で刺激的だ。
 もちろん、ここで書いたことの半分は、同時代という切り口で、古代史を切り開いてみた私の妄想に過ぎない。だが、年表だけを見てもこんな空想ができる。だから、歴史ミーハーは止められない。

PS:先日の深淵CONで「ブルーローズ」のマスターをしていますという女性にあった。タイミングを逃し、詳しくお話を聞けなくて残念であったが、やはり嬉しいものである。あの本で調べたことはやはり自分の中で歴史の魅力を再認識させる結果になったので、私の中で「ブルーローズ」は重要なマイル・ストーンである。色々、いや、山のように嘘や誤解もあるが、それも含めて、今も大事な一冊だ。

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