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April 15, 2005

ホラー映画における「予兆」

 今日は専門学校の日。「ファンタジー概論」も終盤に差し掛かり、ホラーの本質という話で、「エルム街の悪夢」を見ながら、恐怖映画の怖さを解説する。最近、「VSジェイソン」とか人気者ですが、それもこれも、この第一作の出来がよくて怖いからですよ。

「エルム街の悪夢」がなぜ怖いのか?
鉤爪でも、焼けたフレディの顔でも、飛び散る血しぶきでもない。
それは、確定された「クライマックス」、すなわち焼却炉前での対決に向けて、
イメージとシンボルを丹念に積み上げた演出によって、
視聴者は最後の場面を予想することを余儀なくされるからだ。

 ここまで聞いて、拙作「深淵」を思い出してくれたユーザーの方はありがとう。
 そう、ホラー映画の演出と「深淵」の夢歩きは、基本構造が一緒なのである。
 「深淵」ではダーク・ファンタジーのイメージを使った「夢歩き」によって、連想のパターンを制御し、クライマックスの「予兆」をばらまき、プレイヤーにクライマックスの予想を強要しているのである。そのため、「深淵」はホラーに向いているのだ。

 話を戻そう。
 「エルム街の悪夢」のもう一つの恐怖は、現実が崩壊していく感覚である。
 主人公のスクールライフは、徐々にフレディの住む悪夢の世界に取り込まれていく。現実としての枠組みが崩壊していく。そこが怖いのだ。

 これをアイデンティティまで広げていった例として「エンゼル・ハート」を見せる。
 「シティ・ハンター」の続編ではなく、ミッキー・ロークがしがない探偵を、ロバート・デ・ニーロが、依頼人ルイス・サイファーを演じている。『真・女神転生』に出てくるルイ・サイファーのネーミングは多分、この作品の影響だろう。奇怪な人探しの依頼が、主人公の日常を崩壊させ、そのアイデンティティさえも狂わせていく。

 ・・・という建前だが、実は、中盤にある一場面のために、これを紹介したと言っていい。

 途中経過報告のために、ローク演じる探偵エンゼルがデ・ニーロ演じる依頼者ルイスを訪ねる場面。ルイスは、ゆで卵をむきながら、報告を聞き、いやがるエンゼルに金で仕事を続けさせる。この時のカメラは、ルイスの指先とゆで卵に集中する。これはぜひ見て欲しい。卵を剥くための殻の割り方、仕草、段取り、台詞とのマッチングに至ってももう迫力ですよ。どこにも尻尾も角も見えてませんが、こいつ、悪魔だよというオーラが見えます。
 これは「ダンジョン・シネマティーク」でも紹介したけれど、NPCの表現に使えますね。私がマスターするとき、時々、ネタとしてやります。

 最後に「DAGON」でクトゥルフ神話につなげて終わり。
 これは「クトゥルフ神話ガイドブック」でも書いたとおり、「インスマウスの影」の忠実な映画化です。かなり俗悪ですが、雨の降り止まぬインボッカの街は雰囲気が出ています。ホテルの受付の男が瞬かなかったり、首に鰓っぽい筋があったり、神父の指に水かきがあったり・・・ラヴクラフティアンには反応するしかない記号が山盛りです。
 DVDのキャッチ・コピーはモンスター・ホラーですが、嘘です。前半は不条理ホラーで、怪物が出てくるのは中盤以降で、そこからはブライアン・ユズナの血しぶきホラーになります。
 来週は、UFOとかオカルトとか、現代の都市伝説系の話をして終わりの予定。

PS:このどこがファンタジー概論だって?
 ファンタジーは怖いものなのですよ。童話だって、ゲームだって、状況的に怖いネタはたくさんあるでしょ?
 ホラーとファンタジーは隣接領域なんです。怖さが微塵もないファンタジーは実は少ないはずです。

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