クトゥルフ境界線
別冊モーニングに掲載された、諸星大二郎の漫画「魚の夢を見る男」を読む。
魚に変身していく男の姿を見て、「ああ、クトゥルフ神話的だな」と思う。
しかし、本当にそうだろうか?
クトゥルフ神話、ことに「インスマウスの影」の影響を否定する気はないが、そこには「宇宙的な恐怖」はない。それは、異形の姿に変身し、日常から解放されるという幻想譚だ。
カフカの「変身」と同趣向である。
だが、クトゥルフ神話に冒された我が脳髄は、魚化する男の姿を、海へ回帰する「インスマウスの影」の主人公に重ねずにはいられない。
20年ほど前、当時、SF少年であった私は、しばしば知人と、これがSFかどうかを議論することに興じた。それは当時のSFファンにとって重要な問題であり、やがて、「SFマインドを刺激するものは全てSF」ということになった。いわゆるSFの浸透と拡散の時代である。
クトゥルフ神話に関しても、どこまでがクトゥルフ神話作品であるのかという議論がある。
神話作家以外、神話を書けないわけではないが、扱いのお作法を重んじる場合も多い。「Secret of Japan」でジャパニメーションの最初に「イクサー1」が出ることをどう見るかという話になる。最近、読んだ「野蛮の園」(西川魯介)で、シュブ=ニグラスの祭祀として、高専の女子学生が蜜水でマッサージしあうというネタがあるのだが、これは神話作品とは呼べないが、神話上の神格に言及してはいる。その一方、「魚の夢を見る男」のように、神話脳を刺激する作品を、神話周辺作品と見るべきではないかとも思う。
いずれ、どこかでまとめるためのメモ。
●クトゥルフ神話周辺作品リスト 追加
「魚の夢を見る男」 諸星大二郎 別冊モーニング 講談社
注記:魚ネタ。神話への言及は無し。
「野蛮の園」 西川魯介 白泉社コミック
注記:神話ネタのギャグ多し。
追記:この手の周辺作品の情報を集積している場所として、クトゥルフ神話MLのジャンク・リストがある。これもメモとしておこう。
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