深淵:落雷異聞
力が欲しいか? ならば・・・
「深淵」でよく使う手法として、「運命」と「縁故」で誘導し、とんでもない事件にPCを巻き込み、ほぼ孤立無援の状態で決断を迫るというものがある。決断の結果も重要であるが、実は決断にいたる過程が面白い。ここで、ゲームマスターが干渉しすぎても、プレイヤーが相談しすぎても、面白くない。
まず、それぞれのプレイヤーがPCに感情移入して一人で悩み、やがて、周囲にいる他のPCの存在に気づき、関係をやりとりする。そこが面白い。
基本ルールに掲載したシナリオ「落雷」はその流れがよく分かるものだ。
このシナリオは自らに課せられた運命を解き明かすため、山上の古城に集まったPCたちの前にとてつもない力を持った魔剣が落ちてくるというだけのシナリオである。
解決方法はPCに任せられている。
PCはまず、自分がそれを手に入れるにはどうしたらいいかを考える。悩んだ挙句、周りをみて、魔剣をどうするか考えるのである。
そのため、結果も展開も毎回、異なる。
面子やテンプレートが違えば、全然話が違う。
「奇妙な旅人」が魔剣を持ち逃げしようとするときもあれば、全員で世界征服に旅立つ場合もある。自力で魔剣を折るものもいれば、学院まで届けたものもいる。魔剣を馬車で轢くなんて展開もあった。
単純にパワーを求めるキャラクターだけいたり、一人が先走って独占しようとしたりすると、このシナリオは魔剣争奪のバトル・ロワイヤルになる。戦闘しかしないで終わることもある。
いや、「バトル・ロワイヤル」は面白いのである。
とくに、戦闘中、魔剣に触れるたびに、夢歩きをきちんとやりながら戦闘すると、楽しい。一撃ごとに、妄想と台詞が飛び交い、実に面白くなるのである。
「そんなことをしているからみんな死んじゃうんじゃないかあ」By カミーユ
ロールプレイ中心だったり、「深淵」のマスター経験者が多かったり、あるいは魔剣落下までに十分時間を取って、夢歩きを進めたりすると、このシナリオは「ディプロマシー」の要素を含んでくる。いかに戦闘を回避し、魔剣を利用するかが鍵になる。
そのために、他のPCとどう交渉し、利用し、仲間にし、状況の変化をどこまで受け入れるかという話になる。
「奇妙な旅人」や「魔道師」のプレイヤーがいきいきとして、騎士に助言する。
「いや、あれは危険なものですから、この私が管理しましょう」とか、
「あれをお取りなさい。私がお手伝いいたします」とか。
「おぬしも悪よのぉ」 By 悪代官
京都の深淵CONの夜の部で、ベテランばかりで「落雷」をやったことがある。
当然、全員、中身は知っている。マスターとしても、プレイヤーとしても、何度もプレイしている。
それなのに、「落雷」をやろうというと、なぜかみんな燃える。「えー、どこまで使っていいですか?」とレギュレーションを確認する。ある種、ボードゲーム的なノリでプレイすることもできるシナリオなのである。
かくして、超ハードな展開になるかと思いきや・・・
結果、非常に和気藹々として、ほぼ戦闘の無い爆笑のセッションになった。
理由は、ひとりの傭兵が「妄想」の運命を引いて、いきなり古城の玉座に座ってしまったためである。
「私はこの城の正当な継承者である」
これを商人か「奇妙な旅人」が道化になって盛り上げたため、妄想は加速、PCたちはどんどんそれに巻き込まれ、一番戦闘力のある(名声のある)騎士が来たころには、妄想皇帝の宮廷が成立してしまっていた。
その騎士が礼節正しい英雄であったもので、状況はさらに暴走。
結局、妄想皇帝が魔剣をゲット。
追加された運命で、本当に、名家の末裔だったことまで分かり、全員、「それじゃあしょうがない」と、古城から、帝国の再興を始めることになって終了。
シナリオ上は、その魔剣で魔族を解放するという話もあったのであるが、笑いすぎて、みんな疲労したので、そのあたりもありますが、「今夜はここまでにしといたろう」という感じになった。
ああ、こんな展開もあるのだなと思った。
どっとはらい。
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