プラトンのアトランティス
アメリカ・インディアンは、失われた十支族の末裔であり、パレスチナへ帰らなくてはならない。
----16世紀のある主張。
日々、色々ありつつも大枠では「超古代本」のために、ひたすら資料を読む日々。目下の難題はイグネシアス・ドネリーの「Atlantis」の解読であるが、その傍ら、ディ・キャンプの「プラトンのアトランティス」にも手をつける。ディ・キャンプはSF作家で、私としてはロバート・E・ハワードのコナン・シリーズを補作した作家という第一印象があるのだが、この本は非常に真面目なアトランティス研究本で、アトランティス研究の歴史から非常に網羅的に書かれており、素晴らしい。科学解説家としても活躍されているディ・キャンプならではのものかとも思う。
ここで紹介される歴代のアトランティス仮説とその周辺例がとにかくインパクトの強いもので、色々驚愕したり、爆笑したり・・・。冒頭の台詞は、16世紀に主張されたアメリカ=アトランティス説の派生系から、私が妄想した引用(Quate)である。
1492年、コロンブスによって「発見」された新大陸は、ギリシアから見て「ヘラクレスの柱」の向こう側にある大きな大陸であることから、あれこそアトランティスではないかと言われる。アメリカという名前が決まる前は、アトランティスとしようという意見もあったようだ。英国の魔術師ジョン・ディー博士まで、自身の作った世界地図の新大陸の部分に「アトランティス」と書き込んだほどである。
さて、問題は新大陸に住んでいたアメリカ先住民の存在であるが、これについても様々な珍説仮説が飛び交い、その中には、アメリカ先住民はユダヤの失われた十支族であるというトンデモ仮説まである。困ったことに、これは、新大陸発見の前から存在している「歴史的な仮説」のひとつで、インドの東に、ユダヤの失われた十支族の末裔がいるという話である。いわゆるプレスター・ジョン伝説(キリスト教の黄金伝説)であるが、これが意外にもポルトガルやスペインあたりでは信じられており、大航海時代の原動力のひとつとなっていた。あのコロンブスが極東アジアの住民と話すために、ヘブライ語の通訳を同行したという話まである。
実際、新大陸の住民と出会ってからも、どこぞの酋長とヘブライ語で会話しただの、マヤ語の30%は純粋なギリシア語だの、ユカタン半島の住民は神が海を割った道を通って東から来ただの、色々な話が交錯し、アメリカ先住民=ユダヤ説は消えず、冒頭の台詞のように、400年ほど早く、的外れのシオニズム運動を主張する者さえいた。
ちょっと落ち着けというのが正直な感想であるが、このあたりの暴走具合がまた楽しい。
さて、続きが楽しみである。ではでは。
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