サタスペス
イエサブさんから出ている亜侠なアジアンパンクRPG「サタスペ」ではありません。
相変わらず、アトランティスな日々が続いておりまして、昨日は某社に缶詰になって『真・女神転生X』の仕上げ&色々打ち合わせ。なんか来年の夏までスケジュールが決まった気分ですが、まずはアトランティス。それからあの企画の準備原稿、あの企画の打ち合わせ、テストプレイ。まあ、そういう感じで。
それで、アトランティス話に戻る訳なのですが、ディ・キャンプの「プラトンのアトランティス」という本は、アトランティス研究史にずいぶんと紙幅を割いており、関連するネタが色々登場します。つまり、アトランティスやら失われた古代文明の謎やらを探したり妄想したりして東奔西走した様々な人々のオンパレードで、それもありとあらゆるアトランティス論者の大集合を、SF作家ならではの冷静な目でずばずば切っていく訳ですな。
このアトランティス研究家やトンデモ冒険家の類が本当に凄い人たちばかりで、「ブルーローズ」のセレスティアル・ゲートが可愛く見えます。アメリカインディアンはウェールズ人だとか、ロッキー山脈の望遠鏡からアトランティスを見たとか言い出す。
その上、アトランティス論者の有名人というとその半分ぐらいは19世紀から20世紀にかけての人ばかりで、そのまま、上海の路上でアトランティスを探してそうな奴らばかり。当然、ブラバッキー夫人とか出てくる。レムリアとか、チベットとか、トランスヒマラヤとか言いながら。
その中でも名前だけでつい、引かれたのはサタスペス。
これはアケメネス朝ペルシャの皇帝ダレイオスの妹の息子、つまり甥であったが、リビア(アフリカ)一周の探検を命じられる。当時はまだ紀元前で、アフリカの南がどうなっているか全く分からなかった。昔、フェニキア人がアフリカを一周したらしいが、その壮挙はほぼ忘れ去られていた。
サタスペスは皇帝の甥として、この探検を命じられた訳ではない。
ダレイオスの息子クセルクスの時代になり、このボンクラは、バビロン攻略に功績のあったゾビュロス将軍の娘を犯した罪で本来ならば、磔になるところを、命がけの探検に出ることで誤魔化したのである。
このゾビュロス将軍は百の門の都バビロンに篭城するバビロン軍を破るため、自らの耳と鼻を削いで、内通した振りをし、バビロン軍をたばかったというとんでもない人物である。バビロンを20落とすより、ゾビュロスが五体無事でいたほうがよいとまで言わせたペルシャ第一の功臣だ。その家族を傷つけたのだから、先代皇帝の甥でも無事ではすまない。途中で死ぬ確率の高い探検航海に追いやられたのである。
それでまあ、探検途中に死ぬなり、負傷するなり、あるいはアフリカ一周に成功すればなんとかなったものの、この男はそれほど立たぬうちに無傷で戻ってきてしまう。「ヘラクレスの柱を過ぎ、西に向かったところ、船足が全く途絶えてしまったので戻りました」と言う。結局、命じられた探検を果たせなかったことで、罪は帳消しにならず、そのまま、磔にされたそうな。
皇族のくせに、女が絡んだ罪で、秘境探検。失敗して生還したもので磔刑とは、サタスペスの名前に恥じない奴だなあ。まるで、どこぞの悪役小説の主人公ですな。
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