アナログ・ゲームが売れている
「今、ハンズでアナログ・ゲームが売れているようなのですが?」
日経トレンディの取材。質問は上記の通り。
ざっと話したら、1時間半もかかってしまった。以下はその要点。
●アナログ・ゲームって何?
アナログ・ゲームという言い方は、デジタルに対するアナログのゲームという意味で、デジタル・ゲームの領域がドラクエ、テトリス、大戦略、対戦格闘、美少女ゲーム、電子化が進むパチンコ、MMOなどのありとあらゆるデジタル・デバイス経由のゲームを示すように、非常に幅広いものである。
便宜上、アナログ・ゲームと呼ばれる範囲には、、4つ、もしくは5つのジャンルが存在する。
【1】パーティ・ゲーム:ホームユースのボードゲーム、カードゲームなど。いわゆるドイツゲームはここに含まれる。
【2】シミュレーション・ゲーム:いわゆるウォーゲーム。戦史をテーマにその再現を楽しむ「体験型ゲーム」であるが、勝利するには戦術能力が必要となる。現在はPCゲームに移行しつつあるが、ボードのシミュレーション・ゲームには秀作が多い。歴史が長く、強いコミュニティを持つ。
【3】テーブルトークRPG:D&Dを嚆矢とする、プレイヤーがキャラクターを扱って会話で進めるストーリー・ゲーム。70年代前半に、シミュレーション・ゲームから誕生した。日本では80年代にライトノベル層を取り込む形で人気が爆発し、一定のユーザーを得る。近年では、D&D3Eの再上陸が起爆剤となった。
【4】TCG:1993年の「マジック:ザ・ギャザリング」を嚆矢として爆発的に拡大、日本では「遊戯王」「ポケモン」を中心に、90年代中盤から広がる。「遊戯王」が小学生男子の基礎知識となる一方で、マジックで育ったトーナメント・プレイヤーが青年層に広がっている。
このほかに、将棋、囲碁、チェス、百人一首、マージャンなどを包括する「【5】トラディショナル・ゲーム」というジャンルがあるだろう。
なお、このジャンルの大半は非常に近しいもので、かなりクロスオーバーするファンが多いが、その一方で、完全に単独のジャンルだけのファン・コミュニティもある。
●アナログ・ゲームのヒット
「(東急)ハンズで売れている」というのは、【1】のパーティ・ゲーム、特に、ドイツ・ゲームであろう。
今、売れている理由を問われたが、どちらかと言えば、今、売れ始めた訳ではなく、90年代後半から始まったドイツ・ゲームのトレンドが結実したというのが私の見方である。1995年の「カタンの開拓者」のブレイクでドイツのゲームが評価され、日本にも上陸した。以来、ドイツの生きのいいゲームがどんどん日本に入ってくるようになり、このパワーにデジタル・ゲーム業界もアナログ・ゲームを再評価するに至った。
「カタン」がきっかけになって、ヨーロッパの豊饒なゲーム業界が紹介され、広がった結果であるといえる。
●デジタル業界のアナログ・ゲーム再評価
この動きに加えて、デジタル・ゲームのマルチ・プレイヤー化がアナログ・ゲームの再評価を加速する。
ゲーム機を囲んで遊ぶ「デジタル・パーティ・ゲーム」の増加、対戦格闘技ブームの背景で現れたコミュニティ、MMOの拡大に伴う「ヒューマン・ファクター」の再評価などが、間接的に、アナログ・ゲームのヒットにつながったのであろう。私の専門とするTRPGも、デジタルからのUターン、Iターン組がおり、これらの流れとは無縁ではいられない。TCGの流行も無縁ではないだろう。TCGコミュニティでゲーム仲間を得たプレイヤーが、D&Dを始める、カタンを覚えるといったように別のアナログ・ゲームに走る流れもある。インターネットで「人狼BBS」にはまった人々が、元のカード・ゲームにたどり着く可能性もある。そうした新規参入者を受け入れるジャンルを維持してきたショップ、メーカー、クリエーターの努力も忘れてはならない。
日経トレンディの記事は8月上旬号に乗るそうなので、これを機に、ドイツ・ゲームがより売れるようになるといいものである。個人的に最近のお薦めは「チャオチャオ」かな。
PS:ボードゲームに興味が出た方は、スタジオ新大陸・著の「ボードゲーム・キングダム」をどうぞ。
追記:*7/7一部修正。雑誌名
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