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August 31, 2005

中学生の質問に答えてみる

 高校の後輩から、「小説家の知り合いはいないか?」という問い合わせが来る。
 彼の娘(中1)が夏休みの宿題で、「なりたい職業を考え、その職業の人に質問する」ことになったのだが、なりたい職業が「小説家」だという。せめて、JGC前に言ってくれれば、その辺を歩いているゲストをとっ捕まえて質問を突きつけるのに……。
 しかたないので、私が答えることに。
 このBlogを読んでいる小説家がもし、おられたら、私の代わりに答えてほしいくらい。
 とりあえず、学校の授業のつもりで私が答えます。偉そうだなあと思っても流して下さい。僕のとは違う回答も大歓迎。

●質問内容
1.この仕事を選んだ理由は何ですか?
2.いつ頃、この職業に就きたいと思いましたか?
3.仕事の内容について教えてください。
(もちろん小説を書くのでしょうが、小説を書くためや本にするために、その他にやっている事とかありますか?)
4.小説の内容を考えるのは、何時、どの様なときですか?
5.小説のタイトルなどを考えるのは、いつ頃ですか?
6.締め切りなどでピンチの時は、どうしますか?
7.この仕事で、楽しいことは何ですか?
8.この仕事で、嬉しいことは何ですか?
9.この仕事で、辛いことは何ですか?
10.この仕事で、難しいのはどんなところですか?
11.この仕事をしていて、ふと思うことは何かありますか?
12.小説家になるには、どんな勉強をしたら良いですか?
13.小説家になるには、小説のどんなところを工夫したら良いですか?
14.小説家になるには、まず、何かをしたら良いでしょう?

●こちらの回答
娘さんへ

朱鷺田祐介です。初めまして。
本職はアナログ・ゲームのデザイナーで、雑誌などで記事を書いたり、神話や伝説の本を書いたりしています。
小説も以前、書いたことがあります。
「火龍面舞」
「丘の上の貴婦人」(上)(下)

本業はこっち
『真・女神転生TRPG~魔都東京200X~』
『クトゥルフ神話ガイドブック』

> 1.この仕事を選んだ理由は何ですか?
 好きな物語を自ら発信していたいから。 本を読むのが好きだから。

> 2.いつ頃、この職業に就きたいと思いましたか?
 作家になりたいと思ったのは小学生の頃。
 ゲームデザイナーは・・・いつの間にかなっていた。

> 3.仕事の内容について教えてください。
>   (もちろん小説を書くのでしょうが、小説を書くためや
>   本にするために、その他にやっている事とかありますか?)
 基本的に、原稿のネタを考え、頑張って文章にします。
 私は遅いほうなので、1冊の本に3ヶ月から半年かけます。
 およそ粗筋が思いついたら、一気に書きだし、詰まったら、調べ物をし、前を修正しながら、書き進めます。
 ここはかなり長いですが、詰まったら、うろうろしたり、もっと調べたり。

 仕事以外の普段としては、色々本を読むとか、常に情報に耳をそばだて、興味のあることは色々調べて面白がれるようにする。できる限り、空想をしてみる。

> 4.小説の内容を考えるのは、何時、どの様なときですか?
 何かの拍子でこんな話が、と思いつくことが多い。
 急ぎ、新ネタでと考える時には、外へ出て、喫茶店でノートに落書きしたりします。

> 5.小説のタイトルなどを考えるのは、いつ頃ですか?
 タイトルは書いているうちに割と思いつくほうなので、特にいつ頃ということはありません。
 企画段階でアイデアが出ていることが多いですね。書いている間に変わる場合もありますが、その場合、自分の中での落ち着きを優先します。

> 6.締め切りなどでピンチの時は、どうしますか?
 大変ですが、編集さんに説明して、お時間をいただくことが多いですね。
 納得するまで書かないと、いけないので。

> 7.この仕事で、楽しいことは何ですか?
 書くこと自体が楽しいですし、ネタを考えている時はとても楽しいですね。
 最近、歴史ネタの本やゲームが多いのですが、知らないことを学べるのは実に楽しいですよ。

> 8.この仕事で、嬉しいことは何ですか?
 本が出来た時、そして、面白かったという感想を読んだ時。

> 9.この仕事で、辛いことは何ですか?
 分かってもらえないとき、読者を納得させられなかったとき。
 自分の理想と現実が相容れないとき。
 そう、しばしば企画は修正を余儀なくされるのである。

 あと、収入が安定しないこと。
 本が出て、沢山売れて初めてナンボの商売ですからね。

> 10.この仕事で、難しいのはどんなところですか?
 作品がひとりよがりになりすぎないか?
 それは平凡に落ちていないか?
 何か忘れてはいないか?
 難しいというよりも、自分の表現力と感性、そしてパッションが、不足していないか、いつも不安になる。
 それでも、自ら語り手の位置にいようとすること。

> 11.この仕事をしていて、ふと思うことは何かありますか?
 「堅気の人生じゃねえなあ」とは思いますが、これはこれで楽しいのでよし。

> 12.小説家になるには、どんな勉強をしたら良いですか?
 小説家はなるものではありません。
 たいていの小説家は「なっちゃった」というものです。
 「書きたい」というパッション(熱情)があり、「作品を書いてしまった」という既成事実になったところから、作家が始まる。これはゲームデザイナーも一緒。

 まあ、すでに、パッションがあって、文章が進まないのは、読書が足りないというべきかな。本を読んだり、文字を書いたりするのが自然なようになるべきでしょう。

 小説家やライターにとって、何をやっても勉強です。もちろん、学校の勉強は大事です。中学の国語ぐらいはちゃんとやって、あとは図書館の本を端から読めばいいけれど、スポーツをしても、旅行にいっても、いや、何の体験であっても、それを解釈する気持ちがあれば、勉強になるはずです。

> 13.小説家になるには、小説のどんなところを工夫したら良いですか?
 新人作家は小細工に走らず、自分の求めるイメージをしっかりと描くことです。キャラクターでも、お話上の仕掛けでも、世界観でも、書き手のやりたいことを表現することだけに専心する。文章テクニックはその次です。

> 14.小説家になるには、まず、何かをしたら良いでしょう?
 小説を書きなさい。
 それ以外は必要ありません。
 小説を書き上げたら、あなたは小説家です。
 小説を書かなければ、絶対、小説家にはなれません。
 単純ですが、これが真実です。
 それ以外のことはそれぞれの勝手です。

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 自分で書いていて心臓がドキドキ、耳が痛いですよ。ゲームデザイナーも一緒。ゲームが出来てなんぼ。
 さあ、仕事に戻ろう。

PS:バンタンの生徒諸君はこの質問の出し方が正しいかどうかを考えてみてほしい。答えやすいかというのもインタビューには重要な技法だ。

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