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October 31, 2005

永遠の冬11:狼煙

 人の弱さとは救いである。
 それは物事を解決しないという破滅への道を示すから。
 弱きものを喰らうことにためらいを示す限り、まだ人は人に戻れる。

 ウィリス11歳の春。
 冬送りの祝詞巡りが行われても、ウィリスの心は晴れなかった。
 雪狼の姫ネージャから「獣の王になる」と言われたこと自体は、ウィリスの生活を変えはしなかった。冬の間、ゼルダ婆はウィリスに「お迎え役」の修行を続けさせた。いずれ、冬翼様をお迎えすることに変わりはないのだそうだ。ただ、ウィリスはいずれお迎え役の上のお役目である「獣の王」の地位につき、冬翼様のために重要な働きを成すのだという。それがどのような働きなのかはまだ語られなかった。
「次の夏、お前はグレイドルに行き、すべてを学ぶこととなろう」
 ゼルダ婆はただ一言、そう言った。
 グレイドルはバッスル侯爵領の都である。この地には、冬翼様に近しい神、《冬の統領ル・ウール》様の大社がある。《冬の祠》というそうだ。

 結局、冬の間、ウィリスがネージャ様と再び出会うことはなかった。
 あれ以来、ウィリスはより深く、雪狼たちを感じるようになったが、それゆえにか、雪狼たちはこの冬の間、一度も村には入ってこなかった。
 ただ遠くから、雪狼たちが何かを狩りだす雄叫びが何度か聞こえただけだった。

「ゼルダ婆、少しばかりいいか?」
 冬送りが終わってしばらくして、村長と村の男衆数名がゼルダ婆を訪ねてきた。その中にはウィリスやメイアの父の姿もあった。村長が年始の挨拶で、領主のミネアスを砂の川原に訪ねた際、村にも関わる命令を下されたという。
「お前もそこにいなさい」
 婆は席を外そうとするウィリスに、声をかけた。
「これから、我らは辛い話をする。しかし、お前は次なるお迎え役として、これを聞かねばならぬ。そして、胸の内に秘めておかねばならない」
 婆が、ウィリスの父に眼を向けると、父はゆっくりとうなづいた。
 やがて、村長が言った。
「バッスルでまた戦があった」
「毎年のことではないか?」
と、婆が答える。
 北原の雄バッスルは、隣接するラルハース侯爵領と毎年のように戦争を繰り返している。両国の間にあるレキシア湖を巡って戦いが絶えない。ラルハースは水魔を信仰する国だから、夏は強いが、冬になり、湖が凍ると水魔は動けなくなる。そこで、冬の神を信仰するバッスルが攻め入り、水魔の巣を焼き払う。これに対応して、ラルハース騎士団が出兵する。
「いや、今年は跡目争いが絡んで、大きな戦になった。甥っ子のジェイガンがバッスルの手を借りて、ラルハースの都ペリエールに攻め込んだ。南のダリンゴース、北のユラスまで加わって、ジェイガンが勝った」
「ユラスまで」
 ゼルダ婆が眼を向いた。
 ラルハースの北、残虐なる黒男爵の支配するユラスは、闇の国と恐れられる国だ。このロクド山中でも、ユラスの黒男爵の恐ろしい所業は伝わっている。もともとの主を裏切り、一族全てを串刺しにしたという。その配下の黒騎士たちは人というより、闇の魔性に近いおぞましい生き物であるという。
 南のダリンゴースは利に聡い商売上手な国なので、利を見て戦に乗ったのが分かるが、闇の国ユラスまでも引き込んだというのは大事である。
「それだけではない」
と、村長は声を潜めた。まるで誰か、いや、黒男爵の手先に聞こえないようにするかのように。
「ダリンゴースは、獅子の戦鬼(いくさおに)を送り込んだそうな」
「獅子王教団! ジェイガンはラルハースを焼け野原にするつもりか!」
 ロクド山の山奥でも、獅子王教団の恐ろしさは伝わっている。後退という言葉を知らぬ獅子王教団の狂戦士たちは、このあたりでは、戦鬼と評されている。
「あんなものを送り込んだら、戦いが止まぬではないか?」
 初めて、ウィリスの父が口を開いた。
「見たことがあるのか、ジード」と、メイアの父が問いかける。
「昔、一度だけ」
 答える父の顔はウィリスの知らない苦渋に満ちたものだった。
「奴らは傭兵だ。誰かが雇えば、どこの戦場にでも現れる。
 そして、死ぬまで戦う。戦場の誰もが死ぬまで。
 俺たちの部隊はあれのおかげで、半分が死んだ」
 ウィリスは父が戦場にいたことを知らなかった。流れ者であるとは聞いていたが、開拓村であるグリスン谷では2、3代前に入植した者も多い。中には、それまで砂の川原で流刑の身にあった者もいるので、谷に来るまで、何をしていたかは互いに詮索しない。おそらく、村長とゼルダ婆、村の男衆の一部だけがそれを知っている。
「ひどい戦場だった。
 人も馬も引き裂かれ、血の川が流れた」
「同じ話を、ミネアス様から聞いた」と村長が言った。
「バッスルの軍勢に加えて、ユラスの黒騎士、獅子どもだ。
 ラルハース側は全力で水魔どもを叩き起こし、怪物たちが戦場に現れた。
 ひどい戦場だったそうだ。
 最後は、黒い龍まで飛んできて、都を焼き払ったそうな」
「龍だって?」
 思わず、ウィリスまで声を出した。
 南方ファオンの野には巨大な龍という怪物が封じられているという。それは城の塔よりも大きな空飛ぶ怪物で、トカゲのような鱗に覆われた体と、コウモリのような翼を持ち、口から火を吐く。あまりに恐ろしい怪物であるため、見ただけで気が狂うともいう。

「龍か、なるほど、冬中、山の雪狼どもが東へ向かって遠吠えする訳だ」
 ゼルダ婆は極めて落ち着いた声で応じた。
「それだけの戦の気配が北原に満ちれば、その余波もこよう。
 して、ガイウス殿は討たれたのかな?
 いや、それならば、ミネアス様は気にすまい」
「婆はようお分かりだな」と村長。「ガイウスは傷を負われたが、魔法の力を借りて落ち延びたらしい。ジェイガン殿も、バッスル侯爵殿も、ガイウスの行方を探っておる。大方の者はさらに東、ワールの黒き森と見ておるが、ロクド山という噂もある」
 ワールの黒き森は魔族の住処と言われる恐ろしい場所だ。そこに逃れるくらいならば、この深いロクドの山々のほうがずいぶんましだと言えよう。
「おかげで、街道沿いの飛び地全てにガイウス探索の命が下された。
 ミネアス様は、古き盟約に従い、村にも出仕の命を下された。
 兵士5名を探索隊に出すとともに、峰の狼煙台を整備し、これの番役を出せと」
「ミネアス様はお優しいのお、それで済ませてくれるとは」
 婆は言った。
 北原の諸国の軍務はもっと厳しい。冬ともなれば、村の男衆の半分が戦場に出ることもあるという。百人ほどのグリスン谷に兵5名だけならば、農作業も何とかなる。狼煙台の番役は老人や女子供でもよい。
「それ以上では畑の世話も滞る。ミネアス様はそっちのほうが困るそうな」
 村長はそう言って、村の男衆を振り返る。
「ジード、行ってくれるか?」
 ウィリスの父はうなづいた。
「いつものように、井戸端のヨト、牧場のキャズ、老ジャスパーを連れていく」
 それは村の自警団の仲間だ。ヨトは剣が使える。キャズは若いが、一度騎兵に取られ、馬上で槍を使える。老ジャスパーは弓の上手である。
「あとは……ガースか?」
 ウィリスは幼なじみの名前が上がったのに驚いた。確かに、最近、ジャスパーの元で弓を習い、狩人になる修行をしている。
「ウィリスと同い年か、まだ少々若いが、筋はいい」と村長がいう。「狼煙台は、持ち回りで番役をこなすが、村の衆はしばらく春の種まきで忙しい。ウィリスを借りたい。眼がよいからな」

 グリスン谷にも、北原の戦乱がゆっくりと忍び寄ってきた。
 こうして、ウィリスは遠い狼煙を見ることになる。

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とりあえず、第二章開始。
ためらいながらも、書き始めることにする。
辺境の谷間は北原の戦乱に巻き込まれていく。
別の視点から見た北原動乱の物語は、少年を悲劇の中へと導くのだ。

**一部加筆修正
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アンチョビとアホエン・オイルの日々

 大破壊後の勢力をデータ化中。
 基本的に、ロウサイド・カオスサイドでいいのであるが、それだと身も蓋もないので、メシア教会、ガイア教団から、オザワ・グループとか、旧警視庁の警備システム開発グループとか色々拾ってみる。大破壊直後をプレイする場合に備えて、ヒーローたちが金剛神界から帰還するまでに壊滅していそうな旧自衛隊残党とか、トレジャーハンターたちとか考える。
 とにかく作業中。

●アンチョビとアホエン・オイルの日々
 ネタが少ない日は、飯の話を書こう。

 先日、味噌飯の話を書いたが、妻は、どちらかと言えば、洋食が好きなので、朝食か昼食は、トーストにサラダとか、スパゲッティが多い。妻はトーストにチーズを乗せて焼くが、私はアンチョビを乗せるのが好きだ。

 アンチョビはカタクチイワシを開いて塩漬けし、さらにオイル漬けにしたもので、凄く塩が強いのだが、その塩味がうまい。サラダとか、シェル型のマカロニとかを食べる時には、マヨネーズにアンチョビ1匹を潰してかけるといい味になる。これは皿に持った後、スプーンの背で潰して混ぜるだけなので、すぐに出来る。
 缶入りのビーンズと千切りキャベツにかけて和えると、絶好のつまみになる。学校の近所の創作料理系のバーで出していて、気に入った一品だ。ウィスキーによく合う。

 さらに、最近のマイブームはアホエン・オイルである。
 アホエンとは「ニンニク」のことである。千切りにしたニンニクをオリーブ・オイルに入れ、70度ぐらいで10分ほど湯煎(湯で温める)したものである。高温になるとオイルが変質するので、温度管理が面倒ではあるが、湯煎に慣れると簡単に出来るという。妻が料理サイトで見つけ、試しに作ってみたのだが、これを焼きあがったトーストに一滴落とすと、香りがよくなって、美味しい。サラダや炒め物に垂らしてもよい。暖かい料理のほうがよいだろう。
 そう言えば、昔、「ブルーローズ」のために買い集めたナショナル・ジオグラフィックスでオリーブ・オイルの記事があった。イタリア人にとって「1日一匙のオリーブ・オイルは健康と長寿の元」だという。
 驚くべきことに、アホエン・オイルは納豆と相性がいい。よく練って醤油をかける際に、一滴垂らすとこれがまた香ばしくなり、うまいのである。おかげで時々、みのもんた御推薦の健康メニューナンバー1「キムチ納豆」にアホエン・オイルをかけるという一見健康的な食生活を送っている。
 まあ、他の部分があまり健康的ではないので、このくらいは健康的にしないとね。

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October 30, 2005

永遠の冬10:間奏01:伝書使

 世の全てを知ることなどできぬ。
 出来たとしても、受け入れることなどできぬ。
 それでも……。

「ここから始まるのは茶番だよ、アンウェン」
 仮面を被った魔道師は小さくささやいた。
 その姿は異様である。黒く長い髪と白い肌、顔の上半分は銀の仮面に覆われ、瞳の色も伺えない。唯一見える唇は薄く、酷薄な印象を与える。魔道師のローブの下から覗く右腕は黄金に輝く篭手に覆われている。左腕のあるべきあたりには何のふくらみもない。
「……それで、俺はどんな道化を演じればいいんだい、レディアス?」
と、話しかけられた若者が頭をかく。
 浅黒い肌と黒い瞳は彼が南西から流入してきたエザクの民であることを示している。
「君の仕事は伝書使だろう?」
 魔道師が一通の手紙を渡す。
 アンウェンは伝書使である。街から街へ手紙を運ぶことを仕事にしている。治安の悪い場所もあることから、傭兵まがいの戦いに手を染めることもあるが、あくまでもその名前にこだわる。
「誰宛てだい?」
 アンウェンの問いに対して、レディアスは一瞬、口元に手を当てて考えるような仕草をした。
「……強いて言えば、もうひとりの私に」
「なんだ、それは?」
「人探しを兼ねていてね、名前はディルス、《獣師同盟》にいた男だ」
「まだ、魔獣に手を出すつもりか?」
 アンウェンは非難の声を上げた。
 《獣師同盟》とは、かつて、魔道師学院を出奔したレディアスが属していたことのある秘密結社である。魔獣を生み出す力を持った魔族《獣師ブラーツ》を信仰し、動物や人間を生きたまま、切り裂き、魔獣を作り出していた。

「いまさら、何を恐れる?」

と、仮面の魔道師は黄金の篭手を持ち上げ、カンカンと指先を打ち鳴らして見せる。中に何か入っているような音には聞こえない。
 すでに、レディアスは《獣師同盟》から奪った《混沌の六魔獣》にその身の一部を捧げていた。黄金の篭手や銀の仮面はその結果である。いや、それ以前に、彼は《ブラーツ》の秘儀を得るために、貴族の娘サイアを誘惑し、懐妊させた上で、彼女をその腹の子ともども、魔族に捧げたのだ。一度は愛した女を。
 その後、サイアは魔獣シルドラとして復活、レディアスはアンウェンとともに、彼女の娘である魔獣リオス、ネリスらを自ら滅ぼし、シルドラも、深淵の底に沈めた。

「これから、私は魔道師学院に戻る」
 レディアスが笑う。
「処刑されるぞ!」
 アンウェンが叫ぶ。魔道書を盗んで出奔、異端の獣師に身を落とした魔道師として、レディアスは魔道師学院から敵視されていた。龍の都スイネの一件で多少、関係は改善されているものの、正々堂々学院に凱旋できる身分ではない。
「そこが茶番さ。そして、その間、アンウェンには人探しをして欲しいのだよ。
 多少、時間はかかっていい。
 場所は恐らく、バッスルの都かロクド山のどこか。ル・ウールの祠にいるはずだ。普通の顔をしてな」
「見つかったら? 手紙を渡した後は?」
「私からの伝言が届くまでは好きにしていい」
「伝言?」
「カイリが君を見つけるだろう」
 それはレディアスの幼なじみである。火龍の都を治めるスイネ大公家の姫君にして、魔道師学院の幻視者である。彼女の魔法の瞳は全てを見通し、遥かな場所さえも越える。ファオンの野の火龍を監視する役目を担う彼女にとって、山中の伝書使ひとり見つけるのは簡単であろう。
「もう一度聞く」
とアンウェンが言った。
「手紙を届けるだけでいいんだな?」
「ああ」
と仮面の魔道師はうなづいた。
「彼はすべて分かってくれるはずだ」

 かくして、伝書使は探索の旅に出る。

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「永遠の冬」再開、というか、間奏部分その1.
とりあえず、レディアスとのリンクを張る。
ついでに、深淵CONで問い合わせの多かったアンウェンの行き先の話。出番がないからと言って、殺さないで下さい(笑)

しばらく、得体の知れないミニ・ストーリーが続くかもしれません。
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虚無僧は笛吹き

 役小角とか、修験道とか、仏教史とかクロスオーバー中。

●虚無僧と修験道

 『真・女神転生X』の資料調べなんだか、『比叡山炎上』の調査なんだか分からないが、脳の配線のあちこちでショートしたり、妄想が爆発したりしてます。大破壊後のNPC関係で小角の解説を書きながら、なぜか、『比叡山炎上』の資料を読んでいる気分に。宿曜道の重要な経典『北辰菩薩経』とか、クトゥルフの魔道書みたいだし、仏教と神道の融合過程とか面白い面白い。

 ついでに、『日本の仏教を知る事典』を拾い読みすると、虚無僧の話が。
 中国禅宗の普化宗が鎌倉初期に伝来、そこから分かれた虚無宗(こむしゅう)の僧侶が虚無僧である。
 髪を剃らず、尺八を吹いて銭を乞い、諸国を行脚する。
 普化宗は、江戸時代には臨済宗の一派と見られ、明治時代に廃止される。

 廃止?

 追いかけてみると、実は普化宗は、なぜか江戸幕府に近く、明治維新政府の怒りを買って、廃止、虚無僧は僧籍を剥奪されたのである。この辺、実は徳川家に近かった陰陽師の末路に近い感じがする。
 虚無僧と言えば、例の深編み笠に黒衣という風体は、江戸時代になって幕府から規定された姿で、戦国以前は白衣に平編み笠だったらしい。これで尺八を吹きながら歩いている姿を、想像してみると、妙に、ハーメルンの笛吹きのようである。このネタは後で『比叡山炎上』か何かに使おう。
 そういう訳で、脳内が色々アレですが、作業中、作業中。

●BLOOD+
 ヒロイン二度目の覚醒。
 音に敏感になるシーンの描写は面白いね。従者とともに飛んでいくあたりも印象的である。
 カイの彼女である女子高生が、実はヤクザの娘で、黒塗りの外車の中から携帯ひとつで情報収集しているあたりは、サイバーパンクっぽくていいですよ。シャドウランのエチケット(ストリート)という感じ。
 そう言えば、そのあと、『世界ふしぎ発見』で、熊から学んだ知恵は? というクイズに対して、「熊のトーテムはヒーラー系でさあ、確かヒーリング呪文にボーナス」とか口走ってしまい、ドキドキする。おかしいな、シャドウランではあまりシャーマン系はやらなかったのに。

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October 29, 2005

武死道1 ハネムーン・サラダ

土方「オマエの思うとおりにやればいいのさ。
 オマエが気に入らなきゃ、オマエが変えればいいんだぜ! どんな手を使っても!
 なんせオマエの国なんだから」
志波「……それって……今、流行の民主主義か?」
土方「うん! 違うな! それがこの世で生きる事だ」

●武死道1
 ヒロモト森一の『武死道』第一巻を読む。朝松健の『旋風伝~レラ=シウ~』を原作とするが、そこに見えるのはもはや『要塞学園』のヒロモトだ。
 第一巻は、蝦夷共和国の成立と崩壊の中で、会津白虎隊の生き残り、志波新之助が新撰組副長、土方歳三と出会い、その生き様を見届ける物語である。
 そして、この土方がやたらかっこいい。
 蝦夷に自分たちがやってきた意味は分かっている。あの戦いで生き残り、最後の決着をつけるためだ。
 それでも土方は戦い続け、戦死する。
 くそぉ、かっこいいぜ。

●「ハネムーンサラダ ソルト&ペッパー編」 二宮ひかる
 同名の5巻シリーズを上下2冊のコンビニ本に再編集したMy Best Remix。
 後編サウザンアイランド編は11月10日発売予定。
 かつて幼い愛を育みながらも、お互いのいたらなさで別れてしまった夏川実と斉藤遥子。
 転職したばかりの会社で苦戦する夏川は、前の恋人とのトラブルを引きずるお針子、斉藤一花と出会い、いきがかりの関係を持つが、その直後、小説家を目指し、上京する遥子が、実の家に転がり込む。やがて、三人は同居することになり……。
 二宮ひかる後期の傑作。
 これを境に、彼女のYOUNG ANIMAL誌での活躍は途絶えていく。レディース系ではなく、微妙な人間関係を描く作品が好きだったので、復活を期したい作家のひとりである。

●野蛮の園 3
 西川魯介の高専物ギャグも完結。メガネとメカとマニアックでエロいネタが最後までてんこ盛りでしたな。

●バスタード 23
 それはある意味、聖典であった。
 あの日、このシリーズと出会い、ああ、これをやりたかった、と思った。
 どこかで、糸が切れた。週刊連載が途絶え、月刊連載も不定期となり、どこかで読まなくなっていた。
 久しぶりに古本屋で出会い、思わず、手に取った。
 2004年5月発売の23巻。背徳の掟編、コキュートスにおけるウリエルとダークシュナイダーの激闘。それを見守る地獄の七大魔王とリリス、そして、遥か遠い浜辺に立つ救世主の少年。
 ああ、この壮大なビジョン。
 そう、これをやりたいと思った日があった。
 『真・女神転生X』でそれができるかはまだわからない。いつかどこか別の方法で、かもしれない。
 いずれ出来る手法を探そう。

★以下、加筆追加

●YOUNG ANIMAL
『ベルセルク』

 臨終も間近き老法皇に差し伸べられる「白き羽の啓示」。
 これもまた、「魔の御印」なれど……。
 こういう1シーンを描かせると、この人は本当にうまいなあと。

『弾丸餓鬼(タマガキ)』
 義足のサイガ銃兵にして女暗殺者・タマガキの戦いを描くアクション。作者は新人でこれが掲載2回目か。
 弓師範との激闘を描いた前作に対して、今回は武将暗殺から、追っ手の忍びとの戦いに。
 杖兼用の火縄銃をメインに、銃身ごと交換する短筒、仕込み義足ときましたが、今回はサイガ銃術「切り玉」に「いしばい」と来た。絵はまだ野蛮な感じだが、ストレートなバトルアクションが気持ちいい。『比叡山炎上』のネタにもさせていただこう。

●イブニング
『サトラレneo』
 映画、ドラマにもなった、想いが漏れ出してしまう天才型超能力者「サトラレ」の第二部。
 ヒロインは第一部の主人公、西山夫妻の娘・光。
 在宅勤務が普及し、ネットを通じて交友を広げた光は、ネットの仲間とともに、少女誘拐事件に挑む。
 ミステリーの形を取りつつも、きちんとサトラレの悲哀を描くあたり、この人もうまいなあ。

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October 27, 2005

日々雑記:中国茶漬け

 Blogのネタに困った時は食事の話を書こう。

●味噌飯

 最近のマイブームは、味噌飯。
 我が家では夜に米を炊く。朝、子供たちがパンを食べて出て行った後、私はゆっくりと米の飯を食べる。特に、おかずは作らず、冷えたままのご飯に味噌、梅干を添えてゆっくりと食べる。場合によってはキムチ、佃煮、ザーサイなどを添えることもあるが、今、個人的に気に入っているのは味噌飯である。味噌汁用の味噌を指の先ほどご飯に乗せ、それを味わいながら、味噌の味だけで飯を食べる。

 塩気がたっぷりあって米がうまい。

 味噌握りだと思ってもらえばいい。
 これのいいところは、朝のメールチェックやインターネット・サーフィンをしながら、少しずつ食べるのに適していること。若い頃は、これと面白い小説があれば、お茶碗5杯ぐらいは行けたが、最近は2杯がいいところである。
 本を片手に、米を食らう。
 色々、幸せな時間である。

 最近は、素の飯をどう食うかがちょっとしたテーマになっている。
 『比叡山炎上』の舞台となった戦国日本では、米や稗、粟などの穀物と、野菜の味噌汁、漬物などが基本的な食事だった。魚は水辺の品に限られるし、獣肉はあまり食べられていない。
 戦時の食事には、干し飯、味噌殻(みそがら、味噌を藁に沁みさせたもの)などが供されたという。農民が戦闘に参加する際、一日、米が六合ほど配給されたという。これをすべて食べるのではなく、半分ほどを持ち帰り、家族に与えたか、現金化したものと考えられる。
 朝の味噌飯を食べるとき、私は戦国の味噌殻をしがみながら、干し飯を噛む足軽雑兵たちの旅路を思うのである。

●中国茶漬け

 飲んだ後は、お茶漬けがいい。
 最近は新発売の「中国茶漬け」がうまい。夏に買った「冷やし烏龍茶漬け」が意外にうまかったので、冬用の中国茶漬けも買った。少し高いが、気分転換にはよい。

●NHK 世界遺産 マチュピチュ

 インカの隠された都マチュピチュとは、「老いた峰」の意味。正確にはマチュピチュとワイナピチュ(若い峰)の間の尾根部分に広がる。CGできちんとした配置が見られたのはありがたい。最近、発見された石切り場はこうなっていたのか?
 ふむふむ。
 このシリーズはなかなかいいではないか?

●仕事中、仕事中
 アレの作業中。これは目処がついたら、ご報告を。
 『金剛神界』は、作業量の再調整中。年明けにずれ込むことになりますが、まず、Ⅰの後半、大破壊後に関するサポートをきちんと行うことになりそうです。その後、Ⅱの世界観を完全にサポートするサプリメント『TOKYOミレニアム』を出す方向で調整しているが、まだ確定ではないので、ぜひ、応援を。その前に、西上の担当するリプレイがお手元に届くことになるでしょう。この辺、スケジュールが確定しましたら、正式にご報告します。
 その他、企画書を書いたり、電話をしたり、もらったり。
 何とかしたい案件が山積中だが、まずはひとつひとつ。

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October 26, 2005

日々雑記:ぱらいそさ、いくだあ

 先日書いた豪華古本はもはや他の人にもらわれていったとのこと。残念。
 まあ、誰かの本棚に納まったならばよし、としよう。

●箱一杯の十円玉
 銀行の前で、現金輸送車を見る。
 輸送車から降ろされたのが、2万円入りの10円玉の箱。16個。32万円也。これを台車で運ぶ訳なのだが、2万円箱は以外に小さい。ちょっとしたモデムぐらいのサイズだ。
 2万円というと2000枚、10円玉は4.5gなので、1箱9キロである。片手で持てそうな箱が9キロか。まあ、銅の塊だと思えば、そういうものだ。一見した時は20キロぐらいかと思った。
 戦国時代に通用していた一文銭は、真ん中に穴が開いている分、軽くて、だいたい3.1~3.2gで、いわゆる一貫文が1000枚で3.2キロ。真ん中に頑丈な紐が通っているので、1000gぐらい増えるのかな。

●ミニ豚
 午後から学校。2年の秋ともなれば、就職活動やインターンがピークで、現場に投入されたまま帰ってこない生徒が増え、教室も寂しくなる。授業と言っても半ば雑談交じりになる。
 テキストは「異形コレクション・魔地図」より森真沙子『猫ヲ探ス』を。
 残念ながら、内田百聞の名前を知る生徒は少ないが、猫の道の話は好評である。

 O嬢が「ミニ豚が欲しい!」とか言い出すので、インターネットで調査する。
 生後2ヶ月で販売されているミニ豚は確かに可愛いのであるが、サイズは20センチから最大70センチまで。重量も5キロから40キロぐらいまで。雑食なので、食事は残飯でもいいし、ドッグフードで十分らしい。寿命は10年から20年。

「しかし、なぜ、ミニ豚?」
「犬は噛むからいやなんです」
「豚も噛むよ。犬ほどじゃないけど」

 もとは猪なのですよ。
 養豚農家が凶暴化した豚に噛み殺される事件が、何年か前に起きていたはず。

 個人的には、30年ぐらい前、「野生の王国」で放送していたアフリカ猪、ペッカリーハンティングが脳裏をよぎる。トンプソン系のサブマシンガンを腰だめにして、群れに叩き込むという、どこがハンティングだか分からないものであるが、ペッカリーの群れは非常に危険なので、こうしないと反撃されて死ぬそうな(いや、だったら、やるなよ)。

 まあ、犬が主人を噛むとしたら、それは飼い方が悪いですよ。

 はてさて、彼女は来年、豚と暮らしているのだろうか?

●新入生へのメッセージ
 生徒が別の授業で製作している来年度新入生向けの小冊子のためのコメントを求められるが、ちょっとぐだぐだで答える。
 好きなことを突き詰めろとか、適当なことを言う。ついでに、ガンダムを全部見て来いと言っておく。
 さて、どういう反応が帰ってくるやら。

●ぱらいそさ、いくだあ
 学校の帰りに、アークライトによって「超古代文明」のゲラを戻す。これで僕の作業は終了。あとは刊行を待つばかりである。立ち話のまま、打ち合わせをちょいちょい。これはおいおい。
 朝松健氏の「旋風伝」を原作とするヒロモト森一氏の「武死道」1巻が出たと聞いたので、新宿紀伊国屋アドホックのコミック・コーナーに寄るが、すでに売り切れ。代わりに「ラバーズ7」の第四巻と、「ピルグリム・イェーガー」の第五巻を買ってくる。
 文庫コーナーにもよって、資料本をと思ったら、11月からロードショーの「奇談-キダン-」のノベライズが。これは諸星大二郎の漫画「生命の木」が原作とある。稗田礼二郎が挑むキリシタン隠里の謎。そう、かの傑作である。いやあ、ついにあの「ぱらいそさ、いくだあ」が映像化されるのか。怪しい三賢者の実写もあるな。
 しかし、眼鏡に背広姿の阿部寛は、稗田礼二郎というより、TRICKみたいだ。

ラバーズ7 第四巻
 伊勢佐木真剣卓球師外伝、という副題のついたラブコメ。ヤクザの経営するコンビニ「ラバーズ7」とカラオケ屋の入った雑居ビルで、アルバイトを強制された高校生ひろみとなつき、そして、なつきに初恋の人の面影を見るオーナーを交えてのどたばた。一度は店を止め、高校の卓球部に入ったひろみだったが、オーナーに連れ戻され、バイトに復帰したが、そこへ、卓球部の女の子が現れ、ひろみ奪還のため、なつきと対戦する羽目に。
 ほにょ~とした画風が好きです。

ピルグリム・イェーガー 第五巻
 ついに戦闘開始。
 馬と格闘するロヨラとか、謎の女顔ザビエルとか、銀貨の実力が明らかになっていくあたりはいい感じである。

●いい女対決
 オリコンの「2005年イイ女」が発表された。ベスト1は「NANA」の熱演が評価された中島美嘉。
 おりしも、25日発売の月刊PLAYBOYも、「世界でもっともセクシーな世界の美女100人」特集。
 1位 アンジェリーナ・ジョリー 「トゥーム・レイダース」。
 2位 スカーレット・ヨハンセン 「アイランド」。次は「ブラック・ダリア」か。
 3位 ジェシカ・アルバ     「ダーク・エンジェル」のヒロインが美人になって「ファンタスティック・フォー」と「シン・シティ」で上昇。

●トリビアを考える
 午前中、『超古代文明』のゲラチェックをしながら、ふと、考える。
「これ、『トリビアの泉』に送ったら、何へぇもらえるかな?」
 そこで、ネタを考えるが、なかなか「へえ」と言ってもらえそうにない。ネタが濃すぎるのだ。
 やっと思いついたネタ。

「地上絵で有名なナスカ文明の都の名前は、    カワチ    」

 何へぇもらえるだろうか?
 まあ、気にいったら、河内弁のおっさんが地上絵を書いている図でも想像してほしい。
 あと、戦国の剣術を調べていて分かったトリビア。

「北辰一刀流の源流として名高い剣術、小野一刀流の宗家は     神父   」

 現在の宗家は元津軽藩士の家系で、明治以降、洗礼し、神父となったそうです。宗家は都内にあります。
 小野一刀流にかかる形容詞にもう一工夫必要かな。

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October 25, 2005

日々雑記:豪華な本が捨てられる

 『超古代文明』再校作業中。作業中……。

●超古代文明
 11月16日頃、新紀元社より発売ですので、よろしく。
 アトランティスだけで150ページを越えますよ。最新の地球物理学とか環境考古学とかの話もしてます。ああ、近刊予告には日本編の話が載っておりますが、諸般の事情により、日本編は割愛することとなりました。邪馬台国ファンの方、古史古伝ファンの方、お許しあれ。実際のところ、邪馬台国と古史古伝はそれだけで一冊になった上に、日本近代史になってしまうのですよ。

●近況
 アレの監修が始まったので、ここからが大騒ぎだ。11月初めまで、アレを解決しなくてはなりませぬので、今、大騒ぎです。平行して『金剛神界』と『比叡山炎上』も来月中に色々やらねばならないので大騒ぎなので、『永遠の冬』第二章が遅れるかもしれない。どこから始めるか色々悩んでいるところなのだが。
 深淵CONの打上で会ったお嬢さんから、山岳宗教の本をご紹介いただく。ありがたい。このあたりの資料漁りも大騒ぎである。来月半ばには何とかして、雪に埋もれる前に、比叡山に登っておきたいのであるが……。時間があるのか、オレ。

●mixi
 ある方からmixiにお誘いいただくが、こちらのBlogだけで十分忙しいので、お断りする。興味がないではないし、新旧の友人たちがすでにネットワークを形成していることは分かっているのであるが、正直、2個の日記を書いている暇はないし、コメントを返していられない可能性が高いので、お断りしている。
 お許しあれ。
 御用事のある場合はメールか電話をいただければ幸いである。

●豪華な本が捨てられていく
 朝の路上は目の毒である。
 なぜならば、宝の山が落ちているからだ。
 先週の金曜日の朝、学校に行く途中で、近所のご家庭が建て直しのため、豪華な歴史図鑑の類を捨てられるのを目撃、思わず引き取る約束をしてしまった。大判のフルカラー歴史図鑑、とりあえず安土桃山と戦国時代、室町時代だけあればいいのだが、それでも重かった上に、学校へ寄付する本を大量に抱えていたので、後日、取りに行く約束としたのである。土曜日はそちらがご不在だったので、今日、もう一度、取りに行く予定。
 近年、古本屋業界は一般市民の教養離れによってかなり厳しく、こうした本がゴミ同然に扱われてしまう。薄利多売でコミックにターゲットを絞る新古書店では、流行の本かコミック以外はやはり安値になる。引き取っても買う人がいないのである。こうして、一昔前の百貨事典系はロストしていく対象なのである。
 都内で見かける駅拾い本を扱う露天商の類に至っては、雑誌とコミック、安物文庫以外は重い邪魔者となるためか、新刊ハードカバーが捨て値で扱われている。ここまで行くと、買うというよりも、保護するという気分になる。
 そういう訳で、資源ごみの日の路上は目の毒である。
 もはや読む人、収納すべき棚を失った本が山のように落ちているのだ。そして、すでに資料の山が生活を圧迫している我が家にはそれらをすべて受け入れてやる場所などない。
 本好きには寂しい風景なのである。

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October 24, 2005

深淵:流刑

 神よ、ここにて憩いたまえ、くつろぎたまえ、腹を満たしたまえ!

 昨日は東京深淵CONシキサイにお邪魔してきた。有志が開催してくれている季節開催の深淵OnlyCONである。今回は30名以上あつまり、7卓が成立した。
 私も、第二版で即興型のシナリオをマスターしてきた。
 「深淵」はストーリーサポートが強いので、やはり即興が面白い。(あー、その辺、デザイナーが楽をしたいからとか言わないよーに。即興が楽にできるように、である)

 今回は、結局、「永遠の冬」そのものとは無関係だが、結局、山中の流刑地で砂鉄を掘る話から。

 PCはいかの通り。

 踊り子イリス。不義の子である負い目から、父の仇敵、死霊使いルースを追うが、逆に捕まり、沈黙の刻印を刻まれて、流刑地で砂鉄掘り。

 少年ユーン。死霊使いルースに村を襲われ、村人の多くが死に、恋人のロージアは魔力が近づくと、傷つき、血を吐くという呪いをかけられてしまう。家族の敵を討ち、ロージアの呪いを解くために少年は旅立つ。恋人に残した誓いの言葉は「今度はきっと君を守る!」。
 でも、あっさり捕まり、砂鉄掘り。

 吟遊詩人セドリック。魔法の竪琴を手に入れるも、そこにかかっていた黒き翼ガープリスの呪いで片腕が黒い鉤爪に(呪いの第三段階。第五段階になると完全にガルギルの妖魔に)。占い師から「死の予言」を与えられ、それを解き明かすべく、山中へ分け入ったところをルースの軍勢につかまり、砂鉄掘り。

 奇妙な旅人アルザ・ハドレイ。女性の魔族信徒。同じ教団のジルと恋仲になるも、ジルは何かの任務中に死亡、亡霊となってアルザに取り付く。さらに、このジルが、水魔の血筋の女リーナに手を出しており、そのリーナは教団の魔道書を盗んで失踪、教団はアルザにリーナの捕獲と魔道書の奪還を命令、アルザはリーナを追って、死霊使いルースの支配する流刑地へ向かうが、あっさり捕まり、拷問された挙句の果てに砂鉄掘り。
 リーナ曰く「楽には死なせないわよ」

 武装解除の上、夜は牢屋、昼は川原で砂鉄掘りという絶望的な状況からスタート。
 PCたちは果てしなき砂鉄掘りの重労働の中、冬の到来を告げる《冬の翼》の到来を知る。河が凍り、雪に埋もれる冬、自分たちはどうなるのだろうか?と不安を隠せない流刑者たちに、流刑地の支配者ルースは、冬迎えの宴を開くという。
 冬の統領ル・ウールの祠の前に集められた流刑者たちに、暖かな食べ物や酒が振舞われ、セドリックとイリスには歌舞が命じられる。苛酷な流刑地の生活に苦しむ流刑者たちは突然の温情に驚きながらも、振舞われた酒食に喜ぶ。
 やがて、セドリックの魔法の竪琴が真実を描き出す。
 なんと、流刑者たちの頭上には、生贄を喰らうべき雪狼が現れたのである。
 そうルースは、冬に向けて、働きの減る流刑者たちを雪狼への供物とし、雪狼のパワーを手に入れようとしていたのだ。
 雪狼の出現に大混乱となる祠前の広場。セドリックは、その混乱に乗じて、ルースに近づき、鉤爪でこれを倒すが、「死の予言」により、雪狼の最初の生贄に選ばれたため、慌てて逃げ惑う羽目に。ルースが呼び出していた骸骨兵もセドリックを追って動き出す。
 見張りから短剣を奪ったイリスは獣化して復活しようとするルースに止めを刺し、さらにセドリックを追う雪狼をも瞬殺する。(この間、《叙事詩に残る一撃》が二度発動する)。
 アルザも、リーナに迫り、これを刺すが、危機を感じたリーナは河に逃げ込み、水魔に変身する。アルザはその隙に、ルースの落とした魔道書を奪い返す。
 骸骨兵の攻撃に両断されようとしたセドリックは、第三の運命「王者の相」に覚醒、間一髪で生き延びる。最高の贄の誕生を感じ取ったリーナは自らそれを喰らうべく、怪物となって上陸、骸骨兵には他の邪魔者を殺すように命じる。しかし、この作戦変更が仇となり、セドリックの鉤爪、その他3名の短剣攻撃によって、骸骨兵は粉砕され、リーナも、アルザの中に眠っていた「鏡の瞳」の魔力に捕らわれ、隙を突かれた。

 エンディング。

 ロージアの呪いが解けたことを知り、故郷に向かって、走り出す少年ユーン。父のもとに戻ろうとするイリス。
 それらを見送ったセドリックの背後で、アルザは短剣を抜いた。「緑の猟犬」としての本性を表し、セドリックを自らのために生贄にしようとするアルザ。間一髪、その刃を逃れたセドリックであったが、彼の未来はいまだ、死の予言から逃れてはいないようである。

 帰宅したイリスを迎えたのは父の怒声。
「この馬鹿娘はどこに行っていた!」
 イリスは何も言い訳しなかった。
 父と彼女の関係が変わったかどうかは分からない。でも、この家の中にまだ、居場所はある。

 村に戻ったユーンは、元気になったロージアと再会した。
 死霊使いに焼かれ、多くの住民を失った村は今も悲惨な風景だ。
 しかし、ユーンとロージアは生きている。
 二人で村を立て直せばよい。
 そして、ユーンは誓いの言葉を繰り返す。
「今度こそ君を守る!」

●感想
 戦力皆無という陣容で、どうなるかずいぶん心配しました。
 召喚値70の中堅魔族で対抗する設定を、召喚値30×4体に変更したら、ラスBOSSが瞬殺されました。アーメン。一番頑張ったのは精神系無効の骸骨兵君でした。
 なんとかまとまったのでOK。

 閉会後は、恒例化している近所の中華料理屋で宴会。
 適当にひとり1品相当になるように、5品ばかり頼んでつつきながら、ビールを飲む。金曜日の夜がアレだったのと、「エウレカセブン」と「響鬼」を見るために、早起きした分、睡眠不足でヘロヘロだったので、やや心配だったが、気持ちよく飲めた。修験道や密教の話をするうちに、京都から来たZ氏がリアル巫女萌えであることが告白されたり、「深淵」に魔法少女を出して下さいと言われたり、色々楽しい時間であった。
 以前、ここで語った「PC枠」の話をしたら、「そういう安心感も必要なのですよ」とのご意見をいただく。フォーマットがあることの安心感ということか。
 あと、コンベンションで卓の成立確率が20%上昇するなら、俺もGM紹介でネコ耳って言いますよというGMも。コンベンション・マスターも大変だなあ、と。
 次は1月か。

●アニメ特撮
 土曜日夕方、日曜日朝のアニメ特撮が色々印象深いものであったので、感想。

「BLOOD+」
 お父さんの回想からスタートし、ビデオ版とTV版がやっとつながりました。
 アルジャーノのいやみっぷりとか、細かい演出がなかなか丁寧で、逆に血まみれシーンはあまり多くなく、小夜覚醒への道が丁寧に描かれている。「Destiny」の話の飛ばしっぷりに慣れている身からすると、もったり感じるぐらいですが、こういうゆったりしたドラマの進め方のほうが好きですねえ。

「交響詩篇エウレカセブン」
 前回が最終回と見まごうばかりの大盛り上がり大会で、エウレカとレントンの再会編であったが、今回はフリーランサーとなった元SOF(特殊部隊)のチャールズ・ビームとレイによる単独追撃戦。エアボードによる生身の潜入に対して、ゲリラ戦モードで迎撃するホランドの、キレっぷりとか、本格戦争物の味が派手に出ております。チャールズの最後とかいいですな。

「魔法戦隊マジレンジャー」
 父の帰還編終わり。
 魔道騎士ウルザードが、父ブレイジェルであったことが明らかになる。魁の涙にンマの呪縛を破った父は冥獣帝ンマとの決戦のため、ひとり魔界へ。命を投げ出し、ンマを倒す。
 そして、最後の言葉は「母は生きている」。
 次回から、ンマ死亡に伴い、復活するインフェルシアの邪神たちを倒し、母を取り戻す戦いに。
 このシリーズは丁寧でいいなあ。

「仮面ライダー響鬼」
 朱鬼編終わり。
 前回、盗まれた鬼鎧が「変身忍者嵐」だったことは呆れましたが、これを奪い、鬼として復讐を果たそうとする女、朱鬼はなかなかいいキャラでした。斬鬼の師匠でありながら、復讐を捨てられず、鬼を止めさせられた朱鬼。今も妖艶な女戦士であり、今の鬼には失われている様々な秘儀を使いこなす。実は魔力によって若さを保っており、轟鬼の祖母より年上とか。最終的には、鬼祓いの対象となり、威吹鬼に追われるも、これを返り討ちにして、自らの家族の仇である魔化魍と相打ちに。
 復讐ゆえに鬼になりたかったアキラの「未来の可能性のひとつ」でもある。
 このあたりのドラマがやはり見所かと。
 スタッフ交代でギャグ路線の回が増え、質の低下を言われますが、もう少し見守ってやりたい作品です。やっぱり面白いしね。

 今日は校正で一日つぶれる予定。

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October 22, 2005

永遠の冬9:継承

 人は意識せずに未来の準備をする。
 今日すること、昨日したことは明日につながる。
 しなかったことは、明日の道にはつながらない。
 そして、この出会いの意味を知るのは遥か先のことであろう。

 10歳の冬。
 今年もウィリスが冬翼様を最初に見つけた。
 ゼルダ婆と二人で、お迎えの祝詞を唱えて村を回った。衣装はしまってあった先々代のものを着たが、まだ小さなウィリスにはまだ少しぶかぶかだった。
「お迎え役の衣装を揃えないとねえ」
 ウィリスの母が言った。
「すぐ大きくなる。今はこれでよいのじゃ」
 ゼルダ婆が言う。
「もうすぐ、私が機織りを覚えるよ!」
 メイアが言った。
 確かにメイアの母は村随一の機織りだ。10歳になったメイアは織り機に触れることを許された。この冬は機を織る技を学んで過ごすのだ。
「急ぐな、メイア。すべては継承の儀が終わってからだ」
 ゼルダ婆がいった。
 ウィリスはこの冬、継承の儀を受けねばならない。お迎え役として、冬翼様の御眷属に挨拶をして回るのだ。御眷属がウィリスを認めて初めて、ゼルダ婆の正式な後継者となる。この儀式がうまく行かねば、ウィリスはお迎え役になれぬばかりか、命を落とすかもしれない。
 それほどまでに、冬の眷属は気が荒いのである。

 雪がちらつき始めてから最初の満月がやってきた。
 満月を控えた朝、ゼルダ婆とウィリスは霜に覆われた山に入った。まだ雪が積もるほどではないが、地面は凍りつき、一歩進むたびにザクザクと音を立てた。斜面は時折、滑ったので、ウィリスと婆は半ば這うようにして、山を登った。秋に茸を取ったり、薪を拾ったりするあたりも、もはや人気はない。獣たちも冬篭りをするために移動したのか、遠い声さえも聞こえぬ。わずかに冬鳥が舞うばかりである。
 やがて、白く屹立した板状の石碑にたどり着いた。
 「白の石碑」である。

 7歳の夏。ウィリスはここであの白く美しい女性に出会った。
 真っ白な鎧具足をつけ、毛皮の帽子を被った勇ましい姿をしていた。
 きれいだった。
 しかし、彼女はこう言って、彼を追い払った。
「ここは禁忌の場所」
 彼女の青い瞳をウィリスはよく覚えていた。

 あれから3年。
 ウィリスは、これが何であるかをすでに学んでいた。
 冬翼様の御眷属にして、雪狼たちの姫ネージャの封印である。
 この地に、雪狼の姫ネージャ様が封じられている。
 正式なお迎え役となるには、ネージャ様の声を得なくてはならない。そうすることで、お迎え役はさらに雪狼の友となり、冬翼様の加護を得ることになるのだ。

 婆の祝詞に合わせて、ウィリスはお集いの舞いを踊る。
 何も持たぬ両手で、森や藪から仲間を招くような仕草をする。ゆるゆると向きを変え、四方から招き寄せる。それは御眷属衆を招き、この地に力を集める仕草だ。
 祝詞と舞いに答えるように寒風が吹き始める。
 雪狼の声がいくつも上がる。
 凍えるような冷たい風に、白い雪が混じり始める。
 見える。
 ウィリスの瞳はもう、風の中を舞う雪狼の透き通った姿さえ見える。祝詞と舞いに合わせて、何頭も何頭もの雪狼がウィリスの周囲を舞う。雪が二人の上に振り積もり始めるが、ウィリスは冷たくなど感じない。それは優しい母の手のように少年を抱きしめる。
 婆の声はぐっと高まる。
 ウィリスは、白の石碑に向かって両手を伸ばし、招く仕草をする。
「「姫様、御顕現あれ!」」
 ウィリスと婆の言葉が重なる。

 ふわり。

 雪をはらんだ風が渦巻き、その中央にひとりの女性が現れた。
 白い鎧に身をまとい、毛皮の帽子を被った戦姫。
 その瞳は空の青。
 その腕には氷雪の大槍。
 美しくも勇ましき雪狼の姫。

「「ネージャ様!」」
 ウィリスと婆はその場に伏した。
「お迎え、ご苦労」
 ネージャが鈴を転がすような澄んだ声を発した。
 そのまま、ざっと前に出る。
「……やっと……やっと、会えたな、ウィリス」
 ネージャは言った。
「汝は獣の王となるのだ」
「然り」
 ゼルダ婆がウィリスにささやく。
「お前はそのために選ばれたのだ」

 かくして、ウィリスは雪狼の姫ネージャから認められた。
 獣の王が何を意味するのか、まだ、彼は知らない。
 そして、彼の将来につながる、もうひとりの男の物語など、ウィリスの知るよしもなかった。

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たぶん、第一章終わり。
この話がどこまで、事態を変えるかはまだ明らかではない。
最終的に、他の設定と調整をする予定だが、はてさて。
来週には第二章を描き始めるつもり。
ウィリス11歳の春になるかどうか。
いずれきちんと書いて製品化したいが、その際までに色々変わるかもしれないことを、読んでくださった皆様には、ご理解いただきたい。
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日々雑記:路上から見る

●樫の木の下で
 金曜日は朝から学校である。企画科とライター科を合わせて3クラスのライティング。
 コラムを書かせ、添削する一方で、テキストを読ませ、感想を聞く。まあ国語の授業である。時折、コラムの添削をしながら、ボーイズラブとハードゲイの違いを解説したり、ガンダムとBLの連動性に言及したりするが、そういうあたりがまあ、ゲーム学校か。しかし、ゲイとBLの違いは認知しておいてほしいぞ。
 BLとレイザーラモンHGははるかに違うぞ。

 期末課題の小説に向けて、簡単にプロットの話を。

 以下、レジュメ。
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●分かりやすいプロットを書くこつ
・冒頭に、小説のジャンル、もしくは、テーマを1行でまとめる。
 →別に概要があれば、それでよい。

・主人公の設定を簡潔にまとめる。  
 →書き出し例 18歳の少年◎◎は……

・5W1Hの充実。          
 →誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、どのように。

・視点の切り替え、大きな場面の変化をはっきりさせる。
 →改行、主語述語

・小説を展開するキーワード、シンボリズムを理解し、混乱させない。
 →先にテーマを立てると、確立しやすい。
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 言うのは簡単だが、実践するのは色々大変。
 
 後半のテキスト講読は、どうも『干し若』が不評なのと、早めに読ませて起きたかったこともあり、「深淵」のサプリメント『人の夢、獣の夢』から『樫の木の下で』と、室井佑月の短編集『熱帯植物園』より『クレセント』に変更した。

 『樫の木の下で』は、『新たなる暁』にまつわる一エピソード。まあ、教団本体は出てこない。ルウンを崇拝する辺境の村での夏祭りの話である。何も予備知識を持たずに読むと、蘇った儚いキアと、年上の強気な従姉妹リーティの間で揺れるヘタレ少年の話になる。ゲーム学校の学生であるから、この解釈において、「萌え」記号が評価の基準になる。その反応は面白い。自分の小説をテキストに使うのは傲慢かもしれないが、評価を聞けるので、色々参考になる。キアは狙った部分のあるキャラクターだが、リーティが今や萌え記号「強気姉」で解釈されるとは。

 ああ、97年の夏、僕はこういう話を書いていたんだな。

 『クレセント』は「セックスの後のみりんはうまい。」というキャッチーな一文から始まる傑作。主人公の女子高校生はいい子を演じながらも、アル中で援助交際中だが、つきあっている年上の医師との関係に悩む、という話。短いが、色々考えさせられる話である。

●打ち合わせ
 『超古代文明』の再校が出たのと、諸般の打ち合わせでアークライトへ。

 『超古代文明』は、11月16日頃発売予定。新紀元社より。

 『真・女神転生X』関係の打ち合わせをうにゃうにゃ。このあたりは作業の進展、あるいは、関係各位の許可が取れたら、また、報告いたします。『真・女神転生X』は版権関係が複雑なのでお許しあれ。

 『クトゥルフ神話RPG キーパーコンパニオン』をいただく。魔道書の解説が素晴らしい。『比叡山炎上』では、戦国日本に伝来した可能性のある魔道書を色々サポートする予定。あるいは、同じ事象を別の人が観察した内容をいれたいものである。『フサンの七つの謎』とか中国語版があるものを優先的にするが、ムー紀元のものは日本にあって問題なかろう。

 その他、企画の話だか、雑談だか分からない話を色々。
 今、『BLOOD+』のRPGを作ったらいいのでは? いや、今こそ、来るべきSEED第三部に向けて、『ガンダムSEED RPG』を、とか、『シャドウラン第四版』ってどこか出しませんか? とか。
 まずはPDFでない本が届いてからという話でもあるが、『シャドウラン』は、個人的にとても好きなシステムなので、どこかで出るならば、応援したい作品である。FASAのゲームは面白い世界観が多いので、好きだ。そう言えば、末期の『アースドーン』はAD&Dに対抗して作られた野心的な作品であった。日本での刊行ラインはFASAの解散とともに止まってしまったが、今も熱心にプレイしているサークルがいる。海外ではFanProに引き継がれ、第二版のルールブックがLiving Room Gamesから出ている。
 そういえば、マングースからRQのあたらしい情報も出たらしい。期待期待。
 
 帰りがけにビールを飲んだら、新宿の路上で倒れそうになる。
 ああ、ここでうずくまって、空から舞い落ちる初雪を見るんだとか呟くが、新宿駅地下街で倒れてもホームレスにしか見えないので、『もやしもん2』を読んで体調を整え、立ち上がる。
 菌が見える農大漫画。
 春祭企画で、学生閉じ込めて、バトルロイヤルとか、いいなあ。

●お買い物
『図解近代魔術』
 B6版の新シリーズFファイルの1。見開きで魔術の基礎知識を一つずつ解説するシリーズ。

『もやしもん 2』
 農大漫画その2.面白いよ。

『シュヴァリエ 1』
 冲方丁原作で買ってしまった歴史ゴシック・ホラーアクション。王朝最盛期のパリ、若き女性の血で詩を書く「詩人」が続出、これと戦う「女騎士(シュヴァリエ)」スフィンクスの戦いを描く。
 やや、絵が凄いが、まあ、ゴシックホラーということで。

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October 20, 2005

永遠の冬8:痛み

 学び舎に窓は必要なのだろうか?
 あれがなければ、誰も郷愁になど捕らわれはしない。
 窓辺に差す光さえも、時として、心を射抜く。

 10歳の秋。
 峠を越えたウィリスは、砂の川原にある冬翼様の大社で修行を始めた。
「冬翼様の大社」
 ゼルダ婆はそう言ったが、正しくは、プラージュの神殿である。狩りと漁労の神々であるプラージュの眷属を信仰する司祭たちの教団であるが、冬翼様はこの一角に祭られ、狩人の神ラージェレなどと並んでいる。
 神殿の司祭長は穏やかな口調で、プラージュの信仰を語るが、ゼルダ婆は頑固だ。
「我ら、グリスン谷の守護神は冬翼様じゃ」
 ゼルダ婆はそう言い切る。
 婆とは長い付き合いらしい司祭長は呆れ顔で聞き流し、ウィリスに目を向ける。
「我らが神々は寛容である。グリスン谷のように、我らが神々のひとりだけを崇拝する村も多いし、村によっては神の解釈も違う。気づけば、ライエルの眷属神である豊饒の王さえも崇拝する。そのような混交さえも時には許さねばならぬ。
 この神殿で学ぶ司祭候補生の多くは、あれを《冬の翼》と呼び、それほど重視はしない。しかし、冬翼様がグリスン谷の守護神であることには変わりはない。
 ウィリスよ、ここで色々なものを見て、聞いて、己の村のために多くの智慧を持ち帰れ。
 そうして、よりよきお迎え役となるのだ」

 ウィリスの修行は、古い祝詞と祝い舞の習得である。
 ゼルダ婆から学んだ冬翼様の七つの祝詞を、神殿の古文書から書き写し、その解釈と謡いを、司祭長に学ぶ。祝い舞は神殿の女性神官の下に通って舞い、また、弦や笛を学んだ。

「お前、冬の翼の司祭だって?」
 祝い舞の修行に向かう途中、若者に呼び止められた。
 装束から見て、司祭見習いらしい。
「冬翼様のお迎え役見習いです」
 ウィリスは答えた。
 ゼルダ婆は正しい肩書きにこだわる。
 たとえ、世の人は冬翼様を、《冬の翼》と呼んでも、グリスン谷にとっては冬翼様なのだ。その正しき名前で呼ぶものにこそ、お答えくださる。
 グリスン谷のお迎え役は、世間では司祭や神官に相当する役職であるが、あくまでも「お迎え役」なのである。胸を張って、その名前を口に出来ないものにお迎え役の力は備わらない。
「お迎え役? 田舎村らしいな」
 相手は蔑むように言い捨てた。
「お前の神さんなど弱くて、本殿の端っこにしか見えないぜ。
 どうせなら、ザラシュ様を拝みなよ」
 プラージュの太陽神だ。およそこの神殿でも上位に位置する強き神だ。この若者は、ザラシュの力を己のものかのように胸を張った。
「ザラシュ様にもお祈りをしております」
 ウィリスは答えた。
 嘘ではない。
 司祭長は、ウィリスの修行を引き受ける代わりに、神殿の掃除と、毎日、諸神を礼拝することを命じた。盟友たる神々を礼拝し、多少の労働をすることに、ゼルダ婆も反対はしなかった。おかげで毎朝夜明け前に、ウィリスは神殿を掃除し、諸神の像の前でお祈りを捧げていた。
 しかし、ウィリスの言葉は若者を激怒させた。
 意味の分からない唸りとともに、拳がウィリスの顔を襲った。
 突然、突き飛ばされ、そのまま、激しく蹴られた。
「この、この、お前、この」
 若者の叫びは意味が分からない。
 ただ、ウィリスは痛みに呆然とし、状況が理解できなかった。
 痛い、痛い。
 でも、どうして?
 ウィリスはかっとした。
 転がって、逃げ出すと、拳を握って立ち上がった。
「えええ、やるか?」
 若者は拳を握って飛び込んでくる。
 ずいぶん体が大きい。
 ウィリスは横に飛びのいた。
 そのまま、横から殴るが、相手の肩に当たって弾かれた。
 プラージュの神殿は勇猛な狩猟の神々を崇拝する。司祭は祈りと同時に、戦の技も学ぶ。正司祭になることは神殿騎士として十分な武芸を体得したということにもなる。この若者も、庭で武芸を学んでいたのだろう。
「でかい奴と喧嘩する時には、股を蹴ればいい」
 昔、ガースが言っていたのが、ウィリスの頭をよぎった。でも、そんな作戦さえうまく出来そうにはない。
 若者の膝がウィリスの腹に入った。
 息が詰まった。
 動きが止まり、そのまま、床に転がった。
「ガキが! 生意気なんだよ」
 若者はわめき声を上げながら、ウィリスを蹴った。
 腹を、顔を、背を、足を、腕を。
 痛みは止まらない。
(なぜ?)
 痛みの中で、ウィリスは思った。

(弱いからだ)

 誰かが答えた。

(弱い匂いがする)

 獣の息が近づいてくる。

(弱いものは餌に過ぎぬ)

 ああ、とウィリスは知った。雪狼は弱いものの魂を喰らう。死すべき者に冷たい吐息を吐きかける。

(弱いものを狩り、弱いものを喰らう。それがプラージュの本質だ)

 雪狼の声はもう耳元に迫っている。

(お迎え役は弱いものであってはならない)

 同時に、冷たい腕がウィリスを抱きしめた。
 痛みが消え、力が湧いてきた。
 急に目の前が明るくなった。
 すっと後方に飛びのいて、周囲を見る。
 全部、見えた。
 怒り狂った若者。顔を真赤にし、目を血走らせ、半開きの口から涎が一筋こぼれている。
 次はそのまま飛び掛って、ウィリスを床に押し付け、顔を殴る気だ。
 その後ろ、廊下の隅に見ている若者の仲間が三人。あざ笑うような顔は下品に歪む。そのうち、ひとりはやや仲間の暴走に気づいているが、床に垂れた血に興奮している。
 血?
 いつの間にか、ウィリスの口が切れ、神殿の床に血が飛び散っていたのだ。
 見れば、襲ってきた若者の拳に血がついている。
 一瞬で、そこまで見えた。

(お前の目はいい)

 父が言っていた。4年間続けて、村で最初に冬翼様を見つけた。
 少年は、若者の拳をさらに避け、そのまま後退して、若者をにらみつけた。

(殺すか?)

 雪狼の声がウィリスの中で響いた。
 周囲に冷たい氷のような風が巻いた。
 若者は、突然、顔に叩きつけられた氷雪にびくっとした。
「な、ななな」
 若者はそこで立ち尽くした。

(殺すか?)

 もう一度、雪狼の声がウィリスの中で響いた。
 ウィリスの腕に先ほど蹴られた痛みが戻ってきた。怒りが腹の底からわきあがってくる。若者の暴力がやっと理解できた。ウィリスは意味不明の暴力で蹴り殺されようとしていたのだ。
 殺す、と答えそうになった瞬間に、何かが引っかかった。
 ゼルダ婆の顔が浮かんだ。メイアの顔が浮かんだ。
 ここで訳のわからぬまま若者を殺してよいのか?
 ウィリスはためらった。
 人を殺す?

「何をしている!」
 ウィリスの考えを断ち切ったのは、司祭長の怒号だった。
 廊下の向こうから司祭長が走ってくる。
 司祭長の声に我に返った若者は悲鳴を上げて逃げ出した。
 ウィリスもまた、気を失った。

 若い司祭候補生同士の喧嘩、ということで事件は終わった。
 若者は司祭の修行に行き詰まっていた。武芸は出来ても祈りの暮らしに我慢がならない。そんなとき、山奥から出てきた少年に、司祭長自ら手ほどきをしているのを知り、これを少し小突いて、憂さを晴らそうとした。だが、どこかで止まらなくなり、血が流れるほどに殴り、蹴った。司祭長が止めに入らねば、少年は蹴り殺されていたか、すくなくともどこかの骨を痛めていたに違いない。
 結局、少年は三日寝込み、若者は罰を受けて、神殿を追われた。

 結局、雪狼の声のことは、ゼルダ婆にしか話さなかった。
 ゼルダ婆は、ため息をついた。
「このような場所は、お前には似合わぬか?
 まあ、よい、お前には冬翼様がついておる」

 ウィリスの最初の修行はこうして終わりを告げた。

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神殿修行編終わり。
もっと長くしようかと思ったが、雪狼が暴れすぎ。
ウィリスの最初の旅はこれで終わる。
明日は朝から学校なので、書けないと思う。
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時の経過

●酒を飲む日々と時の経過
 最近、家で飲む酒はもっぱら泡盛である。
 もともと決して強くないのだが、ほかの酒は翌日に残りやすいので、結局、泡盛をショットグラスに半分ほど注いで一気に飲む。30度のアルコールがかっと胃を熱する。他の焼酎も試したが、匂いや味わいから泡盛の30度に落ち着いた。
 今、家にあるのは「南風」だが、「久米仙」とか「瑞泉」もよい。
 スーパーで900円ほどの泡盛を1本をちびちび1週間ほどで飲むのだから、ずいぶん大人しいものである。
 ふと思い立って、食品庫を見たら、何年か前にSさんにもらい、豚の角煮の味付けに少しだけ使った泡盛「瑞泉」のミニチュア瓶が残っていた。これはいい、と開けて、ぐいとすする。

 おや?

 まるで水のようだ。
 いや、香りだけでなく、アルコールまですべて飛んでただの水になっていた。
 甲斐忍のワイン漫画「ソムリエ」で、一世紀以上前のワインが水に戻っていたという話を読んだことがあるが、瑞泉でそれを体験することになるとは……。
 次はちゃんと飲んであげるよ。

●緋色の椅子 1~3 緑川ゆき
 火曜日に生徒が借りてきた少女漫画を読んだ。ファンタジー世界を舞台にしたミステリー・ロマン。
 セツとルカは辺境の農村に住む幼なじみの男女。しかし、5年前、ルカは王の妾腹の子として、王都に旅立った。王座に座るために。5年後、ルカに会うために、王都を訪ねたセツは新王ルカリアがルカとは似ても似つかぬ偽者であることを知り、ルカの行方を捜し求める……
 いわゆる王宮陰謀劇ではあるが、少女漫画らしい活劇と、キャラクターのやりとりがよろしい。謎の背景にある大人たちの情念とか、歴史の澱の部分が決して暗くなりすぎないあたりが絵柄のおかげか。
 そのまま、『深淵』あたりのシナリオになりそうである。

●作業中、作業中
 企画書を書き直して、『比叡山炎上』のために技能解説を書いて、メールしたり、電話したり。もう10月も半ばを越えていることに愕然としたり、アレとかコレとか、色々あります。アレが飛んできて、こうなるから、あのあたりで原稿のチェックが……とか、明日あたり大騒ぎになりそうだ。
 『比叡山炎上』のキャラクター作成を調整中。どう見ても、強いキャラクターを作ると最初から、冥府魔道に落ちそうな感じに。
 今週末は深淵CONシキサイである。
 まだ、ネタは考えていないが、『永遠の冬』とは別のネタを何か用意する予定。さてさて。

●小説添削
 学生が夏休みに書いたという小説の添削を終える。
 思い立って、粗筋だけ作って、250枚も書けるのは若さゆえのエネルギーであるが、その分、未整理で、視点のブレ、読者を想定しない趣味的な描写が目立つ。割と深い設定にいけそうな伝奇SFネタをパラレルワールド絡みのラノベにしてしまうあたりが若書きの弱みだが、後半になるほど描写が落ち着くのはまさにここから始まる、という感じかな。まあ、次を書いてみたら面白くなるかもという予感がする。
 でも、説教は必要か?

見る側からの注意点その1

【1】視点人物を統一して
 誰の視線で書かれ、解釈される状況なのかを統一して欲しい。特に、パラレルワールドから来たエトランジェのツンデレ少女と、真面目なんだかオチャラケなんだか分からないニート候補生の高校生の視点が入り混じると、話がわからんのである。

【2】常識で解釈できるように
 文章表現に「いや、違うだろう?」と突っ込むような表現は許して欲しい。

【3】おちゃらけ文章は注意
 ライトノベルズ系に多い、一見三人称だが、実は主人公の一人称で全体にボケと突っ込みを自分ひとりで兼ねるオチャラケ文体というのは、実は、さじ加減がとても難しい文章である。やりすぎるとわかりにくくなるし、読者が文章と対話できなくなる。受身で流される読者は飽きやすいので、ひねった表現と相性が悪い。どちらかと言えば、文章はていねいで、中身ははっちゃけるほうがよいかと。

 あー、自分に返ってくる。
 でも、気にせず、書く。開き直って説教する。まあ、それも仕事。
 しかし、ターム2(2学期)の期末課題は小説なのだ。原稿用紙20枚以上の時代小説が3クラス分、40本は来るのか……。少しずつリードして何とかしよう。

●トラックバック停止中
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October 19, 2005

永遠の冬7:峠

 正しい理由とはいくらでもある。
 名目とはそういうものだ。
 そのとき、そこにいた。
 最終的にはそういうこと。
 そこにいる意志があるかどうかさえ関係はない。

 10歳の秋。
 秋の初め、ウィリスは修行の旅に出た。
 まずは、冬翼様の儀礼を学ぶため、ゼルダ婆とともに、ミネアス様の荘園にある冬翼様の大社へ向かった。
 グリスン谷からミネアス様の荘園、砂の川原という村へ向かうには、峠を越え、三日ほど歩く。まず、峠まで一日、峠から山を下って二日。ゼルダ婆は、薬草と土産代わりの干し魚をウィリスに背負わせて出発した。
 出掛けに、メイアが見送りにきた。
 豊饒様の祭り以来、メイアとウィリスはいいなずけになった。
 メイアの父も、ゼルダ婆の後を継ぐ、冬翼様のお迎え役ならば、娘の相手に十分と思ったか、ウィリスの父と勝手に祝い酒を交わした。ウィリスが一人前になったら、という話だった。
「気をつけてね」
 ウィリス同様、谷を出たことのないメイアは心配そうにいった。
「大丈夫さ。砂の川原で半月修行するだけだ。
 冬の前には戻る」
 ウィリスは答えた。
 お迎え役としては、秋の終わり、冬翼様がおいでになる前に戻らねばならぬ。
 冬翼様が来られたとき、お迎え役が不在である訳にはいかなかった。
「これは、お守りだから」
 メイアは剣王草の葉を編んだ首飾りを差し出した。剣王草は傷直しとしても優れた薬草だ。お守りにすれば、健康で健やかな日々が送れるという。
「ありがとう、メイア」
 ウィリスは少女を抱きしめた。

 グリスン谷から峠への道は九十九折れ。
 急な山腹を半日がかりで上がる。
「一休みじゃ」
 婆に言われて、九十九折れの曲がり角に腰を下ろすと、ずいぶん下にグリスン谷が見えた。細い谷川の周囲に広がる小さな谷。それはとてもとても小さく、狭いものに見えた。両側から迫る山の間に、小麦や野菜の畑が広がり、村の北にある斜面も果樹園というには狭い林檎畑、あちこちに残る草地に驢馬や羊が草を食む。
「小さなものじゃろ」
 ゼルダ婆がいう。
「グリスン谷は小さな村じゃよ」
「砂の川原は大きいの?」
「グリスン谷よりもずっと大きいわ。あそこには鉄が出る。砂鉄掘りの流刑衆だけでも二百人はおる」
 ウィリスは目を回した。
 谷の全員を集めても百人ばかりだ。
「それでは村のものの名前を覚えられぬではないか?」
「誰もすべての者の名前など覚えはせぬ。
 砂の川原には、その2倍も3倍も村人がおる。砂鉄を求めてくる商人が毎日のようにやってくるのだ」
「商人が毎日来るのか?」
 ウィリスは驚いた。
 グリスン谷には商人など滅多に来ない。初夏のあたりと、秋の収穫祭の時にやってくればよいほうで、ここ1、2年は秋しか来ない。旅人などが来る村でもない。年貢とて、毎年、村長一家が馬車で運んでいく始末。ミネアス様はバッスル侯爵から任ぜられたこのあたりのお代官だが、砂の川原だけで手一杯、グリスン谷に来られたのは遥か昔のことである。
「砂の川原など、小さな鉱山街よ」
 ゼルダ婆があざ笑うように言った。
「いずれお前には、バッスルにも行ってもらわねばならぬ。
 侯爵さまの都はもっともっと大きい街だ」

 半日、九十九折れをのぼり、やっと街道に出た。
 妖精街道、と呼ばれている。
「東はバッスル、西は大草原に至るそうな」
 遥か昔、妖精騎士が開いた道であるという。旅人を守る守護の魔法は消えて久しいが、ところどころに置かれた魔法の礎石の中には今も守護の力を残すものもあるという。
「今宵は峠の馬車宿に止めてもらおう」
 ゼルダ婆が言った。
 ウィリスが見る限り、街道には全く人気がなかったが、今も、月に一度は、駅馬車が通るし、馬車宿はいざというときに街道を駆け抜ける伝書使のために、馬を養い、飲食を用意するように命じられている。
 その馬車宿に達するにも、峠に向かって坂道を上らねばならぬ。先ほどまでの九十九折れに比べれば、馬車の走る街道はずいぶん緩やかな道であるが、まだまだ坂は長かった。

 それはまるで地面が揺れたような気分だった。
 気味の悪い寒気がした。
 冬翼様のもたらす心地よい寒さではない。
 吐き気を催すほどの悪寒。

 峠から下ってくる坂道を二人の人物が降りてくるのが見えた。
 片方はボロボロのローブをまとった男だった。
 顔は傷だらけで、暗い目の奥には何かぎらぎらしたものを讃えていた。胸元には蛇の鱗のようにも見える紋章をつけている。ゼルダ婆に教えてもらったことがある。あれは原蛇の星座の印。原蛇は渾沌の星座、魔族たちの信仰する原初の蛇に仕える者の印。
 もうひとりはこのような山奥には不似合いな少女だった。
 グリスン谷では結婚式の晴れ着でしか見たことのない、レースを多用したゆったりしたドレスをまとっている。年齢はウィリスより少し上、12か13ぐらい。人形のように綺麗な少女。
 でも、ウィリスは何か気味悪いものを感じた。吐き気がする。鳥肌が立つ。あれは……、あれは……。
 足に力が入らなくなった。
「最悪だ」
 ゼルダ婆が唸り、倒れそうなウィリスの体を受け止めた。
「ウィリス、奴らを見るな。穢れる」

 それは人の形をした邪悪。
 破滅の使者。

「ほほぅ、まだ生きておったか、ゼルダ」
 傷だらけの顔をした男が、ウィリスを抱きしめた婆を見下ろして言った。
「お前こそ、まだ災厄を撒き散らしておるのか?」
 ゼルダ婆が憎しみを込めて叫び返す。
「これも師匠の命ゆえ」
 男は笑いながら、答える。その視線は婆の腕の中にいたウィリスを刺すように流れた。
 婆は少年をぎゅっと抱きしめる。
「可愛い子ね」
 少女が妙に艶のある声で言った。
 触れようとするその白く細い指は、きらめく銀の鱗と毒牙を持った鎖蛇のように、ウィリスに向かって伸びてきた。
「さわるな、穢れる!」
 少女の差し出した手を、婆がはね除けた。
 ウィリスは、冷や汗をかいたまま、身動きさえ出来ぬまま、奇怪な少女を見る。その周囲には気味の悪い銀の鏡がきらきらと舞っているようだった。
「まあ、ゼルダ。姉様にそれはないでしょ?
 あなたの顔が見たくて、わざわざ歩いてあげたのに」
 ゼルダは硬直した。
「やはり、あなたは姉様なのか?
 その姿は、まさか、いや……やはり……」
 少女は老婆を見下ろすように、すっと胸を張った。
「お山を離れたあなたには分からないこと。
 でも、あなた、いい弟子ね。
 この子には、才能も素質もあるわ」
「まさか、学院が……」
 ゼルダが慌てた。
 そこですっと最初の男が少女をさえぎった。
「過剰な接触は余分だ。道を歪める」
「はあ、あんたの顔見ただけで、この子の人生、ずいぶん歪んでいるわ!」
 少女の抗議を無視して、男は婆に振り返った。
「安心しろ。今回は顔を見に来ただけ。学院はまだ気づいておらぬ。
 それに、俺たちの本当の用事は遥か西にある」
 穏やかな言葉だったが、それは逆に、ゼルダ婆を激昂させた。
「まさか、お前?!」
「ああ」
 一言だけ答えて、男は婆に背を向けた。
「達者でな」

「誰?」
 二人が西に立ち去って、やっとウィリスは悪寒から解放され、口を開いた。
「魔性に魂を売った者だ。
 ウィリス、お前はあれに決して近づいてはならぬ」
 婆は吐き捨てるように言うと、そのまま口を閉ざした。

 出会わねばよい者もいる。
 しかし、運命の歯車は容赦なく、おぞましき者どもを呼び寄せる。
 ウィリスにとって、最悪の存在が姿を現した。

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ここから「砂の川原」編。
困ったことに、あいつらが出てきた。
人の形をした邪悪。
おかげで今日は少し長くなってしまった。
いい人ばかりのグリスン谷から出て、ウィリス君は少し苦労することになる。
「永遠の冬」でエントリーを設定する。
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上海で上海

●上海で上海
 「上海退魔行 ~新撰組異聞~」でアクセスしてくれた人がいたので、以前、ファンの人からJGCで聞いた『上海で上海』という話をしておこう。もう2年ほど前の話なので細かいところは朱鷺田の想像で埋めておく。眉につばをつけて聞いてくれ。

 その人は仕事で、上海に出張した。今の上海は中国のビジネスの中心、香港と並ぶ自由経済の聖地である。当然ながら、輸入雑貨の店も多く、ゲームショップには日本のゲームも並んでいる。
 その人はゲーマーだったので、当然、隙を見て、ゲームショップに行ってみた。すると、エンターブレインのTRPGシリーズも並んでいた。あれは2003年の夏前だったので、「上海退魔行 ~新撰組異聞~」もある。その人は「上海退魔行」も当然持っていて、マスターも出来たので、いまさら、買うことはなかったが、上海で「上海退魔行」に出会うとは思っていなかったので、かなり驚いたらしい。感動した、とも言った。
 当然、現地の人向けの店であるから、中国語や英語のゲームが氾濫する中、「上海退魔行」がやたら目立っていた。
 やがて、彼は思った。
「これは売れるのだろうか?」
 日本語のTRPGというだけで、ずいぶんペナルティがあるというのに、上海市で架空歴史浪漫「上海退魔行」である。なんか日本人が「ショーグン」を見ているような気分がする。
 そうやって、しばし、「上海退魔行」の前にいたら、現地のTRPGゲーマーらしき青年が話しかけてきた。
「お前は日本人か?」
「ああ」
「この『上海退魔行』というゲームを知っているか?」
「ああ、マスターもできる」
「おお!」
 という訳で、そのまま、そこで知り合った現地のゲーマーと一緒に、「上海退魔行」を遊んできたそうな。
 どんなシナリオをやったかは時間が無くて聞けなかったが、ずいぶん楽しかったそうな。どうやら、日本のTRPGは上海や台湾を中心にアジアにも少しずつ出ているらしい。10年ほど前、シンガポールのゲーム輸入業者と話した際には、シンガポールではWoDとD&Dだけだ、みたいなことを言われたが、少しずつ状況は変わっているのかもしれない。

●コミック
魔法先生ネギま! 12
 天下一武闘会編(続き)。超絶魔法バトルの背後に、魔法学園の秘密設定が色々と。エヴァンジェリンの過去話とか、幻影空間での超絶バトルとか、まあ色々とありますが、さすが赤松健という感じですねえ。

カペタ 9
 アニメも始まったカート漫画。曽田正人という漫画家は、一つの世界に没頭し、それを描くという行動に関しては本当に凄い瞬間があって、『昴』も『め組の大吾』もそうだったが、そのエネルギーが画面から溢れてくる。

●トルティーヤとベーコン・エピ
 駅前のベーカリー、ルパがメキシコの薄焼きパン、トルティーヤを売り始めたので、ブルーチーズ・トルティーヤを買ってみる。ぱりぱりしたトルティーヤ風の薄焼きの上に緑がかったブルーチーズが溶けている。意外に美味しい。しばらくこれが昼食かな?
 ルパは京王線沿線にチェーン展開するベーカリー・カフェで、つつじヶ丘店も最近、カフェ・スペースが出来た。
 私の好みは、ベーコンエピ。
 エピはフランスパンの一種で、小麦の穂を大きくした感じのデザインにして、そのひとつひとつの身が千切って食べられるようにしてある。ベーコンエピはその身のそれぞれに小さなベーコン片が封じられている。15センチ8穂ぐらいのを買って、歩きながら頬張れるのがよい。フランスパン系なのでやや固いが、それが香ばしい。

●授業メモ
 火曜日は学校。2年生のライティングである。
 基本的に、コラム製作と添削、後半はテキスト講読。

 コラムのテーマは「今週の面白かったこと」。
 どうも、いまだ感性だけで書こうとしたり、逆に、一般論だけで書こうとしたりする。
 例えば、次世代ゲーム機論でも優等生的な解決ではなく、独自の切り口を探してほしい。例えば、レヴォリューションの片手コントローラーで、ゲームはどう変わるのかとか、これを『塊魂』とかで語って欲しい訳さ。あるいはレヴォリューションで動くMMOはどうなるのか? 
 飲み屋の話を書くなら、一般論ではなく、具体的な情報が欲しい。例えば、面白い飲み屋を探してほしい。
 恵比寿には、駄菓子バーといって、500円で駄菓子食べ放題という飲み屋がある。いわゆる昭和懐古テーマ・ショップである。たしかに話のネタにはなる。
 この店は、初めて行くと、だいたい30分は幸せである。何しろ駄菓子喰い放題だから。
 恵比寿の周囲は飲み屋ネタには困らない。
 日本語のあまり通じないイギリス風のバーを筆頭に、やたらハイテンションなウェスタン風のZEX、五カ国料理が入り乱れる家庭料理屋、ぶた飯専門店、まぐろ丼専門店、沖縄料理屋とか色々ある。
 たとえ、ガーデンプレイスのビアホールでも「ひとり二千円で酔う」とかテーマを決めれば、切り口ができる。とにかく、少し踏み込んで欲しい。

 後半は短編小説を読ませる。今回は東雅夫編の吸血鬼ホラー傑作選『血と薔薇の誘う夜に』から、梶尾真治の『干し若』。ややスラップスティック気味の吸血鬼話。あまり受けず。さて困った。

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October 18, 2005

永遠の冬6:通火の誓い

 言葉を川面に残すのは難しい。
 揺れる通火に誓っても、それは儚き夢。
 それでも、今は誓おう。
 いずれ、お前を迎えに来ると。

 10歳の夏。
 初夏、入道雲が高く上り始める前に、村では虫追いが行われる。山から下ってきた豊饒様とともに、子供たちが畑を巡り、豊饒の灰をまき、畑に集まる虫を取り、今年の豊作を願う。
 ウィリスと婆は、豊饒様のお迎えもする。
 冬翼様が厳しい冬の神ならば、豊饒様は畑を守る夏の神だ。
 これも、お迎えし、歓待し、やがて、山にお戻りいただく。
 豊饒様は豊作をもたらすよい神様であるが、いたずら好きで、女好きだ。
 葉っぱと木の枝の塊のように見える豊饒様は端から村の女子たちを抱きしめていく。抱きしめられた女子を好きな男がいれば、豊饒様から女子を引き離す。

 それは「好き」の印である。

 女子がその男を気に入れば、その場で抱き合う。気に入らねば、豊饒様を回る踊りの輪に戻る。
 久しぶりに戻ってきたガースの兄は、井戸端のカイナが豊饒様に抱きしめられると、さっと飛び出した。水車小屋の次男坊も一緒だった。カイナは二人の顔を見比べた挙句、ガースの兄を選んだ。水車小屋の次男坊は泣きながら、踊りの輪に戻った。
 婆とともに祝詞を謡うウィリスは、こうした騒ぎとは無関係だ。
「12の夏にはお前の番じゃな」
 婆はそう言って笑ったが、それはずいぶん先のように思えた。

「きゃあ」
 踊りの輪の中心で聞き慣れた声が上がった。
「豊饒様、まだその娘は早いわ」
 誰かが囃し立てた。
 見ると、メイアが豊饒様に抱きしめられている。
 ごつごつした木の枝のような腕が、少女の腰を巻き取っている。
 まるで藪そのもののような豊饒様の姿。草や木の枝の塊のように見えるその異形の奥に暗い闇が見えた。まるでメイアが森の奥に連れ去られてしまいそうだった。
「メイア!」
 ウィリスは思わず飛び出していた。
 メイアの伸ばした白い手をつかんで引っ張る。
 儀式の通りならば、豊饒様はすぐに少女を放すはずだった。
 しかし、豊饒様の腕はきっと少女に絡みついたまま。いや、さらにその藪の奥から、蔦のような緑の腕がもう一本、メイアの肩につかみかかろうとしているではないか?
「ウィリスでは役不足だとよ」
 大人たちは豊饒様の悪ふざけが始まったと思い、囃し立てる。
「ウィリス、頑張れ!」
 ガースが駆けつけ、豊饒様の緑の腕をメイアから引き剥がした。
 ウィリスが全力でメイアを引っ張る。
(……預けよう……)
 木の葉のざわめくような声がして、豊饒様がメイアを放り出した。ウィリスとメイアはそのまま体勢を崩して、ぺたんと座り込む。
「ウィリス!」
 メイアが少年に抱きついた。
 少女の髪から甘い匂いが漂った。

 歓声が上がる。

 あわててウィリスとメイアは村中の大人から見つめられていることに気づき、ぴょんと立ち上がった。
 そのまま、踊りの輪を飛び出した。
 二人で。

 川面には通火が群れていた。

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とりあえず、続き。
辺境の村の話を書いていると、どうも、日本の古い祭りの話になってしまう。一神教ではない、多神教世界の辺境とはえてして、おおらかな恋の祭りがあるものということで。
あとで大幅書き足しかなあ。
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三姫神楽

●里神楽ハンドブック
 図書館から借りてきた「里神楽ハンドブック ~ 福島・関東・甲信越」を拾い読む。
里神楽の演目解説とか、各地の里神楽の座(舞い手のグループ)とか、事典形式になっていて面白い。奉納日程一覧もあり、例えば、今日は富士吉田市の富士浅間神社、埼玉県大里郡寄居町の貴船神社、埼玉県秩父市の御嶽神社などで奉納があることが分かる。

●悪魔払いの神楽
 「神楽の詞章」では台詞や唱え言を収録している。五十音順とはいえ、最初のタイトルが「悪魔祓い」とは!
 これは新潟県三条市あたりに分布する太刀の舞いで、刀の神・経津主命(ふつぬしのみこと)が丑寅鬼門の悪魔を刀で切り、邪を祓う。囃子方の台詞には「君が代」の台詞がそのまま入る。神楽のお囃子調で、じっくり武神が唱える「千代に、八千代に、細石の」という場面は、かっこよさそうだ。『真・女神転生X』的な解釈を始めると、色々シナリオに使えそうな予感がする。

●三姫の舞い
 ぱらぱらとめくっていて「三姫(さんひめ)」(または三姫楽、さんひめがく)の演目解説に目が留まる。
 福島市、二本松市などで見られる演目で、榊を持った少女の素面三人舞い。多紀理姫命、瑞津比売命、市杵島姫命のいわゆる宗像三女神の舞いとある。宗像三女神は、福岡あたりで信仰されている海神様で、それがなぜか福島県で舞われているのか、と考えると面白いものがある。伝播に関する論文も載っているので、あとでゆっくり読むことにしよう。
 宗像三女神に関しては、参考サイト→をどうぞ。

●十三神楽
 こういう本を読むと故郷の神楽を知りたいと思うのがまあ人情。
 『クトゥルフ神話ガイドブック』で書いた通り、私の故郷は千葉県八日市場市。ラヴクラフティアン流に言えば、海底(うなそこ)のあたりである。
 八日市場市にも里神楽が一座あり、松本神社の十三神楽という。慶長年間(1596-1614)開始と口伝されているから、秀吉末期から徳川家康による江戸幕府設立前後のあたりである。演目は十二座で、「天狗様(猿田彦)の舞」から始まり、「〆切り(スサノオ)」で終わる。奉納は4月13日。
 十二座の癖に、十三座というあたりが面白い。ちなみに周囲には十二座神楽が多数分布する。十三日という奉納日ゆえか、それとも、秘められた十三番目の座があるのか?

●シナリオソース「三姫神楽伝奇」
 想定:『真・女神転生TRPG~魔都東京200X~』
 GP:5~10
 内容:東北の山奥で13年ぶりに行われる里神楽「三姫十三神楽」取材に付き合うことになったPCたちが、里神楽の裏に隠された十三番目の秘伝の謎に挑む。慶長年間由来の三姫神楽は、海洋神である宗像三女神に由来するものであったが、神楽が奉納されるのは海から遥か離れた山の奥である。
 ついに封じられた十三番目の口伝、「三品」(さんしな)が明らかになる。本来、三種の神器をアマテラス、ツクヨミ、スサノオが持って舞うはずの「三品」は、隠れキリシタンが作ったこの村では、無垢なる赤子、八重洲様に東方の三賢者が三品を捧げる宗教劇となっていたのである。
 しかし、禁断の秘伝を公開したことから、十三座の禁忌を破ってしまった村では、奇怪な連続殺人事件が始まり……。

 


 

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October 17, 2005

永遠の冬5:冬送り

 水辺の咲く紫菖蒲はすっと伸びた上に、あでやかな華をつける。
 棘ある薔薇は藪に絡まる。
 薄紅のケザルは太い幹と広がった枝一杯に咲いて、森を染める。
 咲く花がいかに見えるかは、花のみにあらず、その幹ゆえに。

 10歳の春。
 雪解けとともに、グリスン谷の春が始まる。
 村人たちは畑を見回り、畦を直し、水路に詰まった芥(ごみ)を取り除く。
 種まきをしながら、雪に埋もれていた冬キャベツを掘り出す。一冬おいた冬キャベツは甘くなり、干し肉や茸とともに茹でるだけでずいぶん美味い。
 ウィリスは薬草を干したり、すり潰したり、整理したりすることで冬を終えた。朝夕にはお迎え役としての口上を暗誦させられた。
 薬草をすり潰しながら、祝詞(のりと)を謡った。
 冬翼様の祝詞は七つある。お迎えの祝詞、お鎮めの祝詞、お祓いの祝詞、お送りの祝詞、お集いの祝詞、お捧げの祝詞、お留めの祝詞。これらを正しく唱え、冬翼様を正しく迎え、歓待し、お気持ちよく北へお帰りいただかねばならない。お迎え役はそうした儀式を整える役目だ。ここ何十年かはゼルダ婆がこの役にあったが、ウィリスが選ばれた今、その手順は正しくウィリスに伝えられねばいけない。

「まずは覚えること。意味はやがて分かる」

 ゼルダ婆はそう言うが、意味の分からぬ祝詞を暗記させられるのは大変だった。
 それでも、節をつけて謡えるようになると、何となくすっと落ち着いてきた。
 お集いの祝詞を謡ったときなど、雪原の向こうで雪狼が答えるように吠えたものであった。

 そうして春が来る。
 雪解けの少し前、ゼルダ婆とウィリスはお送りの祝詞を謡いながら、村中を歩き回った。

「なれの妹背は、こにあらじ。吾郷は北に、吾郷は北に」

 どうやら、冬翼様は愛する人を探して、毎年北から南へとさすらっておられるらしい。ここにその方はおられないので、北の故郷にお戻りなされよ、という意味のようだ。

 祝詞巡りは村にとって春の先触れだ。
 祝詞の声が響くと、家々から子供たちが飛び出してきて、婆の後ろについて歩く。その後から大人が出てきて、干し芋を配る。蒸した甘藷を薄く切って干すと甘みが出てくる。子供たちの好物である。
 甘根草を煮て、赤ワインを混ぜた赤湯を出してくれる家もある。まだ寒い外気の中でもぽかぽかと甘い飲み物である。
 村長のトレルさんは見栄を張って、この日のために取っておいた砂糖菓子の粒をくれる。
「ひとりずつ、ひとりずつ」
 村長の奥さんが押し寄せる子供たちに向かって叫ぶ。
 いつもならば、ウィリスもあの中にいて、砂糖菓子をなめていたはずだったが、祝詞巡りの先頭で、ゼルダ婆と一緒に謡う役だったので、砂糖菓子も干し芋ももらえなかった。赤湯を少しなめただけ。
「これがウィリスの分だよ」
 ポケットに小さな袋が押し込まれた。
 謡いながら、振り返ると、メイアがいた。ありがとうと手を振ると、彼女は、くりくりした茶色の目をぱちぱちしながら、歌に合わせてわあっと跳ねた。

 祝詞巡りはそのまま村を三周して、最後に冬翼様の祠まで行き、お見送りの儀式をする。ゼルダ婆とウィリスは祠の前で、お送りの祝詞を捧げた。歌が終わり、締めの言葉を奏上し、すべての儀式は終わる。
(……)
 頭を垂れたウィリスは誰かに呼ばれたような気がして、頭上を見上げた。

 三日月のような、鳥のような巨大な雲が、ただ一騎、空を北に向かって流れていった。

「冬翼様がお帰りになられる」
 ウィリスの背後でゼルダ婆が呟いた。
「さあ、今日の始末は終わりじゃ。広場で、村長が鍋を用意しておる。
 お前も遊んで来い」
 冬送りの祝詞巡りが終われば、大人たちは春呼びの野菜鍋を作って酒盛りをする。
 子供らも一日、手伝いを免除されて遊び回る。
 ウィリスも今日は一日、薬草すりから解放される。

 そして、振り返るとメイアがいた。

 春が始まる。
 これはまだ春が来た頃の思い出。
 永遠の冬が来る前の……
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 やっとメイアが登場。前回、女の子って書くのを忘れていた。ガースが悪友の男の子。
 祭りの話は書いていて楽しい。
 先日、図書館で見つけた「里神楽ハンドブック」を読んでもいないうちに書いてしまった。あれあれ、順番が違うぞ。まあ、いずれ、『真・女神転生X』あたりのネタで使おう。
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●締め切り中
 色々締め切り中。決着がついたあたるから報告しますので、それをお楽しみに。
 『金剛神界』は目処が見えてきたが、シナリオとか残っている。ディベロップ作業もあるので、もう少しかかる。さて、これ、一冊におさまるのかな(笑)。
 『比叡山炎上』も平行作業中なので、大騒ぎ。
 あと、アレが飛んできたら、すさまじいことに。
 傍ら、企画書が書き直しになったり、ならなかったり。

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October 16, 2005

永遠の冬4:雪狼

 暖かな日差しの中でしか咲かぬ花があるように。
 川辺の水の中でしか生きられぬ魚がいるように。
 雪狼は冬の寒風の中でしか生きられぬ。
 そして、それゆえに彼らは飢え、獲物を殺す性を背負う。

 9歳の冬。
 ウィリスはゼルダ婆の家で薬草をする日々を過ごすことになった。
 婆に預けられたウィリスはまず、婆と山を歩いて薬草の名前を教えられた。雪の降る前に、野草と薪を集めておかねばならないから、背負子を背負い、籠を腰にぶら下げての山野行である。
「あれが野蒜、あれが大蒜。いずれもうまいし、精がつく」
 食べられる草、食べられない草。
「紅天幕は食べられぬ毒茸じゃが、干して粉をひとかけ溶かした茶は、吾郷(あごう)病の発作を止める」
 毒々しい赤い茸。父には近づくなと言われたが、婆は厚手の手袋でそれをすいと掴み取る。
「吾郷病?」
 ウィリスは初めて聞く病気の名前だった。
「流刑地に多い、心の病じゃ」
 ゼルダ婆は腰の籠に茸を入れながら答える。しかし、これまたウィリスには分からない言葉だらけ。
「るけい?」
「悪いことをするとな、その地から追い払われ、遥か遠い鉱山や山野で働かねばならぬのじゃ。
 戻ることもできぬ者の中には寂しさに負けて、気狂いになってしまうものもいる」
 ゼルダ婆は曲がった腰をぐいっと伸ばし、山の斜面の向こうに見える峠を指差した。
「峠の向こう側、ミネアス様の荘園もそうじゃ。
 あちらを流れるゴズ川は砂鉄が出る。流刑の者はひなが一日、河で砂鉄掘りじゃあ」
 砂鉄掘りが何をどうするのかは分からないが、ずいぶんと怖そうに聞こえた。
 谷を出たことのないウィリスにとって、峠の向こうは見知らぬ土地だった。ミネアス様の荘園すら、このグリスン谷からは歩いて三日はかかるが、ウィリスはそこに通じる峠にさえまだ行ったことがない。
「峠の向こうは……」
 言いかけたウィリスの頭を婆の手が優しくなでた。
「怖がることなどない。いずれ、お前もあの峠を越える」
 ゼルダ婆の言葉は獣のうなりにさえぎられた。
 婆はさっと周囲を見回しながら、ウィリスの腕をつかみ、近くに引き寄せた。
「熊かね? 獣避けのまじないはしたんだが……」
 婆は呟き、懐から小袋を取り出す。
「ラージェレ様のご加護のあらんことを」
 うなり声のした藪のあたりから、ぞっとする寒風が吹きつけてきた。急に寒くなって、ウィリスはがたがたと震えた。
 しかし、その寒風に、ゼルダ婆は微笑んだ。
「……そこまで……」
 婆は呟くと、ウィリスに振り返った。
「ご挨拶の用意を。御使いじゃ」
「御使い?」
「冬翼様の御眷属様じゃ」
 婆は籠と背負子を地面に置き、自らも地面に座り込んだ。
 ウィリスも慌ててそれに習う。
 その間も藪から吹き付けてくる寒風はさらに冷たいものとなり、ちらりちらりと雪の欠片を含むようになった。
「御顕現を」
 婆が叫ぶと、藪から吹き出ていた寒風はすっと渦を巻き、白い風雪が一頭の巨大な狼に変じた。白い、白い雪のような狼であった。
「雪狼だ!」
 ウィリスが驚いて叫び、婆の袖にすがった。
 雪狼は恐ろしい冬の魔性である。雪狼は吹雪とともに村に忍び込み、人を凍らせてしまう。グリスン谷の子供たちは皆、親から聞かされて知っている。
 しかし。
 ウィリスは婆の袖にすがりながら、雪狼から目を離せないでいた。
 その毛皮は雪のような純白、その瞳は空の青。
「綺麗だ」
 ウィリスは婆の袖を離し、1歩、前に出た。
 吹き付ける寒風はさらに厳しくなり、顔に雪片がはりついたが、気にせず、雪狼に近づいた。
「ようこそ、お出で下さいました」
 婆が後ろからささやく。お迎え役の口上だ。
「ようこそ、お出で下さいました」
 ウィリスがつっかえつっかえいうと、雪狼もまたお辞儀をするように頭を上下に振った。
 そして、雪狼も1歩前に出た。
 冷たい吐息がウィリスの顔にかかったが、もう気にならない。空の青に染まった雪狼の瞳がウィリスの目を捕えて離さなかった。
「お出迎えを感謝する」
 澄んだ、そして、同時に重たい声がウィリスの頭に響いた。
 そして、次の瞬間、雪狼は冷たいつむじ風に代わって消えた。ウィリスの全身を冷たくもやさしい手が何本もなでていき、最後にぎゅうと抱きしめていった。それは氷のように冷たかったが、ウィリスは気にならなかった。まるで母の抱擁のように優しいものに思えた。

 最初の冬はそうして始まった。
 永遠の冬がやってくるのはまだまだ先の話である。

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まだ冒頭部分がしばらく続く。どのくらい長くなるかは分からない。
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以下は今日の日記

●毎日書けと彼女は言った。
 講師の同僚であるMIDI氏のBlogのタイトル。ああ、いいセンスだなあと思う。

●BLOOD+
 丁寧な作り。ビデオ版を見ている身としてはこの丁寧さが素晴らしい。

●夫婦の会話
 夫「イアイア」
 妻「ハムスター」
 娘「……(呆れている)」
 夫「暖かい家族の会話ではないか?」

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October 15, 2005

13歳からのゲームデザイナー

 ……小説をUPしたところで、少し、ゲーム学校絡みの話を書く。

 バンタン電脳情報学院で、非常勤講師をするようになって何年か経つ。すると、時折、PTAの知り合いとか、知人とかから、子供がゲームデザイナーになりたいという質問をされる。小学生とか、中学生とかで将来何になりたいか?と先生に聞かれたとき、「ゲームデザイナーになりたい」とか「ポケモンを作りたい」とか答えるようだ。村上龍の「13歳のハローワーク」がもてはやされて以来、中学生の総合教育で職業について調べたり、体験学習をしたりということも増えてきて、バンタンを見学しに来る中学生も結構いる。

 ……という訳で、子供に「ゲームデザイナーになりたい」と言われたときにどうすればいいか? という話を少しずつ書いておこうと思う。これも、「永遠の冬」同様、仕事の暇を見ての連載になりそうだが、忘れないうちに書いておきたい。いずれどこかで本にしたいとも思う。

●最初の1歩 ~ ゲームデザイナーになるための努力
 この連載をするひとつの理由は、毎年の生徒の質を維持したいためだ。

 ゲームデザイナーになりたい中学生およびその父兄が、実際、このBlogにたどり着くかどうかは分からないが、僕なりの情報をネットの中に放流しておきたい。幸か不幸か、その情報と出会った人が判断してくれればいい。

 もしも、今、どこかの中学1年生が僕に「ゲームデザイナーになりたいんですが?」と聞いたら、私は三つのアドバイスをします。

【1】海外の推理小説を読みなさい。とりあえず、アガサ・クリスティーか、シャーロック・ホームズを全部。
【2】運動をしなさい。学校のクラブでも、朝のジョギングでもいいから。
【3】お父さんと一緒に映画を見なさい。毎月最低1本。君の好きな映画を見たら、次はお父さんの好きな映画にあわせること。彼氏、彼女がいるならば、その人とも同様に。

 好きなゲームを沢山やりながら、この三つをこなし、そして、学校の成績がそこそこ取れるならば、可能性があります。
 【1】は文章を鍛える一つの手段です。ゲームデザイナーは非常にたくさんの本を読み、資料を書きます。RPGのシナリオは簡単に原稿用紙数百枚に達します。
 【2】は長く現役でいるために必要なことです。ゲームデザイナーは激務ですから、若いうちに体を鍛えておくとよいのです。
 【3】も勉強ですよ。たくさん面白い映画を見ることは、映像作品の度合いが強いゲーム業界では必須ですよ。アニメも古今東西の作品をたくさん見ましょう。

●父兄へ
 お父さん、お母さんは「ゲームデザイナー」になりたいと言い出した子供と一緒に、ゲームをしたり、アニメを見たりしてあげて下さい。あなたもたぶん昔はファミコンで遊んだり、アニメを見たりしていたはずです。
 ガンダムが好きだった頃を思い出して下さい。

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これも様子を見て、何か思いついたら、また書きます。

いずれ書きたいネタ。
・子供がコミケに行きたいと言い出したら……
・引き篭もる前にすること。
・親子でガンダムを語ろう。
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以下、専門学校関係の日記

●リサーチに関するメモ書き

 昨日の授業のレジュメ代わり。
 物事の調べ方。

【1】一般概念の確認
 事典、入門書、インターネット検索などで一般的にどう知られているかを確認し、基礎用語を把握する。
 インターネット検索の場合、最低20サイトをチェックすること。

【2】基本に帰れ
 一次資料を確認する。例→アトランティスの場合、一次資料はプラトンの『ティマイオス』と『クリティアス』
 何が一次資料で、何が二次資料かを確認すると、今まで読んできた資料の価値が評価できる。

【3】流れの把握
 研究史の確認と、時代による評価の違いを把握する。
 その時代だから、発生する評価の背景を読む。

 例→ ムー大陸仮説が高く評価された理由のひとつは、第二次大戦前夜、太平洋の覇権をアメリカや日本に認める仮説であったことから → 関連:ナチスのアーリア民族優生説

●『喇叭』を読む・続編
 1年生の企画科とライター科に「実験小説 ぬ」より『喇叭』を読ませる。
 この作品は、その中のクイズに反応するかで大きく分かれる。読者が能動的にクイズを解こうとした場合のみ、この作品は面白い。作品とは、読者と反応しあってこそという好例。

 期末課題の小説に関する進捗報告。やはり幕末、戦国、第二次大戦期が多い。ほほぅ。鎌倉初期も何名か。昭和初期の競馬話とかはなかなか楽しそうだ。

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永遠の冬3:発見

 雲はただ流れてくるだけではなかった。
 雲はただ見上げられるだけではなかった。
 雲は決して降りることのできぬ地上を見下ろし、失われた半身を捜し求めていた。

 9歳の秋。
 ウィリスは野菜畑でそれに気づいた。
 見上げた青い空に、巨大な鳥が飛んでいた。また、北からやってきた雲の翼だ。
「父上!」
 ウィリスは、畑で叫んだ。
「冬翼さまが!」
 畑で芋を掘っていた父親が空を見上げた。
「ああ、もうそんな季節か?」
 そこで、父親は目を丸めた。
「ウィリス、今年もお前が見つけたか?」
 父親のがっしりとした手が少年の肩を優しく抱いた。
「うん!」
 少年が誉められたと思い、元気に返事をした。
「去年もお前が一番最初に冬翼様を見つけたな」
「一昨年もその前も!」
 少年は嬉しそうに答えた。
「4年続けてか。目がいいのかも知れぬな」
 父は腰を下ろし、少年の顔を真正面から見た。少年の瞳をじっと覗き込む。なぜかその父の瞳には暗い影が宿っていた。
「父上」
 少年はその変化を見取って、弱弱しい声を上げた。
 父親は空を仰ぎ、ふーっと息をついた。頭上には、冬翼様の大きな白い翼が浮かんでいた。父はその三日月のような、鳥のような雲塊に視線を向けた後、少年のほうに向き直った。
「ウィリス、お前はこの谷が好きか?」
 唐突な質問だった。
「うん」
 少年はそう答えねば、とんでもないことになるような気がした。
 だいたいウィリスは谷以外の場所など知らない。グリスン谷で生まれ、グリスン谷で育った。今、やっと9歳だ。知っているのは谷とその周囲の山野だけ。一番遠出した先が、あの白の石碑だ。ガースの兄は峠の向こう、ミネアスさまの荘園で働いているというが、それがどれほど遠いかはウィリスには分からない。
「あ、あの、父上」
 少年は泣きそうになった。
 父は無言で少年を抱きしめた。
 しばらく、そうしていてから、こう言った。
「お前は目がいい。その目を生かすにはこの畑は狭いかもしれない」

 翌日、ウィリスは父とともに村はずれのゼルダ婆の家を訪れた。
 ゼルダ婆は薬草師だ。傾いだ家の軒には得体の知れぬ薬草がたくさんぶら下がっていた。屋根の煙出しから上がる煙も、なにやら赤みがかって不思議な感じであった。村の子供たちは風邪を引いたり、腹を下したりすると飲まされる苦い薬と同じ匂いがするので、ゼルダ婆の家にはあまり近づかなかった。
「婆、いるか?」
 父親は土産代わりの川魚を手に、婆の家の扉を開けた。
「ああ、おるよ」
 ゼルダ婆は、部屋の真ん中に座り込み、すり鉢でごりごりと薬草をすり潰していた。傍らの鍋では赤みがかった汁で一杯の鍋がことことと煮えていた。
 しわしわの顔の婆は細目で、父親の影に隠れたウィリスを見つけ、にこりと微笑んだ。もはや歯の1本もない口元が緩んで、笑い声とも吐息とも言えない音が漏れた。
「どうした、ウィリス。腹でも下したか? それとも……」
 ゼルダ婆はそこで声を切った。
「まあ、中に入れや」
 婆はすり鉢を横にのけた。
 父親はウィリスを婆の前に押し出しながら、言った。
「昨日、ウィリスが冬翼様を見つけました。今年で4年目です」
「そうか、そうか、目がいいのぉ」
 婆はそう言ってウィリスの顔をなでた。
「すこぉし婆に目を見せてもらえるかな」
 ウィリスは目を見開いた。
 婆はウィリスの顔を両手でつかみ、自分の正面にすえさせると、普段は細目にしか開けぬ右目をかっと開いた。
「婆!」
 ウィリスは驚いて叫んだ。
 婆の右目が青みがかった銀色だったからだ。
 この村の者の瞳はほとんどが青か緑だ。婆の銀目は人の目には見えなかった。
 少年は顔を背けようとしたが、もう遅かった。婆の目が瞳の奥に入り込み、そのまま、ウィリスの頭の中まで飛び込んできたからだ。

 白い白い三日月のような雲。
 あるいは、鳥の翼のような雲。
 それは冬の先駆け。

「なるほどのぉ。お前は選ばれたのじゃ」
 婆は呟いた。
「冬翼様の迎え役に」
「迎え役?」
 少年にはまったく訳の分からない話だった。
「いずれ、お前は冬翼様を出迎えるという役目を担うことになりじゃろう。名誉なお役目じゃ。
 今はまだ分からぬじゃろう。
 だが、その時まで修行が必要じゃな。しばらく婆が預かるが、いずれ東へ修行に出す。
 よいな」

 少年は見出され、その時に通じる道を示された。
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昨日のさらに続き、少年の道の始まり、まだ物語の核心は遥かに遠い。
この物語は少しずつ書かれる予定。
その時、その時の仕事との兼ね合いで時に、間があくこともあれば、突然、別の連載が始まるかもしれないが、まあ、あくまでも日記Blogなので、気長にお付き合いいただければ幸いである。
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October 14, 2005

永遠の冬2:白の戦姫

 その人は石の中で待っていた。
 近づいてはならないと言われた、深い森の奥。
 そして、僕らは出会った。

 7歳の夏。
 ウィリスは、森の奥で誰かの声を聞いた。
「……誰か? いる……」
 少年は、ガースに向かって投げようとしていた落ち葉の塊を取り落とし、振り返った。森の木々しか見えない。ここは谷から少し上がった森の奥だ。近くにいるのは幼なじみのガースとメイアだけだった。大人の姿はなかった。
 薪拾いをする村の大人にくっついて森にきたのは、薪と茸を拾って帰るためだったが、子供らにとって、茸探しはかくれんぼや悪ふざけの合図も同然だ。
 そうして、大人から離れ、落ち葉の塊をばらまいて遊んでいたのだ。
「……誰か? いる……」
 少年はもう一度、森の奥に向かって問いかけた。
 声は帰ってこなかった。
 木々の間の闇が少し濃くなったような気がした。
 頭上でさわさわと木の葉が音を立てた。少し風が出てきたかもしれない。

 気づくと、板のように屹立した石の前に立っていた。
 もとは恐らく真っ白であったのだろう石が、森の真ん中に立っている。表面は磨かれた玉のように滑らかだった。
 まるで谷川で取れる小石のようだな、とウィリスは思った。
 初めてみるものだったが、この石のことは知っていた。村では「白の石碑」と呼ばれている。はるか昔、妖精騎士様が、悪い魔族の王を倒した記念に立てたという。今でも毎年、春になると妖精騎士がここにやってくると言われている。だから、近づいてはいけない場所だった。
 しかし、ウィリスは少しも怖いとは感じなかった。
 きれいだな。
 素直にそう思った。

「ふふ」

 鈴を転がすようなかすかな声が響いた。
「うれしいわ」
 目を上げると、白の石碑の上にひとりの女性がいた。真っ白な鎧具足をつけ、毛皮の帽子を被った勇ましい姿ではあったが、ウィリスには彼女がとても美しい若い女性であることが分かった。
「あ、こんにちは」
 ウィリスはぺこりと頭を下げた。
 どこかの貴族の姫かと思ったからだ。
「見えるのね」
 女性はウィリスを見つめた。
 彼女の青い瞳がすーっと深くなった。
「ここは禁忌の場所。もう帰り」
 ウィリスは彼女の言葉に従うしかなかった。
 村へ戻る方向へ走りながら、再び、石碑を振り返った。
 もはや彼女はいなかった。

 ウィリスは彼女の話を誰にもしなかった。なぜか、話してはいけないような気がした。

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昨日の続きその1.
まだまだ物語の始まり。
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●映画
 昨日、テレビ東京で「光る眼」を見た。
 クリストファー・リーブス追悼ということであるが、マーク・ハミルとか、マイケル・ペレとか、懐かしい俳優が色々出ている。ああ。

●ネタになりそうなニュースメモ
 読売新聞12日朝刊より。
 中国黄河流域の遺跡より、中国最古の麺が発見された。恐らく洪水で埋没したものらしいが、紀元前2000年頃とされる。
 しかし、麺って残るもんかね? 日本のご飯とかが残るとは思えない。

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October 13, 2005

永遠の冬1:晩秋の雲

 雲が空を渡っていた。
 三日月のような、あるいは、巨大な鳥のような、巨大な雲。
 あるいは、雲のように巨大な一羽の鳥。
 それは悠々と青空を飛んで、また今年もやってきた。

 5歳の秋。
 ウィリスは野菜畑でそれに気づいた。
 見上げた青い空に、巨大な鳥が飛んでいた。北からやってきた雲の鳥。
「父上!」
 ウィリスは、畑で叫んだ。
「空に大きな鳥が!」
 畑で芋を掘っていた父親が空を見上げた。
「ああ、もうそんな季節か?」
「父上、あれは?」
「冬翼(とうよく)様だ。もうすぐ、冬だとわしらに教えてくれるのだ」
「冬が来るのか?」
 少年は呟く。
 バッスルの西、広大なロクド山系の冬は長く厳しい。ウィリスの一家が住むグリスン谷は、その只中にある開拓村だ。谷の実りは豊かだが、冬には万全の備えをしなくてはならない。雪が降る前にやるべきことは数え切れないほどある。
 父親は立ち上がり、少年の側に寄る。
「そうか、今年はお前が見つけたか?」
 父親のがっしりとした手が少年の肩を優しく抱いた。

 それはまだ永遠の冬が来る前のこと。
 ウィリスが目覚める前のこと。

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 「深淵」のバックストーリーの一環を思いついたんで、忘れない内に、小説めいた書き込みを残しておく。暇を見て、続きを書く予定。
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●コミック
公家侍秘録4 高瀬理恵
 徳川時代、京都で貧乏生活をする公家、日野西家に仕える青侍、天野守武の話。
 基本的に、数寄物ネタの多い人情話であるが、公家の関係が多いのが特色か。

ほしのこえ  原作:新海誠 漫画:佐原ミズ
 伝説の自主制作アニメをベースとしたコミック。異星生命体との接触が始まった近未来。中学3年生のミカコとノボルは同じ高校を目指していたが、ある日、ミカコは国連宇宙軍に選抜され、宇宙へ行くことをノボルに告げる。光さえ一瞬では届かない距離の前に、宇宙と地上で行き来するメールは、やがて、間隔を置くようになり……。
 原作のイメージをそのままに描ききった一冊。

●今日の一言
『キノの旅Ⅸ』「作家の旅」を読んで

 絶望する知性より、なお進む蛮勇を。

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October 12, 2005

続・ゾンビ古今東西

火曜日は学校。
なぜか、生徒とゾンビ古今東西の続きが始まる。

朱鷺田「古今東西、ゾンビと言えば?」
生徒A「くさったしたい」
朱鷺田「……ドラクエかあ~」
生徒B「バラモスゾンビ」
生徒A「ドラゴンゾンビ」
朱鷺田「……なんとかゾンビは果てしなくあるな。ゾンビ・テンプレートを足しただけの奴はちょっとおこう」

生徒A「ギガゾンビ」
生徒B「……名前だけだし。『のびたとドラえもんの日本誕生』だったかな」

生徒A「ナナシ」
朱鷺田「……メルヘブンか?」
生徒A「(戯画のサイトを検索しつつ)デュエルセイバーのヒロインのひとり、ゾンビで魔法学院の地下にすみついた「脳みそつるつるのお気楽ゾンビ」。攻略可能です!」
朱鷺田「……ああ、ヒロインの首が転がっているぅぅぅ」

生徒A「腐り姫」
朱鷺田「本当は死んでいるはずのヒロインというと、ぐっと幅が広がるな……屍姫もそうか?」

生徒B「フランケンシュタイン」
朱鷺田「一応、それは製作者。フランケンシュタインの怪物が正しい。
 死体から生まれる人造人間を入れるとぐっと増えるな。ゾンバイオとか」
生徒A「またクトゥルフですか?」

生徒C「ゾンビ屋れい子」
朱鷺田「そういや、ゾンビちゃんっていたよな?」
生徒B「If? ペルソナ?」
生徒A「ペルソナにゾンビナースがいませんでしたか?」
朱鷺田「結局、メガテンに戻る」

 この授業はフィクションである。
 まあ、こういうこともしている。

***追記 本棚を見て、「グレイトフル・デッド」と「痣丸」を追記しておく。

●実験小説ぬ
 古今東西ばかりしている訳ではなく、ライティングの授業は「コラムを書いて添削し、短編小説を読む」の繰り返し。基本的に国語+企画実習ですね。
 今週のテキストは朝暮三文の「実験小説 ぬ」から「喇叭」。
 変な小説の好例。
 でもね、あの本の前半では一番まともなんですよ。

 定年退職した工場長が豆腐屋の喇叭を夢見つつ、謎のクイズに挑むという話。
 単行本タイトルの「ぬ」はこの作品の三問目から。
 「このへん」って、あのぉ。

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October 10, 2005

世界一高い橋

 雲海を走る橋のCMを見た。

 最初はCGだと思っていた。
 幻想的な、あるいは、未来的な風景だった。
 手垢のついたサイバーパンク風でも、古臭い手塚風でもない未来の風景。
 あれほど高い場所を車が平然と走れるはずがないと思っていた。
 (高さ300m以上。落ちたら、絶対助からない)

 ところが、実写だった。
 昨年完成した、世界一高い橋「ミヨー橋」だという。どうもニュースを見逃していたらしい。気になって、検索したら、多くのBlogが昨年、12月に言及していた。
 そして、映像がすごく綺麗だった。

 ここを舞台にした冒険もいいな。フランスなので「ブルーローズ」向きかな。

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October 09, 2005

ゾンビ古今東西

ある打ち合わせの風景

朱鷺田「古今東西、ゾンビと言えば?」
朱鷺田「ヴードゥー」
編集 「ロメロ」
朱鷺田「リビング・デッド」
編集「オバタリアン」
朱鷺田「キョンシー」
編集 「テンテン」

朱鷺田「……個人名っすか!」
編集 「キョンシーって言ったらこれでしょ!」
朱鷺田「年、分かりますね。続けましょうか?」

朱鷺田「古今東西、ゾンビと言えば?」
朱鷺田「トケビ」
編集「リッチ」
朱鷺田「……TSRオリジナルモンスターかあ」
編集「……AD&D育ちなので」
朱鷺田「じゃあ、私は立場上、ボディコニアンと言わねばなりますまい」
編集「スケイズ・ゾンビでは?」

朱鷺田「あれは傷だらけなだけで、同じゾンビなので。
 『真・女神転生』ネタだと、この後、

ゾンビコップ、
ゾンビアーミー、
レディゾンビ、
ゾンビプリースト、
ゾンビドッグ、
コープス、
デプス、
インフェルノ
コスモゾンビ
 
 まで行きますな。
 少し幅を広げますか? アンデッド系は全部OKということで」

朱鷺田「古今東西、ゾンビと言えば?」
朱鷺田「スケルトン」
編集「ヴァンパイア」
朱鷺田「グール」
編集「……結局、ラヴクラフトに」
朱鷺田「まあ、世界はクトゥルフ神話に帰すということで。
 食屍鬼系を入れると、ビシャーチャとか、ヴェータラとか、魍魎までいきますね」
編集「ガキとかは?」
朱鷺田「幽鬼系も悪霊系も全部入りますね。メガテンは判断基準の山だなあ」
編集「じゃあ、そういうことで」

 この打ち合わせはフィクションです。
 でも、似たような会話はしたなあ。
 あの企画はどうなることやら。

 さて、他にどんなゾンビがいるかねえ。

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October 08, 2005

日々雑記:BLOOD+ほか

 ダンッ! ダンッ! ダンッ!  
 打ち下ろすように、倒れたグールに弾丸を打ち込む。
 一発では倒せないから、確実を期して三発。
 38口径でも連射すれば、反動は馬鹿にできない。銃把を握り締めた右手の手首部分に左手を添えてブレを押さえる。
 周囲に軽く視線を飛ばした後、ゆっくり下がりながら、ジッポに火をつけて、グールの腹の上に落とす。
 グールの類はしぶといから、気を抜くと後で背中を襲われる。一匹一匹確実に殺さなければいけない。
 動きはない。
 完全に死んだようだ。
「ふーーー」
 深い息をつく。
 どうやら、知らず知らず息を詰めていたようだ。
「戦いの間、呼吸を止めるな。
 呼気を乱すとリズムが崩れる」
 背後から相棒の声がする。
「獲物は手に入れた」

 俺たちは、砕けたガラスを踏み越えて、原宿の路上に出た。
 ひび割れたアスファルトの道路に人影はない。振り返ると、ラフォーレの文字が飴のようにねじれたまま、壁に張り付いている。
 アレから10年、俺たちはまだ生きている。

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 仕事をしながら、発作的にアクション・シーンを書いてみる。
 打ち合わせに向かう途中の道で、空想上のS&W38を掌に隠したまま、ハウス・エントリーの姿勢を取ろうとするのは少々病気かと。その上、4mの高さにセイタカアワダチソウの茂った休耕畑を見て、中を突っ切りたい欲望に狩られる。
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●BLOOD+
 OVA版を踏襲したアクションと、丁寧な演出、ホラーのギミックはさすが。
 土6という言葉が生まれるほどの人気アニメ枠であるが、予想通りの過激な展開である。
 「ファーストキス」というタイトルで、V:tMの「抱擁」みたいな感じになるのかなあ、とTV版「KINDRED」を思い出しておりましたが、流血のキスとは予想を超えていた。
 次週、覚醒というあたりで期待期待。

●日本における正気度
 金曜日夜、アーカム・メンバーの飲み会に乱入。クトゥルフ話を色々してくる。しばらく色々話をしているうちに、するりと私の口からひとつの言葉が出た。

「戦国日本における正気度は、仏教準拠で」

 もともとの「クトゥルフ神話TRPG」の正気の概念には、ラヴクラフトのキリスト教的な倫理観が影響している。だから、アジア的な多神教というだけで禍々しい。
 しかし、戦国日本織田政権期となれば、キリスト教倫理は伝来したばかりの異端思想である。「正気」の基準になどならない。さらに、日本に来ている伝道士たちは、戦闘的な姿勢で知られるイエスズ会であり、困ったことに、ポルトガルの覇権主義の尖兵を兼ねている。極端な言い方をすれば、侵略国家の偵察部隊であったりする。

 そういう訳で、「比叡山炎上」での正気度をどう定義するかは問題だった訳でしたが、この時、先ほどの定義がするりと出てきたわけですな。
 ああ、多分、これでよいのだと思います。
 仏教というと大雑把だけど、本地垂迹説も神仏合一も含めて、日本的な大乗仏教が基盤としましょう。言い方を変えると、比叡山が根本道場である仏教が基本ということで、正気度のちゃんと残っている人は、どうあっても比叡山をまるごと焼いちゃうとか思いつかない。何かの理由で、正気度が減ってしまった信長様だからこそ、比叡山を焼くという「正気」の否定が出来てしまうのだなあと。

●味噌がうまい。
 味噌ラーメンの塩気がしみこむようにうまい。
 ああ、疲れてますが、もうひとつ頑張ります。
 「金剛神界」はミレニアムを爆走中。

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October 06, 2005

日々雑記:ロケットレースとか

 「南極日誌」のCMを見るたびに、「恐怖の山脈」という言葉しか浮かんでこない今日この頃、いかがお過ごしでしょうか? あるいは「遊星からの物体X」

●ロケットレース
 速水螺旋人さんの日記で知る。
 えー、キャプテン・フューチャーで育った人間としては、これこそ未来! これこそSF!
 実際にやっちゃうあたりがアメリカ人だよなあ。
 シャトル見直し発言とか、ISSからアメリカ撤退の危惧とか色々ありますが、こういう民間の力で具体的に科学技術の成果が見られるというのはいいなあ。

 そうしてロケットレースですが、RPGのシナリオにしたいのぉ。
 私的には「パラダイス・フリート」でやって欲しいが、速水螺旋人氏の新作「カットスロート・プラネット」にも期待したいところ。あの人はネーミング・センスがよいのである。

 そう言えば、元ライブドアの人が、シャアのコスプレでロシアから宇宙に行くという話もあったね。

●デミナンディその後

 昨日、デミナンディの話を書いたら、天使からお告げがあった。(正確に言えば、友人からメールがあったのだ。ありがとう)

 「真・女神転生Ⅱ悪魔大事典」を見よ。

 鈴木さんが悪魔解説をしている本ではないか? 何度も読み直しているはずなのに、忘れているとは、脳の容量が不足気味ではないのかな? 

 デミナンディ1頭で、1100人分のデミナンディ・ステーキが取れる。
 ミレニアム内部には、「ドナドナ・バーガー」や「マク・ナンディナルド」などのデミナンディ・ハンバーガー・チェーンが展開し、市民のエネルギー源となっているという。ファストフードのハンバーガー屋が基準食料になっている感じは妙にディストピアっぽくていいな。
 インド神族に対する涜神行為(呪詛)を兼ねるということは、メシア教会の上の方々も率先して、デミナンディ料理を食されているのであろう。元老院の百合のお方(誤解を招きやすい表現だな)がデミナンディ・バーガーを頬張る様子を想像して、萌えてみる。

 とりあえず、スパゲッティ・モンスター教に入信するところから始めるか。
 ラーメン!

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October 05, 2005

響き渡る歌声

●作業中、作業中
 ミレニアムに突入するとともに、アトランティス本の校正が飛んできて大騒ぎ作業中。

 「誰だ、こんなトンチキな本を書いたのは?」

 私ですよ、私。
 そんな訳で、デモノイドとミレニアムの食料事情を書きながら「デミナンディってうまいのだろうか?」と悩む。牛だからうまそうだが、ナンディは聖獣だから、食ってはいかんのでは?

●識別能力
 そう言えば、どこかの話で、最近の若い人の中には牛肉と豚肉の区別がつかない人がいると聞いた。本当だろうか? どちらかをあまり喰いなれていないとか?

 私? 吉野屋の牛丼と豚丼の区別はつきます。

●企画メモを書く

 昨日、アトランティス本の校正を受け取りがてら、編集さんに話した企画本の企画メモを書く。しゃべっているのと、脳内検索がほぼ同時進行であったが、まあ面白そうなので、版元に打診してみるそうな。
 雑誌ライター時代の名残か、企画を出せと言えば、二つ三つはとりあえずひねり出せる。まあ、企画書も色々書く。通るかどうかはさておき、編集さんに言ってみるのはタダだ(往々にして、タダでは済まないのだが)。

●響き渡る歌声

 ルルルールールルールルー。

 雑用を済ませて戻ってくる途中、甲高いような、くぐもったような声がいくつも合わさって響いた。
 どうやら角の向こう側から、誰かが歌いながらやってくるようだ。
 見えるのは中学生の少女たちだが、聞こえるのは妙に野太いバスめいた声。

 ルルルールールルールルー。

 よく分からない緩やかな声はどうも歌詞が聞き取れない。

 違和感で、冷や汗が出てくる。

 えーっと、これが「宇宙的な恐怖」って奴ですか?

 何で、私は東京郊外の田園都市で異世界の音楽に出会わなくてはいかないのでしょうか?

 やがて、角から現れた少女たちが今まで、おふざけで低く歌っていた声を解放した。
 「もののけ姫」だった。

●コミック
BLEACH 19
アニメも新OPになり、少しマイ・ブームが再燃しつつあるBLEACHの新刊。夜一VS砕蜂戦から、一護VS白哉戦。そして、雛森大ピーンチ。

D.Gray-man 6
 咎落ち編。悲惨なり。

イリヤッド 9
 アトランティスを追いかける考古学者の奮闘編ということでワッチ対象コミックス1号。
 マルタ編とベルリン編。
 少しスピードが落ちた感じだが、魚戸おさむらしいほのぼの話も。

●「花まんま」『凍蝶(いてちょう)』を読む。
 第133回直木賞受賞の連作短編集。都市伝説系のいい話である。オール読物9月号に3作掲載されていたので、その中の『凍蝶(いてちょう)』を昨日の授業で2年生に読ませる。
 昭和の頃の大阪で、仲間はずれにされた少年が、ある女性と出会う話。途中、夢歩きっぽい描写があったり、冒頭から「鉄橋人間」という都市伝説話がでてきたり、じわじわ来る短編だ。

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October 04, 2005

人があまた持つ予言の日だ

●「金剛神界」作業中。
 最終回を見たせいか、旧にSEEDが見たくなり、SEED後半26~50話をBGM代わりにする。大洪水とか、世界の再生とか、救世主とか書いている背景では、ラウル・クルーゼが叫んでいる。

「人があまた持つ予言の日だ!」

 ジェネシスはメギドファイアか。
 キラが呟く。

「僕たちはなぜこんな場所に来てしまったのだろうか?」

 『真・女神転生X』で、人はYHVHの最終計画を防ぐことができるのか?

●リプレイをもらう

 ある人から、『真・女神転生X』のリプレイを送っていただいた。
 楽しそうに遊んでいる。シナリオはオーソドックスなものであるが、気のあった仲間内のセッションゆえの暴走した発言もテンションを上げている。

 私にとって、こういう感じで楽しく遊んでいてくれるという反応は非常に嬉しいものである。
 力をいただいた。
 さて、もうひとがんばり。

 今日は「アトランティス本」の校正を受け取り、そのまま学校へ。
 ターム2(2学期)が始まるのだ。

PS:週刊ジャンプのBLEACHでは、若手死神6名がなぜか転入してきて暴れ始める。家族にその話をすると、

「更木剣八は?」

 いや、アレに学生服を着せると、色々やばい。

解説:更木剣八(ざらき・けんぱち):隊長のひとり。片目眼帯、顔傷だらけの豪傑型剣士。殺気と狂気をまとって歩く人間兵器、いや、ソウルソサエティの野獣。

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October 03, 2005

日々雑記:荒野のガンスリンガー少女とか、Destinyとか

●「金剛神界」作業中。

  「大破壊後」用の追加クラスを作りつつ、壊れかけたアイアンクラブに乗って荒野を走るガンスリンガー少女とか妄想してみる。脳裏に「銃夢」とか、「カーン」とか、「サクラ大戦」の最新作とかが舞って散る。最終的には機甲合体してモスピーダっぽくなるとか。いまだとアムドライバーかな? 
 対して、対戦車ライフル片手に、戦闘兵器や悪魔を狩る機甲猟兵とか。

 「TOKYOミレニアム」用の追加クラスはどうしようかね。ダレスやレッドベアを再現するためには、クラス「グラディエーター」が必要そうだが、「サマナー/格闘家」で再現できそうでもある。

●機動戦士ガンダムSEED Destiny 最終回
 結局のところ、レイ・ザ・バレルの物語であったのだ。

 世界の偏りを癒そうとしつつ、物語は家族に回帰してしまう。
 戦争を理解できぬまま戦っていた普通の男女//シンとルナマリア//は、月面//ルナ//に取り残されたまま、星空に散っていくメサイア//救世主//を見上げるしかない。

 世界システム//デウス・エクス・マキナ//と化し、キャラクターを剥ぎ取られていく大天使//アークエンジェルと完璧なる自由の騎士//キラとラクス//の前に、ミネルバ//アテナの智慧の梟//は月面に落下し、幼子//アーサー//に託される。お転婆姫//カガリの「ローマの休日」は完全に終わり、宝珠//Orb//の志士となる。マスコット化する銀と金は有明巡礼者のために温存され、すでにその魂は天上にあった。

 見えぬ決着はおそらく、デュランダル議長とタリア・グラディスの息子//第三部のことか?//に託されるしかないだろう。

★まとめの感想
 久しぶりに、ファンに戻って見たアニメである。裏の事情も色々あるのだろうが、その辺の現実が色々錯綜したアニメで、毎回、悲鳴を上げながら見せてもらった。翌朝の「エウレカセブン」がやたらまともに見える。
 その反動で、SEEDを何回見直したことか? 何度か入れ込んで、SEEDのTRPG企画書を書いては潰し、書いては潰している。
 色々な意味で面白かった。1年間苦労したスタッフの皆さん、お疲れ様でした。
 来週からは「BLOOD+」か。

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October 02, 2005

諏訪国未然記始末・再話

「諏訪国の内情を探り、諏訪大社の宝物である古文書を奪ってまいれ」

 今日は、学校の生徒が学内でTRPGコンベンションをするというので、ゲスト・マスター。作業の都合上、戦国クトゥルフを。シナリオは半村良風の「安土黄金城卍絵巻」とか、朝松健風味の「石山本願寺地下迷宮」とか、考えたのですが、リサーチ不足と、ネタがどんどんマニアックになって危険な香りがしたので、先日、プレイした「諏訪国未然記始末」をアレンジしながら、プレイすることに。

●シナリオ概要
 天文10年(1541年)、武田信虎(信玄の父)から、同盟国である信濃国の諏訪に潜入し、内情を調査、諏訪大社にある、聖徳太子の予言書「未然記」を盗んで来いといわれたPC一行は、御柱祭りに盛り上がる諏訪の街を訪れるが、祭りは暴走し、諏訪の街は空前の狂気に包まれていく。そして、諏訪の領主、諏訪頼重は危険な予言書「未然記」の呪縛に捕らわれ、未来を変え、自らの千年王国を築こうとする……。
 南蛮渡りの銀の笛(フルート)を吹く黒い人影(ナイアルラトホテップ)の陰謀によって、諏訪湖に封じられていた古代の邪神ミシャグチさま(ゲーム・データとしては、グラーキ)が目覚めようとしていた。4本の御柱が立てられたとき、ミシャグチさまは解放され、諏訪を中心とした邪神の千年王国が始まるのである。
 しかし、武田の密偵であるPCたちにそんな全貌など分かる訳もなく、狂乱の祭りの中へと巻き込まれていく。

●プレイ・レポート
 ゲーム学校の学内コンベンションなので、実はコアなファンが来る訳ではなく、参加希望者6名のうち、4名はTRPG未経験者である。クトゥルフ神話知識0%、戦国時代の知識は中学の日本史で終了、『戦国無双』と『信長の野望Online』の経験のみ。A4で4ページほどのキャラクター作成サマリーを作っていったが、ここでもうかなりパニック気味。

 キャラクターは戦闘特化の武士3名、うち二人、万猿と田畑が地位80%とやたら偉いので、武田24将に連なる甲斐での一、二を争う名家ということで、PCの指揮官に。もうひとり、しばむらが一応TRPG経験者の2年生だったので、この二人のお目付け役に。あとは、その配下で、案内役兼内情調査担当の狩人・太一、潜入担当の忍者・我茶王、占い&色仕掛け担当の道々の踊り子・菜月という分担に。

 キャラクター作成が終了し、OP代わりに、「天文10年、武田信玄の御父、信虎様の御世」とか説明を始めるが、ここで信玄の親父の話をし始めても反応無し。ネタばれはまずいが、信玄には反応してほしかったりもする。
 名家の武士2名が初心者の上、作戦立案に苦労していたので、「上海退魔行 ~新撰組異聞~」風に時間帯を整理し、ミニ・イベントを繰り返しながら、真相に迫っていく形式にする。

●初日
 諏訪入り直後、一の柱の逆落としに巻き込まれそうになる。諏訪の街はすでに祭りの熱狂の中に。
 旅籠に腰を落ち着けた後、ばらばらになって情報収集。
 踊り子の菜月は、正気度の下がった城主諏訪頼重に目をつけられ、しびれ薬入りの酒を飲まされ、あわやというところを、田畑の機転で救われる。
 一方、忍者「我茶王」は諏訪大社に忍び込もうとして、「忍び歩き」に失敗する。跳躍とか登攀とか、投擲は振っているのにね。
 湖畔を歩くお目付け役のしばむらは老婆から湖に近づくなと警告されるが、結局、初日の晩に、名家の武士1号こと万猿が、黒い人に遭遇し、湖の主に何か植え付けられてしまう。

●第二日
 昨夜の経験から、しびれ薬対策を立てる一行。
 二の柱も逆落としを経て、大社に建てられる。忍者はなぜか祭りの熱狂に浮かされ、柱の上に。その後、城への潜入に失敗、くのいちのシビレ手裏剣に倒れて地下牢へ。拷問されて心臓が止まったため、湖畔に捨てられてしまうが、あらかじめ血仙蟲を飲んでいたので、朝にはぐにょぐにょ復活。(どこがクトゥルフじゃあ!)
 代償として正気度がガリガリ削られ、暗所恐怖症の気が出たが、戻ってきたのでよし。
 諏訪の地図を作り終わった狩人の太一は諏訪大社の巫女まゆを垂らしこみ、ひとり美少女ゲーム路線に。
 万猿は体内に蠢く蟲に恐怖し、温泉で湯治。

●第三日
 もはやぐしゃぐちゃな状況で三日目突入。
 奉納相撲大会で田畑が善戦する間に、菜月が情報収集し、夜、城での宴会で古文書を見せてもらえることに。狩人は潜入作戦のために巫女衣装を入手すべく、NPC巫女とラブラブ・モードでフェイドアウト。
 一方、体内の虫に追い詰められた万猿は湖の主と決着をつけるべく、忍者とともに湖へ。本気で、主を呼び出してしまい、触手を2本切り落とす善戦を見せるが、さらに4本現れ、串刺しに。(死者一人目、合掌)

 恐怖に固まってしまった忍者は、何か植えつけられてしまう。

 夜になり、城主・諏訪頼重に自白剤入りの酒を盛って、古文書の秘密を聞き出した田畑と菜月だが、頼重は菜月を殺して予言書に自分の名前を書き足すとか言い出す。菜月は覚悟を決めて、頼重に抱かれ、時間を稼ぐことに。田畑は城を抜け出し、他のメンバーと合流、古文書を大社に持ち帰る神官を襲ってこれを奪い取るが、そこで、湖の主の魔力に引き寄せられ、抵抗する間もなく、主の餌食に。(死者二人目、合掌

 魔力を脱した我茶王、太一は諏訪の国境を目指す。
 ひとり、諏訪大社に戻ったしばむらは、魔力の源である御柱を切り倒そうとするが、神の怒りを買い、湖から飛んできた触手2本に貫かれ、死亡。(死者三人目、合掌)

 城に残った菜月は城主に抱かれた後、隙を見て逃げ出す(何度か切りかかられたが、幸運にも当たらなかった)
。国境で我茶王、太一と合流するも、ここで駆け落ちを約束した巫女、まゆを待つという太一と別れ、我茶王と菜月だけが武田信虎のもとに帰還する。
 かくして、「未然記」を手にした信虎は、菜月をながめ、怪しい笑いを浮かべる。

 武田家由来の古文書は語る。天文10年の信虎追放のことを、悪行三昧ゆえと。
 そして、信虎様を追放した武田晴信(後の信玄公)は、翌年、掌を返したように、同盟国諏訪を攻め、街を焼き払ったという。それが信玄の野心ゆえか、それとも別の理由があったかは今となっては分からない。

●感想
 プレイヤーが代わるとセッションもまるきり変わるという好例。
 ミニ・イベント形式は時間がかかるが、面白い。
 マルチタスク処理をしながらの力任せのマスターリングで乗り切ったので、家に帰った途端にダウン。
 年じゃのお。
 そうして、深夜に目覚め、Blogを書くのは割とダメな生き方かもね。

 さあ、明日は原稿、原稿。

**一部修正

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