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November 17, 2005

永遠の冬16:顕現

 それは始まり。
 それは終わり。
 それは……

 雪が舞っていた。

 ふわり。遠吠えの声とともに、雪狼たちが虚空から現れた。

(さあ、祈り、求めよ。我らが姫の顕現を)

 雪狼たちが空に向かって遠吠えする。
 ウィリスは立ち上がり、眼を閉じたまま、お迎えの祝詞を唱える。
 血まみれの大地を踏みしめ、舞の仕草を始める。両手を差し伸べ、ゆらゆらと複雑な弧を描く。
 ウィリスの祝詞に合わせて、雪狼が吠える声を上げる。
 雪狼の吠えるたびに、冷気が吹き荒れ、白い雪が舞い飛ぶ。

(この地を姫君に捧げん)

 それは約定の言葉。
 それは契約の言葉。
 それは開門の言葉。

(御顕現あれ!)

 ふわり。
 毛皮の帽子と白い鎧装束をまとったネージャが虚空から表れた。
 その手には青き氷の大槍。

「ウィリスよ、お迎え役ご苦労。
 これにより、汝は獣の王となる。
 これより、この地は我が領土。
 すべては《冬翼様》に」

 ネージャは微笑むと、目にも止まらぬほどの素早さで振り返り、その青き大槍を投じた。
 しゅっ。
 大槍は風を切り、鈍い音とともに、木々の間を突進してきた青白い騎士を軍馬ごと貫いた。騎士はたちまち霜に覆われた。
 怪物のような青白い軍馬はそのまま突進しようとしたが、やはり瞬間的に凍りついた足を踏み出した途端、足から、もろい陶器のように割れた。まず、踏み込んだ足が粉々に砕け散り、倒れていく胴体と頭がその後を追った。まるで水面に飛び込んだかのように、地面に激突したところから砕け散り、きらきらと輝く飛沫を撒き散らしていく。その飛沫がまるで水面を割ってできる波しぶきのようだった。
 騎士も、地面に叩きつけられ、陶器の人形のように砕け散った。

 それはずいぶんと静かな風景だった。
 悲鳴も血潮もなかった。
 ただ、かの呪わしき騎士は砕け散った。

 やがて、しんしんと降り続ける雪の中、ネージャは微笑んだ。

「もはや邪魔者はおらぬ。
 こここそ、冬の国。
 今宵より、永遠の冬が始まるのだ」

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反乱編終わり。
全体からすると、始まり。
まだ、書かれていないことがいくつもあるので、そのうち、続きを。
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