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December 23, 2005

永遠の冬18:風の旅

 一夜の夢だったならば、よい。
 一時の幻だったならば、よい。
 だが、それは……。

「村まで送ろう」
 ネージャは雪狼の群れを呼び寄せる。ゼルダ婆はためらわずに、雪狼の背にしがみついた。タグもそれに習った。メイアがためらっていると、ネージャがその手を取り、引き寄せた。もう片方の腕には意識のないウィリスが抱かれている。
「汝は我とともに」
 そうして、一際大きな一頭にまたがる。
 ネージャの外套が優しく、メイアを包んだ。

(暖かい)

 メイアは驚いた。
 雪狼の姫、と聞いて、その体はどれほど冷たいのか、その吐息はどれほど凍えるものなのか、と思っていたが、外套の中は心地よく、安らぐものであった。これならば、あの雪の中でも、ウィリスは大丈夫だっただろう。

「行け!」
 ネージャの声とともに、雪狼たちはざっと地を蹴った。
 そのまま、ふわりと浮かび上がる。

 ひゅうう。ひょおお~。風が鳴いた。

 雪狼は風を踏んで走る。
 その1歩、1歩が小さな雪片を撒き散らす。
 きらきらと陽光をはね返し、雪片が風に舞う。

「綺麗」
 メイアは思わずもらす。
「そうか」
 ネージャが満面の笑みをもたらす。
「お前もまた良き目を持つのか」

 風のように、雪狼は走る。
 風に乗って走る。
 風見山の麓から、尾根道を越え、グリスン谷へ続く斜面を一気に駆け下りる。

 逆落としの光景に、メイアはぎゅっと目をつむった。

 やがて、雪狼が歩みを止めた。
「ついたぞ」
 ネージャの声に、目を開くと、もう、ゼルダ婆の家の前であった。
 振り返ると、ゼルダ婆とタグを乗せた雪狼もたどり着いている。タグなど転げ落ちるように地面にへたり込んでいる。
 ネージャはメイアを下すと、その腕にウィリスを預けた。
「しばらく任せる。いずれまた会うことになろう」

 ネージャと雪狼たちは風に乗って舞い上がり、風見山の方角へと消えていった。
 季節外れの雪がグリスン谷の空に舞った。

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第三章第二話。
しばらくメイア視点の物語が続くかな。
永遠の冬に向かって、物語は続いていきます。
次回は来週の予定。
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