深淵:運命の幻視、運命の連鎖
●運命の幻視
「運命の幻視」とは、「深淵第二版」で投入されるギミックである。
「深淵」には、もともと「夢歩き」という独特のストーリー生成支援メカニズムがあるが、「運命の幻視」は、これを運命の決定に応用したシステムである。通常の夢歩きのように、手札に来た運命カードの中から好きな語り部欄のあるカードを出すことによって、それっぽい運命を入手できるというシステムである。流行のROC系ほどの融通はないが、おおよそのイメージで展開できるため、幻想性を加速できる。
例えば、【黒の翼人】「死は安寧。限られし命の者のさだめなり。拒むことこそ悪なり」を選ぶと、死者に関する運命を得ることができる。
もちろん、運命はままならないというのが、「深淵」のコンセプトであるので、トラップも多い。調子に乗ると、「語り部」を逆転させた運命に飛び込むこともある。
●運命の連鎖
運命の幻視は、キャラクターの背景を加速する。そして、それを読み解きながら、各PCの背景を編み上げていくのがキャスティングである。ここでうまく運命が連鎖すると非常に面白いゲームになる。
先日、滋賀お泊りCONでの実例を見せよう。まず、運命の幻視では、しばしば、それに先立って、今回のセッションについて解説する「予告編」を語る。これは各GMがシナリオやセッション・スタイルにあわせて、行っても行わなくてもよい。
予告編「国が滅ぼされ、PCたちは燃える街から脱出し、かつて英雄王ジェラールが住んでいた山上の城へと逃げていく」
最初のPC、弓兵は、これを受けて、「伝説」という言葉が入ったカードを選択、その結果、運命「妄想」を獲得した。伝説の英雄王に向かって暴走するキーワードである。さらに、「継ぐべき者が来る!」とばかりに「待機」(重要な誰かを待っている)という運命を得て、城の伝説に絡む要素を得た。
2番目のPC、盗賊は「冬の予感」という、アンニュイな運命を得た後、さらに「親殺しの予言」を獲得、「親と喧嘩してドロップアウトした街のちんぴら」というイメージを得る。
3番目のPC、少年はまず、「傍観者の記憶」を得る。これは行動しなかったがゆえに、悲劇を招いた過去があるというもので、少しだけPCの背中を押すものだ。細かい内容はもう一つの運命次第であるが、ここで引き寄せたのが「再会の予言」。重要なNPCと再会するというもの。
そのNPCの関係をさらに「運命の幻視」で選択すると「心変わり」。このあたりから少年の運命は加速する。これを拡大解釈し、かつて、心変わりして消えた恋人との再会の予言か。
では、その恋人の運命をもっと深く決めようといって、引き寄せたのが「教団からの脱出」。
彼女は、魔族教団に属し、教団から抜け出そうとしてあがいていたのである。
教団の候補をランダムに決めると、「獅子王教団」「ギュラニン党」「黄金の再生教団」。
ここで恋人のイメージが見えてくる。
「獅子王教団」だと、バーサーカーなお姉さん傭兵。
「ギュラニン党」ならば、感情を殺し、暗殺を行う無口系の少女。表向きの職業は商人の娘。
「黄金の再生教団」だと、顔を可愛いけれど、奇怪な異形を背負い、狂気に冒された異端者。
さすがに最後の異形が危険なので、ギュラニン党に。暗殺者の少女ならば、少年を偽り、心変わりして姿を消してもそれらしい。
そこで、「傍観者の記憶」へフィードバック。絡めるならば、少女の正体に気づきつつ、その行動(暗殺)を留められない……という話に。
この状況で暗殺されるというのは国の重要人物だね。
じゃあ、防衛軍を率いる英雄将軍で……
つまり、この国が滅びた元凶は少年?
第四のPC,吟遊詩人が「生き返った死者」で、太陽の盾騎士団から「任務」を課され、潜入したことに。
こうして、運命が出揃ったところで、各PCの関連NPCの整理。
盗賊にとって、いつか殺してしまいそうな父親だが、「敵対者」の運命を持ち、その敵対者は何かの罪で「追放」
されていた。そこで相談の上、少年の設定と関連付けることにして、少女暗殺者に毒を盛られたのは、盗賊の父ということになった。盗賊の父が軍の英雄ということはまさにドロップアウトらしい感じ。
その上、盗賊自身は、父殺しの予言をされてしまった身なので、英雄王の再来と言われる将軍の急病は、盗賊のせいだといわれる始末。
それはやる気も失くす、と、負け犬のロールプレイに精を出すプレイヤー。
隣で、妄想つきの弓兵が盛り上がるので、このギャップが素晴らしい。そして、何かあると落ち込む可哀相な少年とか。
いや、まだ、ゲーム本編は始まってませんが。
今回はこの少年のかわいそうっぷりとか、負け犬盗賊とか、ロールプレイが非常に楽しいゲームでありました。
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