雪の封印が晴れるとき
それは火龍が舞い降りるとき
●大分へ
昨日夕方、大分より戻りました。
以前、呼んでいただいた大分のコンベンションにて、「深淵第二版」のGMをしてきました。帰ってきたら、色々あって、今も、英語と格闘継続中です。それで少し遅くなりましたが、生存報告を兼ねて、レポをば。
大分へ向かったのは夜8時過ぎの羽田発のJAL機。ひさしぶりの夜のフライトで、離陸直後に窓から見下ろすと、東京湾周辺はギラギラと輝いている。自分の住んでいる街ではあるが、それは幻想的、いや、恐ろしいほどに明るい。サイバーパンク的な世界、SR4のNeo-Tokyo Sprawlはすでにここにあると実感させるものである。
到着したのは、北九州市小倉南区に出来た新北九州空港。九州と本州をつなぐ関門海峡の九州側、小倉のあたりにある。朱鷺田的には、高杉晋作が攻め込んだあたりという感覚。
そこから、車で南下し、大分へ。その晩は主催者の内田氏の家でクトゥルフで盛り上がる。
翌日、朝からコンベンション。大分だけでなく、宮崎からの参加者も含めて、10数名のアットホームなイベントである。午前中はボードゲームやカードゲームをしながら、エンジンを温める。「通路」「ゴキブリ・ポーカー」「人狼」を遊ぶ。
「人狼」は、ダ・ヴィンチ・ゲームズ版ではなく、四角いほう。自分が死んだら、他の誰か一人を倒せる「狩人」の存在がユニーク。こちらのバージョンは初めてだったので、なかなか興味深い。
●雪の封印と火龍
午後は「深淵第二版」のGM。
即興・渦型で、雪山に隠された魔族の封印を解きに行くというもの。なぜか、火龍が絡んでくる。
●PC
盗賊ブラッド
運命:封印の解放者、死の約定
『宝玉の大公』に魂を売り払い、母親を生贄に捧げて、異形の力を手に入れた元盗賊。封印の破壊者としての力を得て、山奥にある雪の封印へと向かう。
吟遊詩人 ルーフェン
運命:無垢、依存症
無垢なる魂を持つ吟遊詩人。記憶がなく、ただ持っていた竪琴だけを心の支えとしている。竪琴には冬の魔族の紋章があり、それに導かれているのだが、何かの運命でその魂は魔法から守られている。
商人アレクセイ(奇妙な旅人)
運命:自己犠牲、呪われた魔剣
異端結社「緑の猟犬」に属する異端者。漆黒の魔剣を得て、魔族解放の戦いに身を投じる。
弓兵シオン
運命:親が罪人、教団からの脱出
父親ハールは、魔法の武器「龍王の大槍」を盗んで逃亡、シオンはそれを追って旅に出た。父の事情を知るため、召喚魔道師たちの秘密結社「雪蛇」に加わるも、世界の滅びを計画するがごとき、邪悪な魔道師たちに嫌気がさしつつもある。結社の命令で、封印の解放者ブラッドを監視するべく、キャラバンにもぐりこむ。
傭兵コンラッド
運命:死霊の守護、不義の子
平凡な家庭だったはずだった。だが、父ライオネルは、平凡さを偽り、いつか魔族教団のために役目を果たすべく、待機していた隠れ異端者であった。そのゆがみは母メアリーを不義に走らせ、コンラッドは不義の子として生まれた。愛する父との相克の中、森で出会った不思議な女性エリスと結ばれるが、エリスは死に、コンラッドの魂はその死霊に囚われたまま。
そうした折、父の待ちわびた教団からの指令が届く。「封印へと迎え」と。すでに病床にあった父に代わり、コンラッドは北へ向かう。父の役に立つために。
●雪の封印
それぞれの運命に導かれ、北へ向かう商人の小さなキャラバンに加わる人々。やがて、山道を進むうち、ルーフェンの竪琴と歌声に呼ばれるように舞い散る雪。その中を舞う雪狼の影。キャラバンは山道を急ぐが、やがて、雪が本格的に降り始め、迫る夕闇に、キャラバンは山中で一夜を過ごすことになる。
紡がれる夢の中、迫り来る火龍の狂気によって、無垢の封印を解かれたルーフェンは、自らが雪の封印へ、封印の破壊者ブラッドを導く定めにあることに気づく。雪の封印の背後に隠された真の封印を開くために。
そして、巻き込まれていく人々。
魔族の力を手に入れたいアレクセイは、同じく異端の匂いを漂わせたシオンに近づくが、監視を命じられたシオンは、アレクセイの異端の気配に警戒する。彼は同じく魔族に関わる結社の一員ではあるが、その秘密結社「雪蛇」は魔道師学院の過激派召喚師が結成したもので、魔族の「管理された状態での解放」を目指していたのである。
シオンは運命の時が来たのを感じつつあった。おそらく、火龍を呼び寄せたのは、父のハールが盗み出した「龍王の大槍」。それを破壊せねば、封印からの解放を実現しても魔族は火龍の焔に焼き払われる。なんとかしなくてはならない。
最後まで迷うのはコンラッド。父に向かって、己の「実用性」を証明するため、死んだ恋人エリスのささやきにしたがってここまで来たが、魔族を解放することに対する「正しさ」を見出せない。
されど、火龍の気配は、人々を追い立てる。
この雪が晴れたとき、火龍が現れる。
明確に近づく気配に、人々は馬車を捨て、夜の雪道を封印の村へと向かう。夜半過ぎ、峠を越えた一行は、村の中央で火龍の火を上げる何かを見る。おそらくは「龍王の大槍」。狂気と破壊を招こうとする魔法の武器。
雪道を駆け下りた一行は、夜明けの前に、龍王の大槍によって焼き払われた村の残骸の中へと駆け込む。村の中央には狂気のごとき蒼き輝きを放つ「龍王の大槍」が大地に突き立てられている。その根元にはシオンの父の屍があった。この村を焼くために血を流しすぎたのか、もはや、冷たくなっていた。
怒りのままに、大槍を破壊するシオンとルーフェン。
アレクセイが雪の封印を断ち切ると、そこから、雪の戦姫が出現し、火龍との戦いに飛び立つ。
空中で交差する雪の戦姫と火龍であるが、魔族さえも凌駕する火龍の炎に雪の戦姫は深手を負い、雪山へと落下する。案内人としての役目を負えたルーフェンは姫君を救うべく、雪山へと走る。
ブラッドは運命の声に導かれ、深淵を開き、彼の求める真の封印へ向かって飛び込んでいく。
アレクセイは、それを支援するべく、漆黒の魔剣を構えるも、結社の「真意」を悟ったシオンは、「緑の猟犬」が魔力を手に入れないように、アレクセイを大弓で射る。胸を貫かれ、瀕死の重傷を追ったアレクセイであったが、「黒き翼」に仕える魔剣の力を借りて、飛翔し、火龍へと突進する。一撃を加え、ブラッドがより深く沈んでいく一瞬の時を稼いだが、火龍の吐く炎の中に跡形もなく焼き尽くされた。
コンラッドは、生き残る最後の手段に賭けた。
「龍王の大槍」の残骸を掲げ、火龍に呼びかけながら、雪の斜面を駆け上がった。ルーフェンの向かったのとは逆の方向へ。全力で雪の斜面を走るコンラッド。手中の槍の穂先に最初の朝日が当たって輝く。そして、突進してくる火龍。雪の斜面が爆発した。はじけた。コンラッドはその直前に、大槍を投げ捨て、斜面を転がった。
シオンは残された村で呆然と立ち尽くす。
皆、消えていった。
ブラッドは異界に消え、アレクセイは龍に焼かれた。槍を持って走ったコンラッドの後を火龍が襲った。恐らく生きてはいまい。ルーフェンはどこかに消えてしまった。
おそらく帰る時だ。父の最期を語るために。
雪の斜面の底で、コンラッドは気づく。
生きている。
「エリス」
呟く。
魂となった恋人の声が聞こえる。
「我らの役目は終わりました」
生きよう。君の声が聞こえる限り。
そして、深淵の底で必死にもがくブラッド。
「大公さま!」
しかし、異界の魔力の前に、人の子はあまりにも脆弱な存在でしかなかった。ブラッドは深淵の中に溶けていった。封印を前にして。
~終~
●感想
最後は火龍を相手に時間稼ぎの戦闘をしつつ、封印とのバトルロイヤルという派手な展開でした。皆様、お疲れさまでした。火龍と魔族の夢が交錯する夢歩きで、頭を悩ませつつという展開が面白かったですね。
この後、閉会まで談笑。
女の子に「Secret of Japan」のキティルフを見せたところ、ツボに入ったらしく、呼吸困難になるほど爆笑してくれました。他の人のSAN値が減るところを生で見せていただきました。
また、『真・女神転生X』のキャンペーンをしている人とも、お話。今、40レベル前後で、巫女=完全造魔とか、魔人やってますとか、学園物にして、まほら学園のキャラをコネ表に加えましたとか、楽しんでいただけるようでよかった、よかった。魔法系のパワー不足が目立つとのこと、そういう場合には、『退魔生徒会』の追加スキルをどうぞ。
続く打上では、地元の名物をいただきつつ、色々な話をば。地域の風習や文化というのはなかなか面白いものです。
●宇佐神宮
月曜日は、宇佐神宮へ。「巫女本」の取材でもあるのですが、どちらかといえば、神域の空気を吸いにいってきました。宇佐神宮は八幡大菩薩(応仁天皇)、宗像三女神である比売大神、神功皇后を祭る八幡総本宮である。古代には、神託の女禰宜がおり、道鏡事件で大きな役割を果たす他、神仏習合の魁となった場所でもある。
雨が降り出す中、主な社殿を参拝し、宝物殿を見てきました。
午後の便で東京へ。
主催者の内田ご夫妻を始め、コンベンション参加者には暖かいお言葉をかけていただき、楽しい三日間を過ごせました。色々お土産をいただきました。アレは家族でおいしくいただいています(現在進行形)。
色々お世話になりました。
●往復で読んだ本
・マルドゥク・ヴェロシティ 3
完結。『スクランブル』の背景。そして、濫用に至る葬列。
・ピルグリム・イェーガー 6
これも冲方丁の原作である、歴史伝奇コミック第一部・完結編。
葛藤と戦い、決別の歌。
そして、狂気。
いいねえ。
第二部を待っているよ。
・喰霊 3
退魔系コミック。黄泉編終了。日比谷に封じられた悪霊というと、将門かと思ったのですが、悪魔というか、魔王というか(天狗というがそうは見えない)が出てきました。うむ。
・銃姫 1
高殿円さんの人気ファンタジーのコミカライズ。魔術を銃弾として打ち出す魔銃士になった少年と、聖女の旅。捜し求める「銃姫」はまだ登場しないが、二人のコンビが面白いですね。