深淵：12と一つの星座CONin 上野

朱鷺田＠ハーバル

　週末にイベントの梯子をして、ゲームと酒で二日を過ごした反動か、昼までダウン。午後から企画書とかメールとかを処理しているうちに、日がくれた。翻訳作業に戻らねばならないのであるが、とりあえず、覚え書き代わりに少しずつ日記を書く。

●酒屋経由上野行き

　土曜日朝。
　ギリギリまで仕事をした後、上野で開催される深淵オンリー・ゲーム合宿『12と一つの星座CONin 上野 』に参加するため、『深淵第二版』とボードゲームを鞄に詰め込んで家を出る。電車で新宿経由で目白に出て、酒専門店「田中屋」さんに寄り、夜中に味見するための酒をいくつか購入する。

　朱鷺田は、最近、仕事の関係で古代酒の可能性を探っており、まだ飲んでいない酒を試すのが仕事（みたいな）ものになりつつあります。内外の古代の酒に詳しい方、あるいは、怪しい古酒を所蔵の方、ぜひ、ご一報をば。

　とりあえず、今回の酒は、薬草酒の原型に近いという「エリクシール」（71度）、シェリー・ワインの「Colosier」（極甘タイプ）（17度）、ドイツの居酒屋で二日酔い防止に飲まれる薬用酒（44度）をメインに、国内メーカーの非常に完成度の高いエールに加え、海草エール「ケルピー」、岡崎八丁味噌ビールを加え、念のため、カクテル用のカルーア（コーヒー・リキュール）とコアントロー（オレンジ・リキュール）のミニボトルを用意した。
　あと、家にあったチュニジアのイチジクの蒸留酒「ブッハ・オアシス」（37度）も一緒に持ち込む。

　これがあの惨劇を引き起こすとはこの時の私はまだ想像もしていなかった。

●深淵：森の中の龍

　「12と一つの星座CON　in 上野」は、上野駅前の路地に入ったところにあるビジネス・ホテル「ホテル小松」の１フロアを借りてのゲーム合宿。30分前に行ったら、主催者がまだ部屋の片付けをしていたというアバウトな感じのイベントですが、まあ、この程度は予想済み。次々現れる参加者の大半は、顔見知り、または知人の知人という当たりがもうかなりアットホームである。

　とりあえず、全員揃ったっぽくなったので、手馴れた参加者からＧＭが４名立って、参加者を振り分ける。とりあえず、回数の少ない人を中心に４名集めて、渦型で行くことに。初心者卓という設定になったのであるが、気づくと、内山さんがいたり、なかなかユニークな卓になった。

　一応、森の中の酒作りの村で「ヤマタノオロチ退治」か「ワイン祭り」をしようという目算があったのであるが、超越幻視で「赤い瞳の侯爵スゴン」（火龍殺しの死の魔族）に魅入られた人々が出た上、盗賊が森の結界に捕らわれたり、記憶のない上に、龍化進行中の農夫がいたりと、龍退治に確定。

PC：
漂泊の騎士エルヴィン卿
　赤い目の侯爵スゴンから「沈黙の刻印」を刻まれた若き漂泊の騎士。愛するヘンリエッタは、黄昏の公女の呪いで、足に赤い異形のあざが刻まれており、この呪いを解いて彼女にプロポーズするのが今回の目的。
「君の呪いを解いた時が、結婚の鐘を鳴らす時だ」

農夫？
　過去を失い、記憶のない農夫？
　なぜか龍化の呪いを受けており、左手は龍の鉤爪。

盗賊ジーン
　森の王の秘宝「導きの笛」を盗んだおかげで、「龍殺しの武器の探索」を命じられた上、17年後の未来に飛ばされた盗賊。

傭兵ミルリーフ
　借金塗れの傭兵。「赤い瞳」が近づいてくる悪夢に脅かされている。借金返済のため、銘酒の入手を引き受け、ウォルクの村へと向かう。

物語：
　騎士エルヴィンは愛するヘンリエッタの呪いを解くため、あざを消す魔法の薬酒を求めて、森の中の村ウォルクへ向かう。途中、借金と悪夢で心が病み始めた傭兵ミルリーフ、記憶のない農夫（仮称・農夫）、森から逃げ出してきた盗賊ジーンを仲間に加える。途中、ミルリーフが見る悪夢が「赤い瞳の侯爵スゴン」によるものだと知ったエルヴィンは、これを利用しようとするが、ミルリーフはスゴンに屈する気はなかった。
　やがて、ジーンの案内でウォルクの村についたが、ジーンの記憶とは17年食い違っていた。
　しかし、一行の到着とともに、森の中には火龍の吼える声が響き渡る。
　騎士エルヴィンは村人に懇願され、呪いを解く薬酒を報酬として、龍退治に向かうことになる。借金に苦しむミルリーフは騎士に金貨で雇われた。森の王から龍殺しの武器を探せと命じられていたジーンが案内役を買って出て、自らの記憶を回復したい農夫が一行に加わった。

　ジーンの案内で森の奥に向かった一行は、まず、森の王に会い、龍の吐息に抵抗する加護を得るほか、自らの運命の一旦を垣間見る。記憶のない農夫は、「赤い瞳の侯爵」による作成された人造人間（それも予備の器）だったことを知り、侯爵を受け入れる。

　森の王の導きで、龍の横腹に近づいた一行は、ジーンの笛で龍が眠った隙に、突撃する。
　騎士の突撃、傭兵の必殺の一撃（叙事詩に残る一撃）、スゴンの死の力を得た農夫の龍の鉤爪の三連続攻撃に、撃沈する火龍。そして、さらなる戦いを求めるスゴンは、農夫の肉体を乗っ取ろうとするが、これは農夫が耐え切り、スゴンを彼方に追いやる。

　かくして、スゴンは消え、火龍も倒れた。

　森の王は彼らに三つの道を示す。
　過去、現在、未来。

　愛する者を救うべく火龍と戦ったエルウィンは現在に戻り、恋人の呪いを解いて、見事、結婚の誓いを果たした。
　借金に苦しむミルリーフは、未来へ逃げて借金を踏み倒すことも考えたが、あえて、現代に踏みとどまり、ウォルクの村の銘酒を売買する仕事をしながら、借金返済を続けた。
　もはや、現代にすら居場所を見失った農夫は、遥か未来に向かうことを決意する。

　そして、ジーンはやり直しを求めて、17年前、運命の分かれ目へ戻っていった。

ＧＭ：目の前に、森の王の秘宝「導きの笛」があります。
ジーン：（じっと考えた後）盗ります。

　以下、ループ。

　～終了？～

●地獄の飲み会　あるいは、バイオテロ

　20時で第一部終了。昼のみ参加の人は帰り、21時からの第二部、別名フリータイムとなる。早速、『深淵』２階目の卓もたちましたが、私は、しばらく、酒を飲み、その後、いくつかボードゲームをしてから夜中から『深淵』を回すことにした。まずは飲み会の準備ということで、立ち食い蕎麦で腹を満たし、『キャッシュ＆ガンズ』とかしている人々を前に、朝から持ち込んだ酒を開陳、さらに、あずさんが朝鮮半島から持ち帰ったという謎の酒２種とともに味見を。

　朝鮮半島から搬入された酒は明らかにバイオテロでしたので、さすがに味見だけで断念。２杯飲んだ在胡さんが倒れたので、その効果恐るべしというべきか？

　私の持ち込んだ酒の中では、薬草酒の強さ、シェリーの甘さに皆さんが閉口、岡崎八丁味噌ビールもまず？？？という味でしたが、海草エール「ケルピー」はさらなる衝撃を与えてくれました。

「海の匂いがする」
「本当に海草だ」
「これ、作ったのはインスマウスでは！！」

　日本人が想像するビールからはかけ離れた存在でした。
　クトゥルフ・ビールという俗称すら発生。

　問題は、件のエリクサーを垂らした瞬間、潮の香りを凌駕してしまったあたり、エリクサー恐るべし。

　そんな状況で、37度の「ブッハ・ル・オアシス」が女神のように崇め奉られましたが、北関東から「山田錦」の大盃とジョニ黒12年が届いた瞬間、その王座は崩れました。

●人狼

　しばらく、ワードバスケットをしていたら、やがて、誰かが「人狼」をやろうと言い出すので、まずはコーディネーター役を引き受ける。これは実にいいゲームである。色々ヒドイし（笑）

　東欧のある村に人狼が舞い込み、これを退治するために、無力な村人たちはやむなく、人狼狩りとして、村民から誰かを選び出し、リンチにかけていく。基本的に会話と推測だけで進むゲームであるが、この10人前後で人狼２名、占い師と狩人（ボディガード）というバランスがよい。

　２回目、プレイヤーになった途端、人狼のカードが回ってくる。やった！

　ひとつ、問題があって、このゲーム、経験者は優先的に狩られるという宿命がある。もちろん、素でSANが低く、経験者でかつ、しゃべり系の私は早々に危険人物視されて吊られる定めにある（90％確定）。つまり、そこまでにどれだけ混乱をまき散らせるかが勝敗を分かつ。
　１周目から、早速候補に上がるが、前回の勝者で人狼だったそーやさんに犠牲になっていただく。
　２周目もなんとか誤魔化し、３周目に至る夜に致命的なミスもしたので「オレ、ボディガードだから」とか口走る。死亡カウントダウン開始。この周回は生き残り、そろそろルールの闇に気づいた隣人を殺戮する。４周目には吊るされました。最終周、相棒を含む３名になった時は負けたかと思いましたが、村人側が疑心暗鬼に陥って分裂、人狼側の勝利に。
　どうやら、ピンポイントで占い師と狩人を倒せたのが勝因のようだ。

●深淵：妄想王、雪原へ

　一旦、飲み会に戻ったが、一時を回っても倒れなかったので、その場のメンバーを集めて「深淵」を立卓。基本的な話のプロットは「永遠の冬」と「屍の城」の間を埋める補完エピソードで、場所はアヴァター。
　これまた渦型なのだが、そ～やさんが素で「運命の幻視」のトラップに嵌り、「死人の声が聞こえる」上に、「一国の王になる」妄想を抱いた盗賊になってしまい、地獄めいたセッションに。

PC：
漂泊の若き騎士ルシオ・ランデイル
　バッスルの若き騎士。アヴァター大公領で発生しつつある「異常寒気」の謎を解くべくアヴァターの雪原に向かう。妖精騎士の血を引く貴族の令嬢カタリナに誓いを立てている。
「我が武勲を持ってアヴァターを制し、あなたを妻とする」

傭兵オフレット
　脳味噌筋肉な傭兵。『銀河英雄伝説』の猛将オフレッサーのようなと自分を表現した瞬間、『近親憎悪』の運命が確定、ラルハースの猛将オフレッサーとライバル関係にある長槍使いオフレットになる。
　槍の侯爵シュトロアに魂を売り、毎月、生贄を捧げているので、やたら邪悪である。

妄想王フォージュ
　死者たちの声が聞こえるため、やがて、妄想を抱き、一国の王を目指し始めた盗賊。イシュトヴァーンというよりも、悪魔の実を食べていない麦わらのルフィ。
「オレは一国の王になる！」（ONE PIECEの雰囲気で）

野槌のまじない師アーウィン
　過去がない男。６年前、黒の短剣だけを持って、アヴァターの雪原に立っていた。その後、野槌のまじない師になるが、知人を見捨てた罪悪感を持っている。知人のフォージュを見捨てることもできず、一緒に、アヴァター山を目指している。

踊り娘バネッサ
　恋人デビアスを失い、自らも冬の統領ル・ウールに沈黙の刻印を刻まれ、狼の牙を持つ美女。何の因果か、アヴァターへ、ランデイルとフォージュを導くように命じられる。不運な人。

物語：

　ランデイル卿は、妖精騎士の血を引くカタリナを嫁にするため、鋭意活躍中のバッスルの騎士である。異常な寒冷に見舞われたアヴァター山の調査のため、傭兵のオフレットとともに派遣される。どうやら、オフレットの宿敵であるラルハースの剛力騎士オフレッサーとその部下たちがすでに向かったらしい。
　折りしも人手が足りないバッスルなので、ランデイルへの増援はないが、守護神である冬の統領ル・ウールの神託によれば、案内人と手助けの兵を途中に用意したという。

　一方、「オレは一国の王になる！」とか言い出し、雪原をアヴァターに向かうフォージュ。それを見捨てられず、ついていくアーウィン。
　たちまち、吹雪に見舞われ、ボロ天幕の中で宿営する二人だが、フォージュの妄想は止まらず、さすがのアーウィンも閉口気味。そんなところへ、ル・ウールの命を受けたバネッサが案内役として現れるのだが、フォージュはこれこそ冬の巫女である！とさらに盛り上がり、バネッサの話を全く聞かない。

　やがて、ランデイル卿とオフレットが乱入、邪悪なオフレットはフォージュの妄想に気づき、彼を利用しようと言いくるめていく。
　結局、和解し、同行することになった一行は、翌朝、晴れ上がった雪原を突破し、アヴァター山へと登る。

　ついに宿敵オフレッサー軍団に追いついた一行。剛力の猛将と歩兵、狂戦士、水魔というパワー軍団を見て絶望感に狩られるものの、宿敵を目にして暴走したオフレットが、シュトロアの魔剣を得て、オフレットを一騎打ちで討ち取ってしまう。敵軍は思わず降伏、撤退する。

　満足したオフレットは「オレより強い奴に会いに行く！」とか言い出し、遥か南、ハジの荒野に侵攻してきた火炎の民と戦うべく、騎士の下を辞すことに。「武勲はあんたにやるよ」
　ランデイル卿は倒れたオフレットを捕縛し、任務達成と喜び、早速、山を降りる。その武勲でカタリナと結婚し、名目、アヴァターの領地をもらうことになるが、今回、彼が１回も槍を振るっていないのは秘密である。
　バネッサは、この戦いの勝利により、呪縛から解放されたので、騎士や傭兵に背を向け、刻印を取り除いてもらう。それは冬の加護を失うことであり、極寒のアヴァターにおいては死に近づく行いであったが、もはや彼女は人生に疲れていたし、フォージュらの妄想に付き合う気もなかった。自由意志を貫くために、死の危険を受け入れたのである。もちろん、無駄に死ぬ気はなかった。自分で道を切り開きたかったのである。

「さて、我は王城に向かおう」

　フォージュは、障害が消えたのを受けて、晴天のアヴァター山をさらにのぼり、妖精騎士の城に向かう。いまだ記憶の戻らぬアーウィンは彼を見捨てることも出来ず、ともに山を登る。
　頂上に残っていたのは空白の城。
　まるでわが城のように、踏み込み、玉座に座るフォージュ。
　思わずついていったアーウィンの背後で閉まる城門。

　彼ら二人のその後についてはまだ語る時ではないだろう。

　～終わり～

感想：フォージュが落ちていく様が最初から最後まで衝撃的なセッションでした。可哀想を通り越して、もはや笑うしかなく、プレイヤー曰く「落ちっぷりに心が折れそう」とのこと。運命「妄想」はヒドイ。

●終わりに

　終わったのが５時前後。となりでは、第三セッション目が始まり、「OPの夢歩き終わりませぬ」とか。そのまま仮眠を取り、９時前に起きたら、徹夜明けでBLUFFに興じる人々がいた。

　非常に楽しい合宿でした。皆様お疲れ様。

　その後、私は天王洲アイルへ行き、聖パトリック・デーの集いに参加したのですが、今宵も遅くなりましたので、その話はいずれ、別項目立てで。