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March 25, 2008

聖パトリック、クー・フリンを蘇えらす

朱鷺田@日記続報

 時差ボケの間に、息子と妻が小学校の卒業式から帰ってきた。
 さて、今日の仕事に戻る前に、日曜日の日記を書き上げてしまおう。

●聖パトリック・デーの集い

 日曜日は天王洲アイルのシーフォートスクエア2Fにあるアイリッシュ・パブ「ザ・ラウンド・ストーン」で開催された「聖パトリック・デーの集い」へ取材。これは日本アイルランド協会主催のイベントである。聖パトリックは、アイルランドにキリスト教を伝えた聖人ですが、その結果、アイルランドの古い宗教との仲介役として、多くの神話や伝承に顔を出す。ティル・ナ・ノーグの伝説などでも、神話時代の終焉を解説する締めの看取り役として現れる。

 昨日の日記で書いた通り、半徹夜でGM×2、ボードゲームたくさんをこなした後ですが、3時間ほどの仮眠が聞いたのか、元気になって会場時間に飛び込み、早速、上映されている「幻の民ケルト」(BBCが作った古代ケルトの番組)を見ながら、キルケニー(アイリッシュ・エール)を傾ける。Lord Dansany(ロード・ダンサニー)とか出ていて、色々来るものがある。
 この辺で調子に乗って、アイルランド焼酎のポチーンを頼んでみる。メニューには40度、60度、70度、90度とある。90度にはかなり引かれたが、店のマネージャーさんに「おいしくないよ」と止められ、60度を飲む。鋭い、斬れるような飲み口だ。ちょっと今日のオレにはきついかもしれない。

 そうするうちに、日本アイルランド協会の総会が始まってしまったので、一旦、外に出て空気を吸う。天王洲は運河に面した川沿いの埋立地で、目の前に羽田空港がある。

●聖パトリック、クー・フリンを蘇えらす

 今回のメインは、松岡利次先生の講演「聖パトリック、クー・フリンを蘇えらす ~アイルランド異界行」である。
 クロンマクノイズ修道院の古文書写本「赤牛の書」に現れるエピソードの紹介である。アイルランドで布教を行っていた聖パトリックはロイガレ王にキリスト教の祝福を語るが、王はなかなか受け入れない。やがて、聖パトリックは、死後、地獄に落ちていたクー・ホリンを蘇らせて、彼に洗礼を施し、英雄の魂を救う。

 この伝承において、クー・フリンは年代的にほぼキリストと一致するとのこと。最近、ディオニュソスとキリストの関係を考えている身としては、キリストに重なる「クー・ホリンの死と再生」という図式はキリスト教布教のために書き換えられた神話伝承だったとしても、非常に興味深いものである。川岸や水際を異界の境界とするアイルランド幻視論は、日本の水界境界論に通じるところがあり、日本に霊的な共通点を感じた。

 それにもまして、松岡先生の饒舌なお話と詩歌の詠唱を聞けたことは非常に素晴らしいものであった。第二部で少しだけ直接、お話を聞かせていただけたが、「もちろん、原点探索も必要であるが、文芸は変化していくものであり、今、あるいは、その歴史時点での神話解釈も重要である」というご意見は非常に印象的であった。

 そして、今回の重大な質問を。

朱鷺田「クー・フリンが飲んだ酒は何でしょう?」

 現在のテーマ、神話の英雄が飲んでいた酒は何か?
 クー・フーリンの場合、エールではないかと踏んでいたが……
 さすが、松岡先生。即答される。

松岡先生「ミード(蜂蜜酒)ですね」

 地中海のワインはまだアイルランドに到着しておらず、メソポタミアからケルト人に伝わったエールよりも古い欧州の酒というのが「蜂蜜酒(ミード)」なのである。蜂蜜を発酵させた醸造酒である。次に探す酒はこれか!

●アイリッシュ・ダンス

 その後、アイリッシュ・ダンスとカーリー・バンドの演奏になる。
 アイリッシュ・ダンス(リバー・ダンス)を踊るのはCCEジャパン。演奏は南浦和ケーリーバンド(同サイトにはアイリッシュ・パブへのリンクがあり。要記憶)。

 華麗でリズミカルな足の動きで見せるタイプのダンスがあった。ハード・シューズを着用すると、タップダンスの原型的な「木の床を靴で演奏する」形になる。天空から糸で吊られたような感じで、両腕や上半身はほとんど動かさず、足で舞う。膝から横へくいっと曲がって交差しつつ、足先が上を向いたり、中を歩くように右左とステップしていったりする動きも面白い。
 また、女性のドレスの一着が、古典的なフクロウの瞳を採用しつつも、全体の構成が雅楽の鳥舞いの衣装を思わせたのは、刺激的であった。

 その後、最前列で見ていたので、デモに引っ張り出されるが、もはや足が動かない。年であるよ。
 とりあえず、頑張って見るが、おかげで酒が回り、次の講演「アイルランド観光の分析」では世界が回り始めてしまい、再び、運河沿いに出てストレッチ。

 観光分析が終わると第二部の宴会に。
 アイルランド協会の方からアイルランドの魅力を伺ったりしていた。アイリッシュ・ダンスのダンサーの方は、アイルランド旅行の時、妖精の輪を見たとか。隣の女性に話しかけてみたら、ルネ・ヴァンダール研究所占星術師アイラ・アリスさんだったとか、本職の講談師の方が語る「ク・ホリン一代記」を聞いたとか。何か色々ありましたが、かなり酒と疲労が回り始めていたので、ぐだぐだな話をしたり、おかしな質問をしていたりしたかもしれません。もし、失礼がありましたら、すいません。
 個人的には、アイルランドの都市ベルファストを認識したのは、初代ガンダムでした。Irish Network Japanの方にその話をしたら、「ズゴックが攻めてきたあの回」というレスポンスが瞬時に戻ってきて、我々の世代に対するガンダムの影響力を深く認識しました。

 シードル(林檎を醸造した酒。18世紀までは英国の常用酒) Magners

 20時解散。体力的にもやばそうだったので、直帰。
 電車の中で一瞬落ちたが、何とか無事帰宅。

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