電光石火を飲む
仕事中ですが、酒の話。
●電光石火を飲む
九州の内田さんにわがままを言って探してもらった酒「電光石火」が届く。清酒、生酒、にごり酒の三点セット。にごり酒には「開栓注意」の札までついている。
早速飲む!
清酒は、うまい。
開栓直後にただよう吟醸香のフルーティさだけで素晴らしい。口に含めば、水のような柔らかさと吟醸ならではうまみが口に広がる。飲みやすく、ライトな風情ながら奥深く華やかな酒だ。舞い散る桜の下で酒盃を傾ける歌舞伎者、隆慶一郎が描いた前田慶次のような酒だ。
この源流を探るべく、生酒「あらびかり」に向かう。
生酒らしい、きつい味わいだが、その底にあるうまみ、香りが素晴らしい。
さらに、にごり酒。
まだ生きている酒は開栓とともに発泡を生じる。
まず1杯。上澄みを味わう。生酒と同じ強烈なパワーが身を貫く。
そして、2杯目。浮き上がってきた麹を含んで白濁した酒を口に含む。
あらあらしい酒だ。発泡する炭酸の苦味が舌を叩く。
だが、うまい。
ここで清酒に帰る。
火入れ、ろ過、熟成という過程がもたらした「優しさ」を味わう。
うまい。
さらに、こういう機会にしか出来ない贅沢を。
にごり酒を温め、砂糖を加えて「あま酒」のように飲む。
入り口の甘みを超えると、酒麹のフルーツめいたあじわいが舌を覆う。
うまい。
涙が出るほどうまい。
すごい贅沢をさせていただいた。
この酒を作ってくれたひらしまさんに感謝。
この酒を教えてくれた江口さんに感謝。
この酒を探して、送ってくれた内田さんに感謝。
●電光石火という酒
電光石火という酒のことを知ったのは、体験型酒ライターの先達、酔っぱらいター、江口まゆみさんのサイトにおける酒蔵探訪記事である。江口さんは女だてらに、東南アジアやアフリカの酒を飲み歩いたことで有名になり、現在は日本酒の酒蔵やワイナリーを巡る酒紀行のエッセイで人気である。この方のサイトにある酒エッセイで、10年前に北九州の酒屋の店主が飲ませてくれた「電光石火」という酒にとにかくうまい!と書いてある。
その後、ネット検索をしたら、それが北九州市のひらしま酒店であることが分かった。江口さんが感動した電光石火は、一昨年、なくなられた先代店主が広島の酒蔵と組んで作り上げた傑作である。
先日、大分でTRPGのイベントを運営している内田さんから「何か送りましょうか?」というメールがあった際、隣県であることを承知の上で、やはり、この酒を飲んでみたくて、わがままをいったら、わざわざ北九州まで行って探してくださったのだ。ありがたい。これこそありがたい恩義だ。
●修道士カドフェルに蜂蜜酒
もう一つ、酒の話。
「エリス・ピータースの修道士カドフェルにはちみつ酒が出てくる」と聞き、第一巻「聖女の遺骨求む」を読む。舞台は15世紀のイギリス、イングランドのシュルーズベリにある修道院の修道士カドフェルが修道院の内外で起こった事件の謎を解くという歴史ミステリーであるが、本人は薬草酒を作っているし、第一巻の舞台となるウェールズの村では、村人の娯楽としてはちみつ酒が回し飲みされている。
イギリスではワインが出来ないし、時代の15世紀のイギリスとあれば、飲む物はミード(はちみつ酒)しかない訳だ。