クトゥルフ:ささやきが聞こえる
長くなりましたので、二つに分けてポスト。
●クトゥルフ:ささやきが聞こえる
土曜日はクトゥルフOnlyCONでゲスト・キーパーでした。
タイトルは「ささやきが聞こえる(Twitter in the Wall) 」。
舞台は、現代の東京、新宿。 とある酒場で、「リーマン予想」の研究を続ける老数学者、田辺淳一郎教授と知り合った探索者たちは、彼から「最終的な解析」に至る式を見つけたという話を聞く。
10回記念ということで、ニャルラトホテプが隠しテーマでした。とはいえ、いつものように、ストレートにニャルラトホテプを出すのはいやなのでニャルラトホテプの化身の中でも、特にユニークな「クルーシュチャ方程式」を使うことにした。年末のNHK特集で見て気になっていたリーマン予想をテーマにし、リーマン予想をゼータ関数で解析した場合に発生する素数直線の彼方に、アザトースの宮廷があり、ニャルラトホテプは「クルーシュチャ方程式」を人間にとかせることにした、というもの。
さて、朱鷺田は昔、SFが好きでして、石原藤夫さんの宇宙数学SF「オルモロフ号の冒険」が実にファンタジックでよろしかったと思っています。数学ジャーゴンをファンタジーとして読むというのはなかなか理解していただけないのですが、あの作品は石原さんにおける「スタートレック」か「宇宙戦艦ヤマト」であったのではないかと思います。
それはさておき、私自身は数ⅡBで挫折した者ですが、素数とか、宇宙物理学における数式とか、ネタとしては興味があります。今回は、ずいぶん、スイッチが入っておりました。
直前に、冲方 丁さんの「天地明察」を読み始めたのがよくなかった。この本は江戸時代における改暦事業に活躍した渋川春海の活躍を描く本格歴史小説である。前半は囲碁と算術による数字勝負の話になる。いや、これが実に面白い。小説の筆力というものを見せつけられるのだ。
悔しい。だが、心地よい。
シナリオ前日、素数を確認するために、暗算で計算をしていたら、ちょいとハイになった。
2、3、5、7、11、13、17、19、23、29……
つい、「41×17」って素数同士の掛け算だよな…と気づいてしまう。
ちなみに、これ、電撃文庫の1ページの文字数。
つまり、メディアワークスは素数魔術の……
いや、落ち着け、オレ。
という訳の分からないテンションでイベント当日。
集まったPCは5名。
キャラクター作成は最近、よくやっている「自分のPC化」(ファンタジー可)というランダムじゃない世界。今回は、まず素数を思い出してもらう。3分間でかけた素数が三桁まで達すれば、EDUを18以上にしてもよい。
出来上がったPCたちは新宿西口にあるとある大学の関係者、とか言ったら、Sさんが持ってきてくれた新宿の地図に「工学院大学」がある。最初は「新宿大学」とか言おうと思っていたが、このセッションの舞台は工学院大に決定。
セッションは、新宿南口の飲み屋、豚道楽からスタート。数学の田辺教授(専門は素数)、量子物理学の鈴木助教授(専門は宇宙論)、社会学の神田助教授(比較文化論)の飲み会に集まった面々の前に興奮した田辺教授が現れる。素数に関する究極の難問と言われるリーマン予想の解明方法を思いついたというのだ。そこで生じる複雑な計算をこなすために、分散処理を行うことにした教授は計算プログラムの入ったメモリーを配った上、全員、今夜計算するように迫る。さらに、鈴木と神田の持っている大学のサーバーの計算時間とメモリー領域を借りると一方的に断言して大学へ戻ってしまう。
神田と鈴木も大学に戻ったため、飲み会は解散になる。
PCの内、神田の助手である関口は神田ともに大学へ戻るが、比較文化論研究室がハードディスク上に秘蔵していた80年代アニメコレクションが、田辺教授の計算によって圧迫され始めたので、慌てて、HDDをコピーする作業に。鈴木の助手だった神田は家に戻ってメモリーを起動するが、計算ソフトがウイルスめいた動きを始めたため、悲鳴を上げる。スイッチでの強制停止も聞かず、電池パックを引き抜こうとするが、そこに触った瞬間、奇怪な黒い粘液が指先についてしまう。
どうやら、田辺教授のプログラムは、素数の計算を分散処理で行うために、外部通信を自在に行うウイルス的なものであったようだ。
素数の計算は世界に向かって広がっていく。
「N=???」
奇怪な数式が、大学のPCの画面に広がり、名状し難い多角形のCGが描かれる。
ウイルス騒ぎを解決するため、再び、大学に集まってくるPCたちだが、素数計算の渦が世界そのものをゆがめ始める。空間が歪み、大学ビルは天に向かって伸びていく。鈴木助教授の研究室前で、未来の自分が黒い触手に捕獲される姿を目撃する。田辺教授の研究室に向かおうとすると、壁や床を素数が走り回り、虫の群れのように襲いかかってくる。
関口「ここはシュレディンガーの猫理論だ!
観測されたことにより、現実は確定する。ならば、観測者がその事実を決めればいい」
一同「どこのラノベだ(笑)」
かくして、13次元に消えていた教授たちを救い出すも、ウイルス問題は解決しない。
神田「物理破壊しかない!」
物理破壊とは文字通り、ハンマーとかでPCを物理的に破壊すること。最終手段だ。
やがて、素数と対決するには、非・素数で武装すればいいことが分かり、「九九」を唱えながら、大学構内を探索する一行。
キーパー「では、アイデアロールをしてくれ、失敗すると九九を間違ってしまう」
失敗して、銀河中心へと続く素数の階段を見てしまう岸部。
黒い人に招かれて帰ってこられなくなりそうになる。
最終目的地に向かって九九を唱えながら進む人々。
途中、数字が出るたびに「~~って素数だよね」「素因数分解できるよ!」「偶数なら安全だ」とか叫ぶ人々。
かなり怪しいテンションで、ついに田辺教授の研究室前に到着。
九九を唱えつつ、封印の文字か何かのように、マジックで偶数を書き連ねると、研究室の中から悲鳴が。
「らめぇ、割り切れちゃう!」
飛び込んだ一行の前にはニャルラトホテプが偶数に襲われて悶える姿が。さらに研究室の中央では計算を続けるパソコンのディスプレイがとろけるように広がり、銀河の彼方へつながる素数の階段を描き出していた。
ニャルラトホテプを目撃したので、ここで正気度ロール。
失敗した大北が1D100の正気度喪失! 残り正気度16のところ、13を出してなんとか完全発狂をまぬがれた。
神田が偶数を書き連ねたハンマーを振るい、パソコンが吹き飛んだところで、銀河の幻影は消えた。
かくして……某大学研究室を襲った方程式暴走騒ぎは終わった。
……はずだ。
大北「リーマン予想のレポート、書きます。クルーシュチャ方程式で」
~FIN~
どこかおかしいテンションのセッションでした。おかしくなった神田助教授が「ラブプラス」の寧々さんに逃避するところとか、ニャルラトホテプがおかしな悲鳴を上げるところとか、今、考えるとヤバイな。しばらく封印すべきネタかもしれない(笑)