都条例に反対します(続き) /反対の理由
●継続審議について
例の都条例が継続審議となりました。
まずは、総務会で反対してくださった都議の方に感謝します。
しかし、事態は完全に安心な訳ではありません。
いきなり、事実上の可決に近い影響力をもつ総務部会での決定にはならなかったので、最悪の展開は避けられましたが、「継続審議」となっただけで、廃案にはならなかった。逆に、「継続審議」なので、条文修正により、6月の議会で可決される可能性が高い。次の戦場は、改訂案をいかに修正するかである。6月まで気が抜けないというのが正しい状況である。
このあたりの現状および今後のアクションの指針はまとめサイトを御覧下さい。
●改正案のどこがオカシイか?
色々転載して、意見を述べたが、これから4月中までかなり忙しくなり、コメントできない状況が発生しそうなので、私なりの意見を、ここでもう一度、述べておきたい。
まず、朱鷺田は、児童ポルノの規制に反対する訳ではありません。今回の都条例改正案が「色々ズタボロで目的に合致しておらず、表現の自由をそこね、文化メディアを圧迫するなどよくない副次効果の方が大きく、はた迷惑なほど不出来な法案」だから反対するのです。
その1:違憲である。
「表現の自由」を大きく規制する、憲法に反した法案であるので反対します。
その2:目的に合致した法案でなく、曖昧な条文で無関係な人々に迷惑をかける悪法である。
今回の改正案は目的に合致していない未完成な法案であり、曖昧な条文で無関係な人々の権利と自由を圧迫する可能性が高いので、反対します。
いくつかの過激な表現の作品(ポルノ化したジュニア・アイドル写真集、過激な表現の多いBLおよび少女向け恋愛物(TL)、ポルノ化した過激なアニメ)を青少年に見せたくない、という改正案の出発点は、以下の議事録で分かるが、それは、それらの本を選定する基準を作成し、その基準に基づいて「猥褻物」、または「青年向け」として扱えばよい。現在の法律で十分である。
第28期東京都青少年問題協議会 第8回専門部会(2009年07月09日)
基準が曖昧で包括的な現在の改正案は、それを規制するのに役立たない上、それ以外のマンガ、映像、アニメ、出版産業に多大な影響を与え、産業として萎縮させ、さらに、「単純所持」を懲罰対象とするため、公共図書館の活動まで圧迫する言論統制をもたらす法案であるので、私はこの改正案に反対します。
出発点と目標をきちんと明示し、無関係の人に迷惑をかけない法案を作成してほしい。そのためには、「児童ポルノ」の定義を行い、非実在青少年に関する項目および単純所持の禁止項目を排除するべきです。BL/TLの過激な描写については、業界団体および関係各社に自粛を呼びかけることから始めるべきです。
その3:悪用されやすい法律である。
法律を検討する場合、「性悪説」で見るべきである。
その法律が悪意を持って運用される場合、それがどんなヒドイことをもたらすか、想像するべきだ。担当者の恣意的な基準で運用しうる法律は、「暴君」を生み出しやすい。今回の法律は、東京都の一委員会が映像、画像、音声に関して「青少年にとって危険かどうか」を決定できる。その委員は都民の誰かが選んだ訳でもないし、都民の代表でもない。それはあまりにも危険な言論統制ではないか?
たとえ、今の委員が信用できる人だった(注記)としても、10年後、悪意を持って運用する委員がいたら、どうするのか? 現状の改正案のままでは、手塚治虫も、「風と木の詩」も、「ONE PIECE」も、「ドラえもん」も、摘発できるのだ。下手すれば、聖母マリアの自愛あふれる絵さえ、おそらく18才未満でイエスを産んだ、という1点で規制できる。アニメもゲームも実写映画も摘発できる。声優の声が色っぽいだけでもうダメ! ということができる。
今回、15日の集会で、担当者と漫画家の方とのやりとりで、永井豪先生が連載時、大問題になった「ハレンチ学園」はどうか?と聞いたら、担当者は即答で「違う」と答えたが、「ハレンチ学園」は明確に、18才未満の女子学生が半裸になり、スカートめくりなど性的な行動を取っており、暴力シーンもあり、現在の改定案の規制対象となる。しかし、担当者はその理由を説明しないし、改定案を読んでも、対象となるようにしか読めない。
つまり、担当者自身がその法案をねじ曲げて運用して見せたのだ。
そんなアバウトな法律が許されるだろうか?
その上、単純所持で摘発できる。
つまり、他人に、該当物をカバンの中へ入れられたら、摘発されうる。
それが乱用されないと言えるだろうか?
私は、この改正案が悪用される危険を強く懸念し、十分な議論が必要であるとして、現状の文面がきちんと修正され、乱用の危険性が排除されるまで、この改定案に反対します。基準を明示し、どのような影響が発生するのか、議論を重ねられるようにして欲しい。
注記:できれば、上記の議事録をお読みください。法案策定の現場とは思えないほどのオカシなやりとりが繰り返されています。不勉強で現実の状況を理解していない女性委員が、推進者から提示された過激な資料に困惑するばかりで条文の検討ができない。推進者は延々と漫画家の反対を叩き潰すことばかり言明する。差別的な発言も次々と出てくる。このような委員会から生まれた条文が、彼らの手で運用されたら、恣意的にねじ曲げられ、悪意を持って運用されかねないと思うのは、私だけでしょうか? 都議の方、都知事にこそ、この議事録はお読みいただきたい。
その4:何でも禁止すれば、子供が健全に育つ訳じゃない。
今回の改定案の論拠として、「性的なマンガに触れることで、青少年が正しくない性を学び、犯罪を起こす可能性が高まる」とあるが、これにはデータ的な論拠がない。このあたりについては、山本弘さんがBLOGでマンガ規制が犯罪率低下に役立つと言えないことを検証しておられるので、それを参照してほしい。
我々は歴史に学ぶことができます。
潔癖症とも言えるアメリカの禁酒法がアメリカでの飲酒率を上げ、酒を闇物資として扱う組織犯罪の発達を助長し、さらに、アメリカ合衆国政府の国庫すら衰退させた、という事実を忘れないで欲しい。
なんと,禁酒法施行によって、アメリカ人の多くが飲酒に目覚めたのです。
今回の改正案は、まず、潔癖症的な包括規制ありきで、その法律がどのような悪影響を与え、日本全国の活力すら奪い取り金無いことを意識せず、作られた不完全な法律で、このままでは、目的を果たさずに、悪影響だけを蔓延させかねません。その上、この改正案は、潔癖症的な規制優先で、青少年の育成における性教育の問題や性犯罪の根源的な問題に目をつぶっているようにも、見えます。
よって、私は現改正案を廃棄するべきだと考えます。