ファイアウォールへようこそ(9):キャラ作成2:勢力
ファイアウォールへようこそ(9):キャラ作成2:勢力
「エクリプス・フェイズ」の紹介その8。キャラクター作成の話を始めます。
この連載は、朱鷺田祐介が「エクリプス・フェイズ」をGMするための、覚書的なものです。「エクリプス・フェイズ」は、「シャドウラン4th」のライン・ディベロッパーだったロブ・ボイルが作成した最新SF-RPGです。詳しくは、本ブログの「ファイアウォールにようこそ」、あるいは「エクリプス・フェイズ」関連エントリーを参照してください。未訳RPGの紹介ということで、手探りでやっている部分が多々ありますので、訳語の揺れはご容赦ください。
●キャラクター作成はポイント式
「エクリプス・フェイズ」のキャラクター作成は、GURPSやシャドウラン4thなどと同じポイント形式です。「背景」「勢力」を選び、ベースとなるデータの上に、1000点のカスタマイズ・ポイントを使用してキャラクターのさまざまな数値や特徴、装備などを購入していきます。
今回は、その2回目で、勢力を選びます。実例は前回決めた「タコの宇宙海賊」で、すでに「背景:知性化種(アップリフト)」が決定しています。
●3)勢力を決める
「勢力」とは、「エクリプス・フェイズ」の世界における国家、惑星などの政治的な勢力で、キャラクターの思想や社会的な基盤を示します。基本ルールブックにある勢力は以下の通り。
アナーキスト:無政府主義者と訳されますが、政府を打倒したい反政府活動家ではなく、現代アメリカに多い「政府は最小限でいい」と思っている主権在民思想の持ち主です。割と自分で、何でもやってしまう開拓民系の人々は、利権で腐敗しやすい政府による制限や、ハイパーコープによる経済支配をうるさく思っているのです。シャドウランのランナーが「ネオ・アナーキスト」と呼ばれるのと同様です。
アルゴノーツ:名前はギリシャ神話でイアソンとともに黄金の羊毛を取りに行ったアルゴー船の乗組員である英雄たちのこと。技術による進化を推し進める最先端の科学啓蒙系の科学者集団とそれに賛同する人々です。
バルスーム:名前は、E・R・バローズによるパルプSFロマンス「火星のプリンセス」における火星の呼び名から。テラフォーミングが進みつつある火星の荒野に暮らす開拓民たちは、ハイパーコープのドーム都市やタルシス・リーグによる搾取支配に反抗し、自らを火星原住民として、こう呼んでいます。火星に適合したラスターか、安めの義体(フラット、スプライサー、ケース、シンス)を利用しています。
ブリンカー:ブリンクとは、辺縁の意味で、太陽系の外縁部に孤立し、独自の哲学や信条に従って自由に暮らす人々。自由度は高く、宇宙船操縦の技能が習得できる。
クリミナル:犯罪者。犯罪に加担したアンダーグラウンドで育ち、三合会、ナイト・カルテル、IDクルー、ナイン・ライブス、パックス・ファミリエなどの犯罪組織とも関係がある。組織のメンバーでもいいし、フリーランサーでもよい。
エクストロピア:名前に含まれるエクストロピーとは、「反エントロピー」(ネゲントロピー)の意味があり、人類の活動で、世界が活性化するという思想である。これは小惑星帯にあるハビタットの名前でもあり、内惑星圏を支配するハイパーコープと外惑星圏にいる独立主義者たちの間に立って、自由経済体制と富を追求している。
ハイパーエリート:内惑星圏を支配するハイパーコープのハビタットで生まれ育ち、ハイパーコープ支配において、多少の自由を犠牲にしても安定した生活を安全に送ることを選んでいた。遺伝子改造をしたバイオモーフを使用している。
ジョヴィアン(木星人):木星共和国の古臭い生体保守主義が支配する軍事国家の市民である。人間はそのまま、人間であるべきだと思っている。初期義体は名前のままのフラットか、遺伝子調整をしただけのスプライサーに限られ、ナノウェアや発展したナノテクは使用しない。
ルナー(月世界人):最初の地球外植民地である月面の住人で、地球の伝統を継承する。地球に思い入れがあり、地球奪還派にも好感を抱いている。義体は一般的で、安めのものを使用するが、「Sunward」では低重力の月面用飛行義体も紹介されている。
メルクリウス(Mercurial):水星や水銀の意味もあるが、ここでは、技術により進化した存在を指す。自意識を持つAIであるAGI(汎用人工知性体)、動物から知性化された類人猿、鴉、オウム、タコなどのアップリフト(知性化種)、あるいは、肉体へのこだわりを捨ててメッシュに生きる情報体(インフォモルフ)、人類の先へ向かって邁進するポストヒューマンなどが含まれる。形状によって専用義体を獲得するか、合成義体シンスを使用する。
スカム:屑と呼ばれる、宇宙空間の放浪者で、小惑星帯や惑星間空間などに漂う専用の宇宙艀などで暮らしている。アウトローの側面が強い自由人。内惑星圏の住民から見れば、宇宙海賊や無法者の集まり。
名士(Socialite):内惑星圏の上流階級。有名人でその生活は華やかである。芸術とは趣味ではなく、生き方である。エグザルト、シルフ、オリンピアンなどの高級クローン義体が一般的で、初期義体として、フラット、ポッド、アップリフト専用義体、人工義体全般を選択できない。
タイタニアン:土星の衛星タイタンを中心とするタイタン連邦で、技術主義を体験して育った。サイバーデモクラシーが産み出した「タイタンの多数世論(Titan Plurality)」は、他の独立国家ほど頑なではなく、自由度の高い政策運営と、国策企業による多元的なプロジェクトを推進している。義体は自由。
アルティメット:「究極」の名前の通り、ポスト・ヒューマン(次世代人類)への進化を目指す選民主義的な集団で、小惑星帯から外惑星において、東洋思想を含む哲学的な活動を行っている。軍事活動を重視し、「戦う哲学者」とも呼ばれる傭兵集団でもある。専用クローン義体「リメイド」は、人型ながら、どこか非人間的である。使用できない義体が多い。
ビーナシアン(金星人):金星の雲の中に浮かぶ浮遊都市(アエロスタト)の連合体である、モーニングスター・コンステレーションの関係者で、内惑星圏を支配する惑星連合の一部でありながら、巧みな交渉で改革を推進している。推奨義体にはクローン系から合成義体までさまざまなものが含まれる。知性強化型のメントンが推奨されているのは、社会制度やファッション、科学研究が発達しているからであろう。
例:タコの宇宙海賊としては、組織の制限が強い内惑星圏の政体は論外。クリミナル、ブリンカー、スカム、アナーキストあたりか? メルクルウスは推奨のひとつだが、今回は盗掘屋とかぶるのでパス。スカムだとちょっと用心棒と被りそう。 ブリンカーは居住区が遠すぎる。
宇宙海賊を目指すので、今回はクリミナルを選択。
■途中経過:データの確認
背景「アップリフト」、勢力「クリミナル」を選ぶと、ほぼ義体が決まる。
タコなので、「セカンド・スキン」という特徴を選ばない限り、タコ専用のオクトモーフの一択である。
入門用キャラクターなので、ここはそのまま。
ここまでで、以下が決まる。
「アップリフト」:回避+10、知覚+10、好きな知識系技能2つに+20
「クリミナル」:威圧+10、ネットワーキング:犯罪者+30
■専用義体「オクトモーフ」
インプラント:基本バイオ調整、基本メッシュ・インサート、大脳皮質記録装置(スタック)、カメレオン・スキン
特性値上限:30
耐久値:30 負傷値:6
利点:8本腕、嘴の攻撃(DV:1d10、格闘技能で使用)、墨放射(目潰し、特殊射撃:墨で使用)、柔軟(L2)、360度視界、水泳+30、登攀+10、機敏+5、直観+5、好きな特性値+5
CPコスト:50
クレジット・コスト:高価(最低3万クレジット)
■次回は、フリーポイントの割り振りなどについての予定