ファイアウォールへようこそ(15):エクリプス・フェイズ:ハイパーコープ
「エクリプス・フェイズ」の紹介15。
世界設定・編その2。
この連載は、朱鷺田祐介が「エクリプス・フェイズ」をGMするための覚書的なものです。「エクリプス・フェイズ」は、「シャドウラン4th」のライン・ディベロッパーだったロブ・ボイルが作成した最新SF-RPGです。詳しくは、本ブログの「ファイアウォールにようこそ」、あるいは「エクリプス・フェイズ」関連エントリーを参照してください。
おかげ様で、翻訳が決定しました。
来年夏予定です。(朱鷺田は監修です。詳しくはこちらのエントリーをどうぞ)
未訳RPGの紹介ということで、手探りでやっている部分が多々ありますので、訳語の揺れはご容赦ください。現在、戦鎚傭兵団の待兼音二郎さんを中心に、訳語選定が進んでおりますので、順次、それに合わせていきます。
R&Rステーションで、体験会が予定されています。次回は10/29(土)の予定。
●ハイパーコープ
太陽系全土に強い影響力を持つ星間企業をハイパーコープと呼ぶ。「シャドウラン」では「メガコープ」という多国籍企業が国家以上の主権を持っていたが、「エクリプス・フェイズ」も同様で、巨大な星間企業が、惑星連合を牛耳り、内惑星圏を事実上、支配している。これらのハイパーコープは、それぞれの利益を追求し、しばしば、非人道的な実験や差別的な搾取を行う。その上層部は、義体の乗り換えによって、不老不死を獲得した権力者集団で、まるでヴァンパイアのように人を超えた貴族階級として世界に君臨している。彼らのおかげで、世界はかくも便利になり、金星、月、火星の安寧が保たれているとも言えるが、火星や金星にとっては、高圧的な搾取構造を押し付ける存在であり、新経済で自由を謳歌する外惑星にとっては、脅威でもある。
「ファイアウォール」にとって、彼らはしばしば、危険な実験に手を出す危険性をはらんでいるため、敵対することも多いが、同時に、多くのセンチネルがハイパーコープの中に存在する。
●主要なハイパーコープ
・コグニート
主要分野:認知科学、精神インプラント、精神外科手術、神経学
主要基地:ソート(思考)(金星軌道)、フォボス(火星の衛星)
認知科学のパイオニアとして、人類の精神に関わる医療技術、身体強化を推し進めてきた。思考能力を強化する義体「メントン」の開発で知られる。惑星連合の重要メンバーだが、ロスト・ジェネレーションを生み出した子供の促成栽培実験「フーチュラ・プロジェクト」や、世界を滅ぼした戦闘AI「ティターンズ」の捕獲作戦など危険なプロジェクトに関与した前歴もある。
>>>「月のエゴ・ハンター」が狙う相手である。
・コメックス
主要分野:流通、運輸、配達サービス
主要基地:ネクター(月面)、オリンポス(火星)
コメット・エキスプレスは宅配、配送、星間物流、宇宙船輸送を専門とする企業だ。太陽系内に存在するトランスヒューマンのハビタットのほぼすべてで、しばしば現地の下請け業者を通じてサービスを提供している。太陽系の全域にわたって要所要所の軌道上に遠心力式射出施設(スリングショット)を配備した物流ハブを構築しているほか、大規模な宇宙貨物船団や宅配ドローン群も擁している。
>>>スリングショットは、扱いを間違えれば、正しい意味で「力学的兵器」になる。
・ダイレクト・アクション
主要分野:軍事、警備
主要基地:ヘキサゴン(地球=月系のラグランジュ5)
この政治からは距離を置く民間軍事会社は、“大破壊”以前からあるいくつかの傭兵団の生き残りが設立したもので、自治政府をもつハビタットや、ハイパーコープの施設に対して警備や保安のサービスを提供している。
>>>L5のヘキサゴンは、地球でのティターンズの活動ににらみを聞かせる軍事要塞だ。戦闘用義体を満載した宇宙戦闘艦の艦隊が常時、出入りしている。
・エコロジーン
主要分野:環境システム、遺伝子工学
主要基地:マクリントック(火星軌道)
エコロジーン社は遺伝子工学を応用したバイオ建築や環境ナノテク技術を専門とし、エコロジーをつねに重視している。
・エクソテック
主要分野:アップローディング、AI、電子工学、ソフトウェア
主要基地:スターウェル(メインベルト:火星=木星間の小惑星帯)
ハイエンドの電子機器、メッシュに対応したソフトウェア開発、はては、AI関連を専門とする企業で、精神のエミュレーション・システムから、エゴのアップローディングや義体への再着装、情報義体のためのシミュレーション環境開発などを行う。
・エクスペリア
主要分野:メディア(AR、VR、XP)、ニュース、娯楽、ミーム学
主要基地:エリュシオン(火星)
太陽系の娯楽、報道、メディアを支配するメディア企業で、進化した娯楽用環境をAR(強化現実)、VR(仮想現実)、XP(体験プログラム)で提供する。そのネットワークには無数のライフロガー、ブロガー、市民ジャーナリストなどが参加している。惑星連合におけるメディア操作の権威で、ミーム学(文化的な遺伝子)の研究から、惑星連合に不都合な報道を打ち消すミームを発信する。
・發勁(ファー・ジン)
主要分野:鉱山、エネルギー、バイオテック、工業生産
主要基地:新・大寨(ニュー・ダージャイ)
發勁は、ネットワークの構築と社会的責任の共有を社是とする採鉱とエネルギー生産の独占企業だ。
・ゲートキーパー・コーポレーション
主要分野:ゲートクラッシング、調査、XPメディア、星系外植民
主要基地:ゲイトウェイ(パンドラ、土星)
複数の科学研究機関とその後援企業が合併することで生まれたこのハイパーコープは、土星の衛星であるパンドラの表面に発見されたワームホール・ゲートウェイを解読して入り口を開いたことでその名を高めた。この国際企業連合は現在では、パンドラ・ゲートをくぐり抜けて探検に繰り出す“ゲート・クラッシャー”たちを資金面で援助している。
・ゴ・ニン・グループ
主要分野:銀行、農業技術、ロボット、各種サービス
主要基地:九十九(月面)
日系の金融企業を中心とした系列グループ。月の金融界に多大な影響力を持つ。現在、カイパーベルトの小惑星エリスに発見されたパンドラ・ゲートにアルティメットの傭兵を送り込み、支配権を確立しようとしている。
>>>名前については、まあ、言うな。
・ゴルゴン・ディフェンス・システムズ
主要分野:軍事技術、軍事、警備
主要基地:エクストロピア(小惑星帯)
武器、軍用車両、センサーなどの総合軍事産業で、外惑星企業の出世頭である。系列の軍事会社、メデューサ・シールドは高度に洗練された女性型の軍事義体を使うことで有名である。
・ニンバス
主要分野:電子工学、メッシュ・システム、遠隔エゴ送信技術、通信
主要基地:オクタヴィア(金星)
メッシュのインフラを担う通信系企業。超光速通信を用いた遠隔エゴ送信ネットワークを支配している。さまざまな噂があるが、多くの噂は、彼らがエイリアン「ファクター」との接触を行い、技術開発を進めているというものに至る。別の噂では彼らが秘密のパンドラ・ゲートを支配しており、エゴ送信の際に違法コピーした人格を星系外植民に送り込んでいるともいう。
・オムニコア
主要分野:ナノテク合成、化学、エネルギー、反物質
主要基地:モノリス3(水星)、ファインマン(月面)
《大破壊》前のエネルギー界の重鎮、モノリス工業から生まれた企業で、ナノテク産業とエネルギー関連に強い。同社から別れたスターウェアと激しい企業戦争を展開している。水星に反物質生成基地を保有しており、これを危険視する向きもある。
・パスファインダー
主要分野:星系外植民、鉱山、調査
主要基地:マディム渓谷(火星)
パンドラ・ゲートを使って太陽系外への植民活動を行なっている主要企業。太陽系外での地下資源開発を推進しており、専用義体を提供している。エコテロリストや異星環境の保護主義者から攻撃されることが多い。
・繁栄グループ
主要分野:農業、水産物養殖、製薬
主要基地:セレス(小惑星帯)、Lu Xing(ルー・シン/火星)
微小重力環境での農業、水耕栽培、水産物の養殖により、安価な食料やドラッグを生産している。《大破壊》の数年後に、ティターンズAIの再暴走でハビタットの一つを失う惨劇に出会ったが、一説には、ある種のドラッグ実験が暴走したことを隠蔽したとも言われている。
・スキナテシア
主要分野:遺伝子工学、クローニング、バイオテック
主要基地:プタハ(火星)
バイオ義体のデザインにおいて、主導的な立場にある企業。戦闘義体や娯楽用ポッドの開発でも一歩先んじる。
・スキンセティック
主要分野:遺伝子工学、クローニング。バイオテック
主要基地:エクストロピア
ネオジェネシス、すなわち、新たな生命体の創出や、バイオ技術による生体の急激かつ広範な改変を専門とするこの無政府資本主義企業は、クローン技術、遺伝子工学、義体設計で限界に挑みつづけている。
・ソラリス
主要分野:銀行、保険、投資、先物市場、情報ブローカー
主要基地:なし
ソラリスは太陽系を代表する金融投資系ハイパーコープで、各種保険、先物取引、情報仲介業務、ハイリスク投資商品などを取り扱っている。ソラリスはヴァーチャル企業であり、行員ひとりひとりがワンマン・オフィスとして機能している。
・ソマテック
主要分野:知性化、薬事農業、製薬、遺伝子工学
主要基地:クレバー・ハンズ(月面)
動物の知性化に関するリーディング・カンパニーで、労働力として条件付けされた知性化種の他、遺伝子改造により薬品を直接生産する農作物や家畜など、さまざまな「有用な生命体」を生み出してきた。
・スターウェア
主要分野:ロボット、航空宇宙技術、宇宙居住区の建設
主要基地:コロレフ造船基地(月面)、ヴェスタ(小惑星帯)
オムニコアと同じくモノリス工業から生まれた企業で、ロボットから、宇宙船、宇宙居住区までの建造を専門とする。オムニコアとは流血の企業戦争を繰り広げている。AI入りのロボット労働者を多用しており、月面での雇用創出に寄与していないことが指摘されている。近年はエイリアン「ファクター」と接触し、宇宙船建造の新技術を入手したと言われている。
・ステラー・インテリジェンス
主要分野:諜報、データ・マイニング、情報ブローカー、秘密工作
主要基地:メモリー・ホール・トーラス(火星軌道のトロヤ小惑星)
元国連情報局の生き残りが創建した「民間の諜報機関」。情報収集や分析、メッシュからのデータ収集(データ・マイニング)などを行う他、情報機関が行なっていた各種の特殊作戦(諜報活動、データ窃盗、エスピオナージ、世論操作、潜入工作)などを行う。ステラーは、事実上、惑星連合の秘密警察にして、洗脳機関とみなされている。
・テラ・ジェネシス
主要分野:テラフォーミング、環境システム・マネージメント、環境データ
主要基地:コードウェル(ヴァルカノイド小惑星)、アショカ(火星)、エレグア(地球軌道)
南アフリカと東南アジアの環境エンジニアリング企業から誕生したテラ・ジェネシスは、労働組合が運営所有する特殊な企業である。火星の居住区を運営する一方で、地球の環境再生のために、地球環境を調査するため、地球軌道上の研究施設を持つ。また、水星と太陽の間にあるヴァルカノイド小惑星にあるコールドウェル・パンドラ・ゲートを所有しており、太陽系外植民地でのテラフォーミングや環境改造に取り組んでいる。
次は、犯罪企業かな。