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October 20, 2011

ファイアウォールへようこそ(18):エクリプス・フェイズ:AF10年 宇宙の旅

 「エクリプス・フェイズ」の紹介18。
 世界設定・編その5

 この連載は、朱鷺田祐介が「エクリプス・フェイズ」をGMするための覚書的なものです。「エクリプス・フェイズ」は、「シャドウラン4th」のライン・ディベロッパーだったロブ・ボイルが作成した最新SF-RPGです。詳しくは、「エクリプス・フェイズ」関連エントリーを参照してください。

 おかげ様で翻訳決定未訳RPGの紹介ということで、手探りでやっている部分が多々ありますので、訳語の揺れはご容赦ください。R&Rステーションで、体験会が予定されています。次回は10/29(土)の予定。

●EP世界の宇宙旅行

 太陽系全域を舞台とする「エクリプス・フェイズ」の世界は、恒常的に宇宙旅行が行われており、PCもしばしば、惑星間、宇宙居住区間を移動するために、宇宙旅行をします。
 太陽系は広大です。
 残念ながら、まだ、超光速航行は実現されておらず、宇宙船の推進システムは、水素ロケットが多く、さらに核癒合、プラズマ、反物質を用いるものが用いられるようになったものの、推進剤を熱し、後方に噴出させる反動で飛ぶものであることには変わりません。この方法では、内惑星圏の間ならば、まだしも、外惑星に至る旅は、何週間、何ヶ月もかかるものです。

>>>速度は上がったが、あくまでも、推進剤と重力カタパルト次第という奴だ。
 同じ惑星とその軌道上なら数時間から1、2日で、内惑星同士なら数日以内に、到着できるでしょう。

>>>宇宙の旅は退屈なものだ。加速と減速の間は、ただ巡航するだけだ。

●エゴキャストの弱点

 しかし、魂(Ego)をデジタル化できることによって、1500万キロ以上の遠い惑星への旅行は、物理的な物から、電子的な物に変わりました。デジタル化した魂をエゴキャストし、現地で新しい義体に再装着すればいいのです。これならば、光の速度で旅することができます。
 エゴキャストによる宇宙旅行は便利に見えますが、いくつかの弱点があります。
 まず、第一はコストです。エゴキャストそのものが、非常に高価(Expensive)であるとともに、必要な義体を現場で調達するための追加コストがかかります。特に、ファイアウォールのミッションで使おうとするような特殊な義体であれば、簡単に用意できるとは限りません。

>>>特に、辺境の居住区では義体の選択肢がない場合も多い。クローン培養のバイオモーフは成長させるのに何ヶ月もかかるが、機械式の人造義体やロボットなら、すぐに手に入る。

>>>木星共和国などでは、収監された罪人の義体を取り上げ、旅行者のレンタル用に提供している。これらの義体レンタル料は購入するに比べれば、ずいぶん安いが、場合によっては、別の意味で有名になってしまうかもしれない。たとえば、有名な殺人者の義体とか……

 第二に、送信先での入国トラブルです。エゴキャストされた場合、魂はデジタル・データの状態で現地につきます。義体に入ることができれば、それでOKですが、多くの国家や宇宙居住区では、エゴキャストおよび義体への再装着(リスリービング)の施設を監視しており、デジタル入国管理をしています。この場合、デジタルで入国した人物は、デジタル状態で調査されます。場合によっては、精神外科の技術を使って精神探査する場合もあります。疑わしい場合、再装着を中止され、デジタル状態で尋問されます。あるいは、義体に警察の情報義体やAIが仕込まれたり、精神外科技術によって、記憶の改竄処理をしたりする場合もあります。

>>>木星共和国などの強権国家の場合、時にヴァーチャル・リアリティを駆使した地獄のような拷問が用いられることもあります。ヴァーチャル空間では時間の加速も低速化もできますし、あらかじめフォーク(魂のコピー)を作成してそれを尋問すれば、オリジナルの記憶を汚すことなく、情報を引き出すことができるのです。もちろん、そのフォークは使用後、削除されます。

 これは、正面から入国した場合の話ですが、国家に管理されたくない場合、犯罪シンジケートが運営する闇のエゴキャスト、いわゆる、ダークキャストという方法を取ることもできますが、こうした裏ルートはさらなるリスクを産みます。ええ、コスト以外に。

●ダークキャストの裏側に

 エゴキャストとは、魂の完全なコピーを取り(エゴスキャン)、宇宙の彼方に送信するということです。
 魂の合一性を維持するため、エゴキャストされた後の元の義体およびオリジナルのエゴは破棄、あるいは放棄されるのが基本的な手順ですが、その段取りを無視する者もいます。闇のルートを使うなら、その関係者が正直かどうかは色々あります。
 まず、元の義体を破棄せずに横流しするものがいます。エゴキャストの代金の一部として、捨てていく義体を売却することはよくあることですが、人によっては、保存して「帰国後」に用いる場合もあります。高価な義体を盗む人は多いのです。同様に、予約したはずの義体が盗まれることもあります。
 さらに、魂が誘拐されてしまうこともあります。
 元の魂が破棄されずに別のデジタル空間に囚われていたり、エゴキャストされた先で誘拐犯のデータストアに監禁されたりすることもあります。ひどい場合には、勝手にコピーされた魂が勝手に利用されたりします。これをエゴナッピング(エゴ+キッドナッピング(誘拐))と呼びます。

>>>情報義体状態になったエゴを、メッシュ上の奴隷労働にこきつかったり、安い人造義体に放り込んで殺しあわせたりするような奴らがいくらでもいるという訳だ。

>>>場合によっては、「あなた」が複数誕生し、何年か後に偶然、再会するということすらあるのだ。

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