ファイアウォールへようこそ(23):エクリプス・フェイズ:金星事情
「エクリプス・フェイズ」の紹介23。
この連載は、朱鷺田祐介が「エクリプス・フェイズ」をGMするための覚書的なものです。「エクリプス・フェイズ」は、「シャドウラン4th」のライン・ディベロッパーだったロブ・ボイルが作成した最新SF-RPGです。詳しくは、「エクリプス・フェイズ」関連エントリーを参照してください。
おかげ様で翻訳決定
未訳RPGの紹介ということで、手探りでやっている部分が多々ありますので、訳語の揺れはご容赦ください。
R&Rステーションで、体験会が予定されています。次回は1/28(土)を予定。
今月発売のR&R誌から、リプレイ記事が始まります。舞台は金星の予定。
今回は、前回に続き、サンプル・キャラクターを紹介しながら、「エクリプス・フェイズ」の世界の四方山話をしていこうかと思います。
●サンプル・キャラクター四方山話: 金星の交渉人
さて、惑星連合が、モーニングスター・コンステレーションの意図を妨害しているという噂について、お話しましょうか? ---金星の交渉人
さて、今月発売のR&R88号からリプレイ記事が連載となりますが、その舞台は、金星です。
「エクリプス・フェイズ」の金星は、惑星連合から独立してわずか4年という若い国家です。金星政府「モーニングスター・コンステレーション」は、金星の上空に浮かぶ20余りの空中都市(エアロスタット)と、それに属する地上鉱山、軌道上の宇宙居住区(ハビタット)の緩やかな連合体です。
金星の場合、分厚い雲の下にある地表の環境は、数百度の高温、100気圧近い高圧の状況で、機械式の合成義体(シンセモーフ)以外は活動できません。その代わり、高度40~60キロの大気上層は、呼吸こそできないものの、ほぼ1気圧で、気温も人類の活動に適しており、金星へ移民した人々はこの空域にバルーン型の空中都市を建設しています。イメージは、「スターウォーズ EP5 帝国の逆襲」に出てくる空中都市でしょうか?
人類の呼吸できる大気は通常の金星の大気より軽いため、巨大なバルーン状のドームと、超軽量強化素材の組み合わせで、空中都市を浮かべることができるのです。
空中都市は、美しく豊かな街です。空中都市から見る雲海の風景は、太陽系の中でも特に美しいもので、セレブ向けのリゾート地として、発展しています。主要産業は、文化、ファッションやテクノロジー製品ですが、それは、地表で過酷な採掘労働を行なっている機械義体労働者たちの活動の上に成り立っています。ある意味、天国と地獄が明らかに存在しているのです。
金星政府「モーニングスター・コンステレーション」が惑星連合から独立したのは、金星開発で意見が対立したからです。地球を失い、多数の難民を抱えた惑星連合は、火星に続いて、金星のテラフォーミングを計画していますが、それは数百年の時間をかけて、大気環境を地球なみに変えていくというもので、リアリティと即効性に欠ける上、それが実行された場合、空中都市はもはや浮かべなくなるのです。
空中都市に愛着を持つ金星市民は、テラフォーミングではなく、空中都市を維持しながら、大気上層の地球化を図り、雲海に新たな生態系を生み出す道を選びました。まだ、実験の段階ではありますが、雲海で生活できる空中プランクトンや飛行クラゲ型生物も生み出され、自らの翼で空を飛べる義体も誕生しています。
もともと金星は、ハイテクに理解があり、義体の自由が認められていますし、文化的にもファッションなどの先鋭さが認められています。
金星の交渉人は、これらの空中都市の高官として、世論操作や情報コントロールを担当しています。
●金星の主要な場所
・オクタヴィア
金星政府「モーニングスター・コンステレーション」(MC)の首都であり、金星第一の宇宙港を持つことから、真にコスモポリタンな都市です。人口50万を誇る巨大な空中都市で、市長のハリス・サピエンは、無性(ジェンダーとして性別を持たない)の政治家ですが、そのカリスマ性、MC創設に果たした役割などから、市民に愛される統治者です。
オクタヴィアには、金星ベースのハイパーコープであるニンバスの本社があります。ニンバスは、通信系の企業で、エアロスタット間の通信やエゴキャスティングを担当しています。
また、オクタヴィアには、群体精神を持つ「ネオ・シナジスト」たちの拠点があることでも知られています。彼らは、太陽系外コロニー「シナジー」で行われた精神共有実験の被験者で、長きに渡り、精神を共有していたことで、一個の生物のように協力しあうことができます。「ネオ・シナジスト」はシナジーから来たシナジストたちをニンバスの最新ヘッドウェアで、一般市民とリンクすることが可能になったことで生まれたコミュニティです。
・アフロディーテ・プライム
バイオエンジニアリングと観光を主要産業とする中堅都市。人口30万人。
金星大気内で生きられる生命体の開発に挑む金星再開発の最前線でもあり、都市内には、招来の金星大気生態圏を再現したドームがあります。これは、貴重な観光資源でもあり、飛行型義体での遊泳体験を求めて、年間40万人もの観光客がアフロディーテを訪れます。
・ルシファー
金星地表での鉱石採掘を主要産業とする空中都市。23万の人口のうち、5万人は、地表の採掘用ロボットを遠隔操縦する、情報体市民です。
・ザ・シャック
アエロスタット建設用の空中プラットフォームで、400mもの建設用アーム6本で複数の都市建造を行えます。現在も2基を建造中。13万人の市民はすべて、この建設要員です。社会体制は、共産主義で、地球の国家が壊滅した今、太陽系最古の共産主義国家を誹謗しています。
・パールヴァティ
金星政府にも惑星連合にも属さない独立系空中都市。快楽を極めたプライベートな時間を過ごすための高級リゾート都市で、多くのVIPがお忍びで利用しています。
・エテメンナキ
惑星連合に所属する空中都市で、オモニコア社系列のディープ・リーチ社の支配下にあります。
・ゲルラッハ
軌道上に浮かぶオニール型宇宙コロニーで、75万人の人口を擁しますが、これは〈大破壊〉以降、難民を多数受け入れたためで、すでにコロニーの許容限界を超えています。ゲルラッハは金星への入り口であり、金星の環境になれるために、ここでしばらく、馴致期間を過ごすのが、低重力環境で生活している人々には必要です。
・ソート
惑星連合に属し、ハイパーコープ「コグナイト」の支配下にあるトーラス型宇宙コロニー。AIの研究を行なっています。
・アンビリーナ
犯罪結社「パックス・ファミリエ」が支配する空中都市。同結社は、創設者クラウディア・アンビリーナのクローンとエゴフォークだけで構成され、常時、XPで記憶を共有しています。外見は少しずつ違うものの、彼女らはすべて、「彼女」の一部なのです。