人狼ゲーム情報最前線(更新版20130911)
巷で話題の「人狼ゲーム」。
アナログ・ゲームからスタートして、TV、演劇、携帯アプリと拡大中の人狼ゲームは、今年、一気にブレイクし、多数の人狼ゲーム、人狼本が出つつある。
ブームの波に溺れないためにも、今、ここで人狼の基礎知識と情報を整理しておこう。
今回は、今週金曜日25時5分からフジTVで放映される「人狼 嘘つきは誰だ? Village:4.1特別編」応援企画として、記事ページを更新。
映画「人狼ゲーム」は、10月26日公開。桜庭ななみ主演
▲以下は、朱鷺田祐介が今後の覚書としてまとめたものである。情報には欠落があることをあらかじめご了承ください。もしも、「こんな人狼ゲームの情報が!」という方はぜひ、お教えください。 また、人狼の画像をAmazonより追加しました。
■人狼ゲームとは何か?
「人狼ゲーム」は、ヨーロッパの伝統ゲームがゲーム化されたもので、当初は、マフィアと市民の戦いを扱っていたが、21世紀初頭、村人と人狼の戦いにテーマを変えた「汝、人狼なりや?」がカードゲームの体裁で発売されたのを皮切りに、続々と人狼の名前を冠した形で製品化されていった。
・タブラの人狼(ダヴィンチ・ゲーム。おそらく日本でもっとも普及しているもの。日本語版ルール付きがゲーム専門店などで購入できる。9月にはホビージャパンより最新版の日本語版が発売予定)
小さい箱の旧版
やや箱が大きい新版 こちらはホビージャパンで日本語化予定
・ミラーズホロウの人狼(「ワーウルフ・オブ・ミラーズホロウ」 lui-meme日本語版ルール付きがゲーム専門店などで購入できる)
・究極の人狼(アークライト。多数の役職があり、最大74人までプレイできる。第2版 完全日本語版が9月発売)
人狼ゲームは、もともと、伝統ゲームから発したため、各会社やプレイグループが独自の工夫を持ち込み、登場する役職や手順にはさまざまなバリエーションがある。
ゲームの内容は、とある辺境の村に入り込んだ人狼を退治するため、虚々実々の心理戦を展開するというもので、ゲームのコンポーネントとしては、役職を決める時のカード(およそ20枚前後)とルールブックだけであるが、非常に奥が深く、昔からのボードゲーム・ファンのみならず、パーティ・ゲーム好きの若い人々にも人気だ。およそ7名から23名程度(他に進行役が1名必要)で遊べるので、イベントとしても盛り上がる。ゲームマーケットにも、人狼好きは多く、カラフルな人狼カードや人狼のバリエーションが色々製作されており、役職の名前や数、ルールの細部が違うものがある。
具体的な「人狼ゲーム」の事例については、本稿の最後に簡単なプレイ風景をつけました。
▲最近の人狼ゲーム
・うそつき人狼 (株式会社人狼。日本製のベーシックな人狼ゲーム。日本向けの分かりやすいカードが多い。同社は人狼の出前やイベントの開催などを行なっている)
・幻冬舎エデュケーション 「心理型会話ゲーム 人狼」
入門用普及型の人狼。ISBNコードがあり、書店でも入手できるのが特徴。上記の株式会社人狼が監修、イラストは上田バロンさん。厚くて頑丈なカードが扱いやすい。役職は基本的なもののみ。
・「人狼 ~嘘つきは誰だ?~カードバトル」(フジTV「人狼~嘘つきは誰だ?」とのコラボ。発売元はBANDAI。8月10日発売)
かなり、役職が多いが、基本的にオーソドックスな感じの人狼。
・ワンナイト人狼 (人狼のコンセプトをもとに、人狼を1夜で遊ぶ)
■広がっていく人狼ゲーム
人狼ゲームは、アナログ・ゲーム・ファンに広がった後、匿名性を生かしてインターネット上で遊ばれるようになる。いわゆる人狼村や人狼BBSである。これによって、従来のボードゲーム・ユーザー以外にも広がり、ボードゲームといえば、もっぱら、人狼ばかりプレイする濃密な人狼ファン層が形成された。いわゆる人狼クラスターである。
近年では、携帯アプリで簡単に遊ぶことができるようになったことで、進行役が不要になり、中学生から社会人まで広い層に広がりつつある。アナログゲームはカード系しかしないと思っていた筆者の息子も高校の仲間とアプリの人狼を100回以上遊んでいるという。
人狼ゲームのムーブメントは、演劇やTVに広がり、3月末から散発的に放送されてきたフジTV「人狼~嘘つきは誰だ?」およびTBS「ジンロリアン」の影響で、人狼ゲームの知名度は一気に拡大した。TVのエンターテイメントとして、ブーム化することに懸念を表明する向きもあるが、前者フジTV「人狼~嘘つきは誰だ?」は4回の放送で、段階を追ってプレイが進化しており、可能性を感じさせるし、7月5日のTBS「ジンロリアン」は生放送で視聴者が追放者を決めるという実験的な部分があった。
演劇については、人狼ゲームを題材にした、インプロ系の公演がある。筆者はまだ観劇の機会を得ていないので、内容に関する評価は避けるが、新撰組と組み合わせたものはシチュエーション的にも興味深い。
▲TV
フジTV 「人狼~嘘つきは誰だ?」
(3月27日、5月17日、5月24日、6月24日、9月13日)
TBS「ジンロリアン」
(4月4日、7月5日)
▲演劇
・人狼 ザ・ライブプレイングシアター
舞台上で人狼をプレイする演劇。設定により「人狼TLPT×新撰組 壬生村の狼」「人狼TLPT×吸血鬼 渇愛の宴」がある。
・観客人狼×村人役者
観客が人狼になって、村人を食い殺すという趣向。第6回ルナティック演劇祭で最優秀演出賞受賞。先日のTRPG文華祭に来てくださったインプロ部「Platform」のメンバーも出演。
・棋士の人狼 囲碁VS将棋 棋士による人狼 ニコ生にて放送。次回は8月4日。
さらに、7月25日に竹書房から発売される川上亮さんの小説「人狼ゲーム」はすでに、映画化が決定しています。2013年公開予定。なお、川上亮さんは、グループSNEのメンバーであり、アナログゲームメーカー株式会社コザイクの代表でもある、ライトノベルズ作家・ゲームクリエーターの秋口ぎぐるさんです。
また、SCRAPのリアル脱出ゲームでテーマになったこともあり、ゲームブック版「人狼村からの脱出」が刊行されています。
梅田LOFTで行われる「約100人のブックカバー展」に、TANSANFABRICが参加。9月15日に「読書人狼」を開催。
■今後の人狼関係製品予定
さて、この夏から秋にかけて、人狼ゲームがどんどん一般向けに発売されます。(以下は、朱鷺田の手元に届いており、公開可能な情報の一部です。情報提供求む!)
・富士見書房から、9月20日に、「『人狼』カード&プレイブック」が発売されることになりました。カード16枚+基本的なガイダンスから、インタビュー、テクニック集まで。
情報源 「お笑いナタリー」
・ファミ通BOOKS『人狼読本(仮)』(エンターブレイン。2013年夏。携帯アプリを中心にした人狼のガイドブック)
・ダンガンロンパ1・2 カードゲーム 超高校級の人狼
ゲーム製作:アークライト 発売:アルジャーノン・プロジェクト 今秋発売
情報ソースその2
追記:公式サイトあります。カード枚数が180枚。ダンガンロンパ1・2のキャラクターになって、学級裁判を行なう。人狼ルールに加えて、アイテムカードやキャラクターカードなどが含まれるとのこと。
・その他、秋口から11月4日開催のゲームマーケット2013秋に向けて、水面下で、人狼関係のゲームや書籍企画が複数動いているという。人狼小説を買いているという作家さんのTweetも散見する。情報公開されたり、公開許可が出たあたりから、またコメントしたいと思います。ゲームマーケット秋では人狼体験ブースも用意されるとか。
■スモールパブリッシャーの人狼
コミックマーケットで発売されたスモール・パブリッシャーの人狼ゲームがどんどんAmazonで買えるようになっています。
・箱庭の人狼 学園物人狼、少人数での対戦ルールもあり。
・こっくり人狼 こっくりさんと人狼を組み合わせた作品
・トガの狼
美麗系人狼カード。絵が素晴らしい。
さらに、複数の人狼系ゲームがゲームマーケットなどで制作され、頒布されている。筆者は『男狼』などを確認しているが、2013年春のゲームマーケットに発売されたものの中で、和風人狼などいくつか入手できなかったものがある。
また、TANSANFABRICが人狼にインスパイアされた「人間ゲーム」を製作販売している。
▲新撰組 壬生狼
人狼と新撰組を組み合わせた「新撰組 壬生狼」(Short Line)。2007年に作られたとは思えない最新人狼文化にマッチするスタイリッシュな人狼です。
■人狼にインスパイアされたゲーム
この他、人狼のシステムにインパイアされた「正体隠匿系」のゲームがいくつもある。多くの場合、処刑(追放)を排除することで、小人数で短時間に遊べる。
『レジスタンス』(ホビージャパン):テロ集団に潜入し、彼らの活動をこっそり阻害する。
『レジスタンス:アヴァロン』:上記のアーサー王バージョン。魔法使いのマーリンを守りながら、悪と戦う。
『悪魔城への馬車 完全日本語版』(アークライト):2つの秘密結社のメンバーが馬車に乗り合わせて虚々実々の心理戦を展開する。
■海外
海外の人狼系作品については、Board Game GeeksのWearwolf/Mafiaの項目が参考になります。新作として上がっている「Blood Bound」が面白そう。
■■人狼ゲームの進行■■
以下は、オーソドックスな人狼ゲームの進行を例示したものです。
ゲームやプレイグループ、プレイ環境によって細部が異なりますので、あらかじめ、ご理解ください。
ゲームは、司会者を決め、その人の進行で進む。
伏せて配られたカードで、村人側と人狼側に分かれ、村人側は人狼をすべて駆逐すれば勝ち、人狼側は村人を人狼の数以下に減らせば勝ちとなる。製品によっては、人狼1名を含むプレイヤー5、6名からもプレイできるが、バランスとしては、人狼2名に、村人側の役職として予言者(占い師)とボディガード(狩人)を含む8名以上(+司会進行役)がやはり面白いだろう。
役職はカードでランダムに決まる。役職は公開してはならない。プレイヤーは全員その村の住民であるが、こっそり、人狼が混じり、夜な夜な村人を食い殺していく。
役職が決まったら、以降は、昼のターンと夜のターンが繰り返される。昼のターンには、村人が話し合って、人狼と思われる人物を探り出し、処刑する。夜のターンには人狼が村人を一人食い殺す。予言者は夜に誰かを占い、人狼かどうかを知ることができる。ボディガードは誰か一人を護衛し、人狼から守ることができる。
▲進行
・昼のターン
話し合いで、人狼と思われる人物を1名選び、処刑する。
・夜のターン
役職の活動。全員が顔を伏せ、目を閉じ、軽くテーブルを叩きながら、司会の指示に従って、役職のプレイヤーが行動する。基本的にプレイヤーは無言で、目つきや顔、指差しなどで対応する。
予言者:村人1名を占い、人狼かどうかを知る。
ボディガード:村人1名を選び、その人物を人狼の襲撃から守る。
人狼:村人1名を選び、食い殺す。
・基本、昼のターンから始めるが、その前に、予言者の占いを入れる場合が多い。
▲プレイ風景
(プレイヤー8名、うち、人狼2名、予言者1名、ボディガード1名、村人4名)
司会:君達は中世ヨーロッパの辺境にある忘れ去られた村の住人です。これは逃げ出したり、救援が来たりしないということを示します。
あなたがたの村に人狼が入り込み、村人を食い殺してその姿に化けています。人狼は毎晩、村人を食い殺しており、このままでは村は滅びてしまうでしょう。
そこでやむなく、皆さんは人狼をあぶり出すことに決めました。
ゲームとしての勝敗は、村人がすべての人狼を駆逐したら、村人の勝ち、村人の数が人狼の数以下になったら、人狼の勝ちです。
……という訳で5分間の話し合いで今日、処刑する人物を選んでください。
A:さっきから挙動不審なB君が人狼ではないかと?
B:ち、違う!
C:あからさまに怪しいですね。
D:まあまあ、Bさんは多分、何かの役職が来たのでしょう。ですよね?
B:ええ、いや、秘密にすべきですよね?
司会:カードの公開は禁止です。また、人狼は嘘をつくこともあります。
A:まあ、今日は情報もないし、Bさんでよいのでは?
C:賛成!
E:Bさんにこだわりますねえ?
逆に、お二人が人狼では?
C:な、なんだと?
A:分かりました。他の人も検討しましょう。さっきからずっと黙っているFさんとGさんは、人狼ですか?
F・G:違いますよ。ボクたちは善良な村人です!
一同:あやしい!
H:あのお、無視されていますが、私も村人です。
E:反応してくれてありがとうございます。そのまま黙っていたら、処刑候補でした。
とりあえず、Bさんが役職持ちかどうかを試しましょう。今夜、Aさんを占ってください。これでAの潔白が確かめられます。いいですよね、Aさん?
A:ええ、もちろんですよ。
E:これでBさんが死んだら、Aさんが人狼候補ですね。
C:で、今日はどうするんだい?
E:ここは息を潜めているHさんで。
一同:まあ、そうですかね?
H:なーぜーだー。
議論に加わらず、沈黙しているのは、他の人に手がかりを与えないので、実は村人側としても、地道な不利を重ねていることになる。人狼も目立ち過ぎないように黙ることがあるので、議論に参加せず、黙っているプレイヤーは吊られる(処刑される)ことが多い。
Hさんが処刑され、テーブルから離れた観戦スペースへ。実は夜になってゲームの真の役職を見るのが楽しい。
司会:全員、目を閉じてください。
予言者、目を開けてください。誰を占いますか?
占う相手を選んでくれたら、私が身振りで教えます。
Bさんが予言者として、目を開け、Aさんを占って人狼でないと知る。
司会者:ボディガードの人は目を開けてください。今夜守りたいプレイヤーを選んでください。こっそり指さして。
目を開けたのはDさんで、一瞬悩んだ後、守る対象として、Bさんを指定する。
司会:目を閉じてください。次に人狼は目を開けてください。今夜、殺す相手を選んでください。
そこで目を開けたのは、なんとEとG。そして、Aさんを食い殺すことにする。
司会者:夜が明けました。大変です。Aさんが死んでいます!
一同:なんだって!
E:もしかすると、私はとんでもない間違いをしていたのかもしれません。Aさんは正しいことを言っていたのかも。
F:ああ、昨日、指摘されたBさんの挙動不審の件ですね。
G:まあまあ、Bさん、あなたは予言者なのでしょう?
B:カミングアウトします。予言者です。昨日はAさんを占って、村人だったことを確認しました。
C:うーん、まだ、私はBさんへの疑いが消えませんねえ。
D:私はBさんを信じたいですね。ああ、ボディガードの人が生きていたら、次はBさんを守ってくださいね。
実は、これはブラフである。Bさんを守る意味でDさんは自ら、こうコメントした。
G:昨夜、ボディガードは誰を守ったのかな?
C:流れとして、Bさんじゃないかな? 人狼もそれを読んでAさんに行った。次はAさんに同調した私が殺される番ですかねえ?
E:……振り出しに戻りましたね。では、今日、処刑するのは? 消去法で言えば、Fさんですかね?
F:しゃべりすぎですよ、人狼さん。
E:いや、ちょっと待って。私は論理的に……
D:そうですね。人狼がしゃべらないというのは思い込みですよ。積極的に村人を減らそうと会話する可能性も高い。
C:確かに、Bさん処刑に反対する振りをして、Aさんの動きを封じ込めていましたね。
かくして、Eさんが処刑され、その晩、残ったGがF を食い殺す。BさんはCを占って、これも人狼でなかったため、翌日、ボディガードであることをカミングアウトしたDの主導で消去法からGを炙りだして、村人側の勝利となった。
■人狼はどこまで行くか?
かくして、人狼ブームがどこまで広がるか、興味深く見守りたいと思う。
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