レビュー:The Flow of the History:歴史悠久
台湾のゲーマーであるAfongさんと知り合いになり、彼を経由して台湾のMoaideas Game Designの新作「The Flow of the History:歴史悠久」をいただいた。デザイナーはJesse Li。「鋼鉄と火薬」シリーズのデザイナーというのがわかりやすいだろう。
「The Flow of the History:歴史悠久」は、割とライトに遊べて、意外にがっつり感のあるゲームだったので、最近、ゲーム会のお供に加えている。来月11日に開かれるゲームマーケットにも出展するようなので、紹介したいと思う。
「The Flow of the History:歴史悠久」
対応人数:3-5(4-5がベスト)
プレイ時間:60-90分(朱鷺田の体感では、インスト10-15分、初見プレイで75分)
対象年齢:12歳以上(歴史ネタがある程度分かるほうが面白い)
■歴史イベントを買って国家を育てよう!
「The Flow of the History:歴史悠久」(以下「歴史悠久」)は、人類の文明化の課程をシンプルなゲームに落とし込んだものである。前作の「鋼鉄と火薬」が文明のさまざまな要素を表すカードをコストか機能かで使い分け、プラミッド上に配置されたカードを取っていくタイプのゲームであったが、今回の「歴史悠久」では、資源トークンという通貨相当のものが導入され、基本的に文明カードに値段をつけて買っていくというシステムになっている。
・文明カードの実例
文明カードは、縦向きの「政体(政府)」「建築」「部隊」「知識」の4種類と横向きの「元首」「世界遺産」の2歯類があり、前者は重ねていくが、後者は重ねず、世界遺産はすべて効果を持つ。元首は最新の1枚だけが残り、以前のものは廃棄される。
それぞれ、背中に時代の区分が描かれており、初期に配布される基本的な政治体制となるS、最初の市場に並ぶ5枚を指定するA、以降の時代を示すⅠからVまでの時代配分、最後に残る「インターネット」と「未来」(この2種類は世界遺産)の合計67枚になる。
・初期セッティング
各自に資源トークン4個と初期の政治体制を表すSカードを1枚受け取る。
市場に5枚のAカードを配置する。(ルールブックでは5名の場合、時代Ⅰを1枚加える)
・シンプルな投資→完成のシステム
ゲーム的には、非常に単純なシステムだ。
市場に公開されている5枚の文明カードから1枚を買うための投資を行い、完遂したカードを入手することで、国家を発展させていく。
各プレイヤーは手番に、5種類のアクションのいずれかをひとつ行うだけである。
アクションは5種類。
1:着手(Invest)
市場に公開されている文明カードの1枚を選び、そのカードの開発に着手する。着手した印に投資マーカーをそのカードの上に置く。さらに、その上に、資源トークンを最低1個、そこに置く。
投資マーカーは1個だけなので、一度に着手できるのは1枚だけだ。
2:完遂(Complete)
すでに着手した文明カード開発計画が完成したことにして、そのカードを受け取る。
上に乗っていた資源トークンはプール(英語ではSupply)に置き、投資マーカーを手許に戻す。
完遂で、文明カードを獲得したことで、「先駆者の利権(Investor Bonus)」が発生する場合はある。虫眼鏡のマークで指示されているアイコンを持っているカードがすでにあれば、それだけの資源トークンをプールから得られる。アイコンは7種類あるが、先駆者の利権で得られるのは、文化・技術・工業の3つである。
さらに、文明カードを手許に配置する。この配置がプレイヤーの国である。
縦向きのカードは4種類あり、以前のものの上に少しずらして重ねる。下になったカードの一番下にあるアイコンだけ見えるようにする。世界遺産は重ねず、全部公開する。元首は一度にひとりしか置けないので、前のカードは破棄する。
その後、配置時に発生する文明カードの効果を解決する。カードの効果は6種類かあるが、ここで重要なのは手許に配置した際に起こる「即時効果」と、戦闘を引き起こす「単体攻撃効果」と「複数攻撃効果」である。後者の攻撃効果が発生したら、このカードも含めて軍事アイコンを数え、攻撃対象の軍事アイコンと防衛アイコンの合計と比べる。攻撃者の方が多ければ、戦闘に勝利し、その部隊カードに書かれた効果が適用される。
・国の配置の実例
3:引取(Snipe)
他のプレイヤーが着手しているカードを買い取って自分のものにする。
まず、相手が乗せているのに等しい資源トークンを着手しているプレイヤーに支払う。カードに乗っている資源トークンはプールにおき、投資マーカーも本人の手許に戻す。引取を行ったプレイヤーは即座に文明カードを入手するが、先駆者の利権は得られない。
それどころか、この時点で、着手したプレイヤーは、まず、自分の交易アイコンぶんだけプールから資源トークンを得た後、さらにプールの半分を入手する(残念ながら、プールが足りない場合もある)
カードが自国に配置されたことで、カードの効果が発生する。(「即時効果」「単体攻撃効果」と「複数攻撃効果」)
4:発動(Activate)
文明カードの中で、手番を消費して使える効果を持つものがあるので、それを発動する。
5:収穫(Harvest)
農業アイコンの効果でプールを増やし、資源を補給する行動。
まず、農業アイコンのぶんだけ予備(Reserve)からプールへ、資源トークンを移動し、その後、プールの半分を受け取る。得られるトークンの数が、その時代の番号に足りない場合、足りない分は予備から直接もらえる。
■ゲームの終了と勝敗
文明カードは、時代ごとにシャッフルされた上、上から数字順になるように積み重ねられる。一番下が未来で、その上がインターネットである。
ゲームは「未来」が市場に出るか、誰かに獲得されると終了する。何ゲームかプレイしたが、未来が獲得されることはまずない。ひどい皮肉だ。
勝敗はアイコン数の合計で競われる。文明アイコンはそのまま1個1点で、他のアイコンすべてを合計し、その半分が得点になる。その後、世界遺産などで得点効果を持つものがあり、これがボーナスとなる。世界遺産は得点になりやすいので、積極的にとって行きたいが、途中のボーナスが少ないものも多く、バランスが難しい。
■プレイの感想
マップがないものの、文明を育てていくゲームは楽しいし、資源トークンによる開発→完成の流れをうまくやれば、色々入手できて楽しい。横から奪える引取やライバルを攻撃できる戦闘効果もあり、駆け引きが面白い。
ただし、引取ばかりしていると、資源不足に陥りやすく、着手→完遂の基本路線を大事にしたい。
収穫は相当頑張り、なおかつ、タイミングを見ないと意外に実入りが少なくなってしまう。
カードのそれぞれは歴史に対するシニカルな分析があって素晴らしい。
「未来」が高得点ながら、ほぼ入手できないとか、救いがないし、「世界遺産」の中に「マンハッタン計画」があるのも皮肉である(ちなみに、防衛アイコンが山のようにつく)。
元首カードに登場する歴史上の偉人の効果も実にブラックユーモアが聞いている。戦闘すれば、資源を奪ってくるチンギス・ハーン、政治体制を破壊してしまうナポレオン、部隊カードを破棄すると文明カードを1枚得られるジョン・レノンなど面白い効果のオンパレードである。
数回、プレイした手応えでは、かなりかっちりと組まれたデザインで、着手→完遂の流れを追う国家育成ゲームであるが、投資ゲームの感覚で遊べるのがよい。最初に配られるSの政体カードと順番でかなり展開が変わる。初期の市場カードが固定されているので、やり込むとそこが定石化しそうなので、その場合は、AとⅠをシャッフルしてスタートするか、5人プレイのように、市場を6枚からスタートするのがよいかと思う。
なかなか面白いので、おすすめ。
特に、「鋼鉄と火薬」シリーズを気に入った人ならば、カードのアイコン表記などがすんなりと入ってくるので、相性がよいだろう。