「ザ・ループTRPG」とは?
「ザ・ループTRPG」(グラフィック社)は、スウェーデンのTRPGメーカー、Free League社(スウェーデン語ではFria Ligan)が2016年に発売したTRPG「Tales from the Loop Role Playing Game」を翻訳したものです。これは、スウェーデンのイラストレーター、シモン・ストーレンハーグが生み出したグラフィック・ノベル「ザ・ループ TALES FROM THE LOOP」の世界観をもとにしたもので、シンプルながらも、独特の世界設定とシステム、掲載シナリオの秀逸さから、2017年ENnie賞でベストゲームやベストセッティングなど5部門を受賞しました。現在までに、追加サプリメント4冊(シナリオ集2冊、拡張ルールブック1冊を含む)が刊行されています。
日本でも、原作となる「ザ・ループ TALES FROM THE LOOP」およびその続編「フロム・ザ・フラッド 浸水からの未知なるもの」が山形浩生氏の翻訳でグラフィック社より刊行され、人気を博しています。2020年には、Amazon Primeで制作されたドラマ「ザ・ループ」のミニ・シリーズは配信されました。
本書の翻訳にあたり、Free League社が刊行した英語版を底本としつつ、おりに触れて、オリジナルのスウェーデン語版で遊んでいる方の助言を加えました。翻訳にあたり、山形浩生氏の「ザ・ループ TALES FROM THE LOOP」およびその続編「フロム・ザ・フラッド 浸水からの未知なるもの」を参考といたしました。1-7章冒頭のテキストおよびマグネトリン船の広告ページは、山形氏の訳文の引用です。ありがとうございました。スウェーデン語に関しては、スウェーデン在住経験のある「Montro」さんに助言をいただきました。この場を借りて、感謝いたします。
「ザ・ループTRPG」の特徴
■アートブックを原作とする
すでに述べたように、本作は、スウェーデンのイラストレーター、シモン・ストーレンハーグが生み出したグラフィック・ノベル「ザ・ループ」を原作とするTRPGです。ストーレンハーグの協力により、本作は原作からのイラストがふんだんに使われており、ゲーム内世界の雰囲気をつかみやすいものになっています。本作を遊ぶ方は、ぜひ、シモン・ストーレンハーグの美しく、ノスタルジーとSFが入り交じる世界を堪能してください。
■ナラティブ
「ザ・ループTRPG」は刊行後、2017年ENnie賞でベストゲームやベストセッティングなど5部門を受賞し、今までに4冊のサプリメントが刊行され、版元のFree League社は大きく発展を遂げています。
それは「ザ・ループTRPG」が優れた原作の再現をしているだけでなく、TRPG業界のトレンドである「ナラティブ(Narrative)」タイプの最先端を走るもののひとつでもあるからです。
ナラティブとは2013年頃からゲーム開発者の間でもてはやされるようになったキーワードで、「物語」を意味する。ゲームの文脈で用いられる場合には「ゲームの中で物語を表現するための方法論」と受け取ってもらえるとありがたい。
そのため、雰囲気や語りを重視し、ルールでの細かい再現を減らしています。もはや、ここには戦闘ルールはありません。まずは、キャラクター同士の関係性を念頭に物語を作っていくことを楽しんでほしいのです。
■ノスタルジーとハイテク
シモン・ストーレンハーグがなぜ、「ザ・ループ」の物語を書き始めたかという疑問に対して、彼はあるインタビューで「時間がなかったから」と答えています。彼は、自分が生まれ育ったノスタルジックな故郷の風景も描きたかった一方で、イマジネーションあふれる最新メカニズムやロボットの出てくるSFも描きたかった。しかし、時間がなかったので、両方を描ける作品として、「ザ・ループ」を生み出しました。
「ザ・ループTRPG」もまた、その精神を受け継ぎ、ノスタルジーとSFの融合を目指すものです。その魅力を楽しんでください。