永遠の冬【49】火龍の目覚め
声が聞こえる。
内なる声が……
吼える、唸る、震える。
それが運命と言うのか?
ウィリス11歳の夏。
少年は、吹雪の轟音を越え、運命の声を聞いた。
「火龍パーロ・ファキール」
言われずともおそらく感じていた。
遥かな声。
あれは夢の中で、《冬翼》様と戦っていた霧の龍王。
青ざめた鱗と黄金の瞳を持つ破壊の化身だ。
一度、殺した。
二度目は殺された。
そして、三度目の時が来た。
しかし、《冬翼》様は封じられたまま……。
四面の顔を持つ首を失い……。
「だから、迎えに行くのだよ、ウィリス」
と、レディアスがほほ笑む。
「四方を見る者スクラ……それは偽りの存在」
ウィリスはうなずいた。
この身に感じるのは、《冬翼》様の気配である。
確かに、この山の周囲には多くの力が眠っているが、山頂に感じる第一の力は、慣れ親しんだ冬の神のものであった。
ならば、この封印を解くのは、お迎え役たるウィリスの仕事だ。
そして、ウィリスは吼える声が聞こえた南の方角を振り返った。
それは、もしかすると、故郷、グリスン谷の方角かもしれない。
「龍王はミスタクタイズ河下流に潜んでいる」
と、ディルスが言う。
「あの河を上下しながら、沿岸の村を襲っている」
いずれ、グリスン谷にもたどり着くというのか?
「そういうことだ」とレディアスが答える。
「火龍との戦いのために、我らは魔族を解放する。
対価は、永遠の冬」
ウィリスはうなずいた。
-------
そして、次なる物語は、グリスン谷へと戻る。
| 固定リンク