永遠の冬【51】出会うべき魂
似た者は同一である、と学院は定義する。
すべては12とひとつの星座の影に過ぎない。
多彩なる深淵の表層に投じられた12とひとつの影。
それはばらばらな存在でありながら、一つである。
ウィリス11歳の夏。
白き獣師とともに、アヴァター山の吹雪の中を歩む。
向かうは、山頂。
おそらくは、冬翼様の呪縛の場所。
魔道師たちの言い方に沿うならば、冬翼の大公ペラギス・グランの四つの顔、真なる封印のあるべき場所。
「すでに感じているだろう」
と、白き仮面の獣師レディアス=イル=ウォータンは山頂を指差す。
「この頂に、ウィリス殿の主が封じられている」
「ええ」とウィリスは答えた。
声が聞こえる。
雪狼たちの歓迎の声。
ネージャ様の導きの声。
そして、冬翼様ご自身の気配。
「封印を解くのはお前の仕事だ」
とレディアス。
「はい」とウィリス。
「残念だが」と、もう一人の獣師、ディルスが言う。
「《獣の王》になるのは、お前の仕事だ、ウィリス」
その口調は余り残念そうには、聞こえない。
だが、ウィリスにはそれより聞かねばならない質問があった。
「《獣の王》になるとは?」
「うーん」とディルスははぐらかす。
「なる必要などない」とレディアスが横合いから切って落とす。
「お前はすでに獣の王だ。
聞こえているだろう?
彼らの声が」
それはもはや質問などではない。
確認ですらないだろう。
ただ、この場でレディアスは聞き、ウィリスはうなずく。
その儀式が踊りの手順のように必要なのだ。
「ええ」
ウィリスは答え、うなずく。
レディアスとディルスはうなずき返す。
雪狼たちが高く雄叫びを上げる。
「お前は名乗る前から、獣の王であった」
とディルスが説明する。
「おそらく、ゼルダ婆に預けられるずっと以前から。
その時を覚えているか?」
「ええ」とウィリス。
「白い石碑で、ネージャ様と会いました」
「幼き頃より、魔族の眷属の影響下にあったということだ。
正しい経路だな」
レディアスの言及は社での講義のようだ。
「やや、不適切なのは……」
と、レディアスは唇を引き締める。
「ここまでの案内人だが、我々も身の程をよく理解している」
レディアスの顔の大半は白い骨のような仮面で覆われ、目の色も動きも一切見えないため、ウィリスにはその表情を読むことは出来なかった。
「どういう意味ですか?」
レディアスは微かに笑う。
「私は愛する女を二度、殺した」
そして、ほほ笑む。
「一度目は、魔族に捧げた。
二度目は、見捨てた」
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またもや少しずつ、再開リハビリ中です。
名前と実在の話。
できれば次回はGW明けに。
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