永遠の冬【56】出陣
時は来た。
時は来た。
時は来た。
ただ声は響く。
千年も万年も昔から、この時を待っていた。
ウィリス11歳の夏。
祈りが届いた瞬間――――
ウィリスは「呑み込まれた」。
封印が裂け、
巨大な鎖が断ち切れ、
アヴァター山頂上の結界そのものが、
封じられた《冬翼様》の頭部とともに、
上空へと吸い上げられる。
ウィリスの体は、雪狼とともに舞い上がり、
そのまま、《冬翼様》のお体に向かっていく。
轟。
風が吹き荒れる。
寒くなどない。
寒気はウィリスの友だ。
気づくと、ウィリスは巨大な掌の上にいた。
轟轟。
風が渦巻く。
それはおそらく、《冬翼様》の笑い声。
そして、雄叫び。
「さあ、どこに行けばいい?」
《冬神様》が叫ぶ。
ウィリスはただ南を指差した。
火龍の気配の方向。
戦いの声が響くところ。
轟轟轟。
《冬翼様》は、風を蹴って走り出す。
雪狼の群れが歓喜の雄叫びを上げ、その周囲を飛び回る。
遥か彼方から雄叫びが上がる。
あれは、「冬の祠」。
万年の年月を待ちわびていたルーヴィディア・ウル様のお声。
雷鳴が轟き、稲光が輝く。
寒風の彼方、稲妻の魔神もまた推参しようというのか?
そして、《冬翼様》は、ロクド山の深き峰へと飛ぶ。
遥か南方、谷間深きあたりに、濃密な霧が渦巻いた。
あれこそ龍の巣。
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しばし、間が開いてしまいましたね。
夏に向けて、イベントが続き、学校や締め切りも重なって色々多忙ですが、何とか、次回は来週に。
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