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2008年6月24日 (火)

永遠の冬【57】短い夏の終わり

 何気ない時。
 何気ない日々。
 それがいかに大事なものなのか?
 失って初めて気づく。

 メイア11歳の夏。

 グリスン谷の夏は短い。
 ウィリスとゼルダ婆が旅立って一月あまり、夏はもう陰りを見せ、村人たちは収穫前の畑仕事に精を出している。

 きっかけは霧だった。

 朝、河沿いに漂ってくる霧は少しずつ濃さを増していった。最初は太陽が昇るとともに、消えていった霧が少しずつ長く残るようになった。
 村人たちは春の戦の影響で、夏が少し涼しいものとなってしまうのは諦めていた。雪狼の姫君が風見山に降臨され、溶けぬ雪で山を覆ってしまったのであるから仕方ない。霧もまたそういう事柄の影響と思っていた。
 しかし、河を下って川下の村へ出かけたラインの次男坊が10日経っても戻らなかったので、ちょっとした騒ぎになった。どこかで溺れたか、それとも獣に襲われたのか?
 ウィリスの父ジードが村の男衆を連れて探しにいった。

 結果はもっと恐ろしいことだった。

 川下の村は晴れることのない濃くねっとりとした霧の中に沈んでいた。
 人の気配も家畜の鳴き声もしなかった。
 轟くようなたったひとつの吐息だけが村を包む霧から響いてきた。

 轟轟轟。

 ジードはただ恐れるばかりの村人に避難の支度を命じて村に返した。
 村長はその知らせを聞いて顔を青くすると、村人を集め、荷物をまとめるように指図すると、砂の川原に使いを出した。明朝には村を離れられるだろう。
 その夜、ジードが戻ってきた。
 わずか一日だったが、ジードは別人のようにやつれていた。

「火龍だ、霧の中に馬鹿でかい奴がいる」

 そして、その朝は霧が晴れなかった。

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 何とか、次回は来週に。


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