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2010年5月17日 (月)

歌の龍王【43】龍骨の野(5)

白の通火

我は灯りを掲げ、後続を導く。
闇の中にも、常に道は存在するのだ。

「戦争と征服は異なる作業です」
 カスリーンの装甲馬車の上でザンダルは解説した。
北原で開発された大型の装甲馬車は、実に12の車輪を有することで、小さな家にも等しい大きさを持っている。それは、カスリーンのための居住区を兼ねるとともに、軍団の作戦本部となり、彼女の宮廷となっていた。
「戦争では、敵を倒せばよい」
と、カスリーンが答える。彼女はけだるそうに、毛皮を敷き詰めたソファに横たわっている。
「だが、征服するには、占領地を維持する工夫が必要だ」
「御見事です」と、ザンダルが頭を垂れる。
「ふ、お前が教えてくれたことだ」とカスリーン。
「知識を聞いても、身に出来ぬ者がいかに多いことか?
 いえ、私も同様ですが」
「魔道師が何を言う? お前たちこそ知識の徒ではないか?」
「残念ながら、我ら魔道師は知識に囚われております。
 知識を身につけて、その先の応用がなければ、ただの言葉に過ぎません。
 カスリーン様は、この5年間で実行に移された。
 それが素晴らしい」
「いい加減にしろ、ザンダル。何が言いたい?」
 カスリーンはきっと魔道師を睨みつける。
 魔道師は、地図を指差す。
「今回は、一気に前線を押し上げ、レ・ドーラに向かいますが、戦線が維持できなくなる限界点があります。戦場の判断は迅速かつ、適切に行わなくてはなりません。
 判断すべき時期としては、ラグレッタ砦より先、2日目と7日目」
 そこで、ザンダルの指はレ・ドーラの野そのものを指さしていた。
「レ・ドーラに踏み込んで2~3日目が、注意すべき時です。
 死した龍どもの気に狂う者が出るでしょう。
 ここで、我らのとるべき道は三つ」
「続けて、前進するか、後退するか?
 して、もう一つは?」
「その場に留まります」
「狂うのではないのか?」
「ええ、ですから、狂う理由を消しましょう」
「出来るのか?」
「龍骨をすべて回収すればいいのです」

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『歌の龍王』第四十三話です。
 GWのイベント続きで一時、中断しておりましたが、とりあえず、再開。
 短めでも続きをかいていきたいと思っています。

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